インフレ動向と中国経済の再開:2023年の市場のけん引役に
〔要旨〕
卯(うさぎ)の年:2023年は、金融市場にこれまでとは異なる躍動感が生まれ、投資家にとって好材料となることを期待
米連邦準備理事会(FRB):FRBは今春に利上げを一時停止すると考える一方で、経済が予想以上に悪化しない限り、年中の利下げ実施の可能性は低いと見込む
中国の経済活動の再開:中国の経済活動の再開は、2023年の世界経済の成長を支える重要な要因に
欧州・英国のインフレは高水準ながら、低下する見込み
米連邦準備理事会(FRB)が利下げ観測をけん制
中国の経済活動の再開がアジアの経済成長にとって不可欠に
ウサギのように素早い?
今後の展望:決算シーズンと米国のインフレ
旧正月が始まりました。2023年は卯(うさぎ)年です。市場が打ちのめされた寅年が終わり、2023年は、金融市場にこれまでとは異なる躍動感が生まれ、投資家にとって好材料となることを私は期待しています。
中国では伝統的に、ウサギは「非常に穏やかで賢い動物で、十二支の動物の中で一番強いというわけではないものの、そのかわいらしさと素早さが、金運、パートナーシップ、成功などの良い資質を引き寄せる」と考えられています。従って2023年は、「静かで穏やかな年となり、よりバランスの取れた生活を求める人にとって望ましいエネルギーをもたらす可能性が高い」と予想されます 1 。
ウサギの穏やかさは、市場に適度(緩やか)な上昇をもたらしてくれるでしょうか?また、ウサギの賢さは、投資家がアクティブ運用により2023年を乗り切れるというサインでしょうか?その答えは、いずれ分かるでしょう。
欧州・英国のインフレは高水準ながら、低下する見込み
私が落ち着いてほしいと願っているのはインフレ状況ですが、ユーロ圏と英国では低下基調で推移しています。ユーロ圏のインフレ率(前年同月比)は、10月に10.6%のピークを迎えた後、11月は10.1%、12月は9.2%と低下しました 2 。同様に英国のインフレ率も、12月は前年同月比で10.5%となり、英国内でエネルギー料金が高騰した10月に11.0%のピークを迎えた後、11月の10.7%からさらに低下しました 3 。
もちろん、これらの数字がまだ非常に高水準にあるのは無視できず、これが各中央銀行にとって、利上げを一時停止するほどの満足のいく水準となるかは分かりません。
米連邦準備理事会(FRB)が利下げ観測をけん制
米連邦準備理事会(FRB)についても同様のことが問われています。最近の「Fedspeak(FRB関係者の発言)」はタカ派的なトーンで語られています。
- 先週、ニューヨーク連邦銀行のジョン・ウィリアムズ総裁は、「金融引き締めへのギアチェンジ」は「望ましい効果をもたらしつつある」としながらも、自身は、おそらく市場が予想しているよりも多くの利上げを見込んでいる、と述べました。またFRBの政策金利が「目標を達成するのに十分抑制的と考えられる水準」に達するまでには「まだ道半ば」であるとしました 4 。
- ラエル・ブレイナードFRB副議長は先週、FRBがまもなく政策金利の引き下げに転じるのではとの見方に冷や水を浴びせ、「インフレ率が持続的に2%に戻ることを確実にするために、しばらくの間、十分に引き締め的な金融政策を続ける必要があるだろう」と発言しました 5 。
私自身は、上記の発言のうち前者よりも後者の方が可能性が高く、FRBは今春にも政策金利引き上げを停止するのではないかと考えています。ただし、経済が予想以上に悪化しない限り、年中に利下げを実施する可能性は低いと考えています。後者については、FRBが利上げを停止するにあたり、インフレ率やそのデータについて何を見る必要があるかを決める準備をしているだろうという話が、すでにささやかれ始めています。
中国の経済活動の再開がアジアの経済成長にとって不可欠に
欧米の主要先進国にとっては、インフレと中央銀行の政策動向が、2023年の経済成長を左右する重要な要因となっていますが、私はアジアの経済成長にとって、中国の経済活動の再開こそが重要な要因になると考えています。国際通貨基金(IMF)のゴピナート筆頭副専務理事が、私たちと同様、中国は2023年4-6月期から経済成長が急回復する可能性がある、との見方を示したのは喜ばしいことでした。
興味深いことに多くの人が、中国がアジアの成長だけでなく、2023年の世界経済の成長を左右する重要な要因になるとみています。ゲオルギエバIMF専務理事は、中国が経済活動を成功裏に再開することは、「2023年の世界の経済成長にとって最重要な要因となる可能性が非常に高い。中国経済の再開は、非常に大きな影響をもたらすだろう」と述べました。
また私は、ダボスで行われた世界経済フォーラムでの中国の劉副首相の発言にも勇気づけられました 6 。劉副首相は投資家に対してはっきりと的確に、「中国の国家的現実は、世界に対して経済開放することが、便宜上ではなく、必然であることを示している。われわれは、より広く開放し、それをよりよく機能させなければならない」と発言しました。さらに、「外国人投資家を含む起業家は、社会における富の創造において重要な要素であり、極めて重要な役割を果たすだろう」と断言しました。2023年の中国の規制政策がそうした期待に沿うか、懐疑的にみる向きもあるかもしれませんが、ゼロコロナ政策の解除は、非常に説得力があったと考えています。
ウサギのように素早い?
ウサギは穏やかで賢いだけでなく、素早いというイメージもあります。私は、2023年に二つの重要なことが早期に起こるのを期待しており、そのスピードが重要になってきます。
- 中央銀行が、需要抑制やインフレのコントロールの度合いに早期に満足し、需要の抑制が行き過ぎて経済が大きなダメージを受ける前に、引き締めサイクルを終了すると期待しています。
- 中国の新型コロナウイルス感染が、旧正月の旅行により再拡大したとみられますが、これが速やかに抑制され、より力強い経済成長への道が開かれることを期待しています。
今週のイベント:決算シーズンと米国のインフレ
決算シーズンが進むにつれ、失望的な決算内容や下方修正を耳にすることもあるでしょう。これは予想されたことであり、それによって生じるボラティリティに惑わされるべきではないと考えます。最近の人員削減に関するあらゆる見出しがそうであるように、これらは残念ではあるものの驚くほどではない、中央銀行の引き締め政策の副産物といえるからです。そしてそれは、FRBが需要を冷えこませる対応の一環として望んでいることでもあります。
例えば、直近で米国のある住宅建設会社は、2022年10-12月期に契約キャンセルが大幅に増加したと発表し、いくつかの大手金融サービス会社では、貸倒損失が増加したとしています。しかしまさにこれこそが、中央銀行が望んでいる経済の冷え込みの一環ではないでしょうか?私たちはこれを、中央銀行による利上げ停止に向けて、そして最終的には経済回復に向けて、一歩近づいたことと考える必要があるように思います。
今週発表される重要なデータのひとつに、FRBがインフレの指標として好んで用いる、米個人消費支出(PCE)価格指数があります。この指標が予想通り、あるいは予想を下回れば、FRBによる利上げ停止が早まるきっかけになるかもしれません。そうなれば、ウサギ年の市場が少し落ち着きを取り戻すための、重要なステップになるでしょう。
- 出所:BBC、“Lunar New Year: What does the Year of the Rabbit signify in Chinese culture?”、2023年1月
- 出所:ユーロスタット、2023年1月18日
- 出所:英国国家統計局、2023年1月18日
- 出所:ロイター、“Davos 2023: China recovery could be very quick -IMF's Gopinath”、2023年1月18日
- 出所:国際通貨基金(IMF)、“Transcript of International Monetary Fund Managing Director Kristalina Georgieva Media Roundtable”、 2023年1月12日
- 出所:チャイナデイリー、“Vice-Premier Liu He's speech at the World Economic Forum Annual Meeting”、 2023年1月17日
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MC2023-010