市場は欧米における最近のインフレデータを歓迎
〔要旨〕
- ディスインフレは続く:米国、ユーロ圏、英国のインフレデータは、各国における利上げサイクルが終わりを迎える可能性を示唆
- ボラティリティが見込まれる:利下げ開始の時期についてはまだ不確実性が高く、一定のボラティリティが見込まれる
- センチメントに変化?:全体としてここ数週間が、振り返ってみたときに、市場のセンチメントと世界のリスク選好度が大きく変化し始めた時期だったということになるかもしれない
ディスインフレ傾向は続く
最近の出来事は市場にとって前向きなものだった
ボラティリティが機会をもたらす可能性
これはセンチメントの変化の始まりとなるか?
サンクスギビング
注目の日程
正直に言うと私たち夫婦は、ティーンエイジャーの子育てに関してはやや「抜けている」ところがあります。お恥ずかしいことに、朝になって玄関のカメラに深夜の来客が次々と映し出されたのを見て初めて、17歳の娘が我が家の地下室でパーティーを開いていたことに気づいたという有様です。幸いにも、私は市場でパーティーがいつ始まるのかについては、もっとましな感覚を持っています。先週発表された米国、ユーロ圏、英国のインフレデータは言わば歓迎すべきゲストと言え、これらの国々の中央銀行が利上げを終了したと市場に納得させるのに大いに役立ちました。
ディスインフレ傾向は続く
10月の米国の消費者物価指数は、ディスインフレ傾向の進展が続いていることを示唆しました。市場はこれを、米国の利上げサイクル終了の強いシグナルとして受け止めました。これに続いてユーロ圏及び英国のインフレデータ、米国の生産者物価指数も発表され、これらを受けて市場は、欧米先進国の中央銀行による利上げが終了したと解釈しました。
しかし同時に先週、これらの欧米先進国の経済が冷え込んでいることを示すデータも発表されました。例えば、10月の米小売売上高は3月以来初めての減少となり、またユーロ圏の鉱工業生産の落ち込みは予想以上となりました。では市場は、なぜこんなにも前向きなのでしょうか?
最近の出来事は市場にとって前向きなものだった
まず第一に、それこそが欧米先進国の中央銀行が望んでいたことだった、ということです。これらの中央銀行は、経済がクールダウンし、ディスインフレが続くことを望んでいました。加えて米国は今月、2024年初頭までの短期的な「ラダリング(はしご)」方式のつなぎ予算を可決し、大きな混乱もなく政府機関の閉鎖を回避することができました。しかし世界的なリスク選好度の高まりの主な理由は、市場が足元を超えて2024年までを見通していることにあります。すなわち、2024年前半の利下げ開始と同年後半の景気回復を織り込んでいるのです。
米国10年債利回り、英国10年債利回り、イタリア10年債などの欧州10年債利回りは、ここ数日低下しました。そして株価は上昇しました1 。私は、市場が世界的な景気回復を予想しており、中国や日本など他の主要国も、短期的な財政・金融政策の下支えにより、2024年後半の景気回復に貢献すると考えています。
ボラティリティが機会をもたらす可能性
しかし、市場ではパーティーが始まったように見えるものの、私は短期的には一定のボラティリティを見込んでいます。利下げ開始の時期についてはまだ大きな不確実性があり、「マクロの悪いニュースは市場にとって良いニュース」となったと思えばまたその逆になったりするパターンが、短期的に見られる可能性があります。しかし私はこのような機会を活用して、長期のデュレーションの債券エクスポージャーを増やすとともに、株式のより魅力的なエントリーポイントを見つけるのが良いと考えています。
これはセンチメントの変化の始まりとなるか?
市場は今後数ヶ月の間に、今後予想される展開が進展していくことを期待しており、全体としてここ数週間が、振り返ってみたときに、市場のセンチメントと世界のリスク選好度が大きく変化し始めた時期だったということになるかもしれません。ただし、長く、そして変化しやすい金融政策のタイムラグにより、市場が現在織り込んでいる将来に水が差される可能性があることを認識し、警戒を怠らないでいることは必要だと考えます。とはいえそれは、決して私の基本シナリオではありません。
サンクスギビング
今週、米国ではサンクスギビング(感謝祭)のお祝いがあります。カレンダー上の祝日は米国だけでも、感謝の気持ちは世界共通です。まず、私たちを信頼してくださるお客様に感謝申し上げます。次に同僚たちへも感謝したいと思います。お客様のことを考えてやまない、これほど優秀な仲間たちと共に仕事ができることはとても恵まれたことだと思います。最後に、私達のインハウスのパーティー・プランナーである娘を含めた家族にも、心からの感謝を捧げたいと思います。
注目の日程
公表日 | 指標等 | 内容 |
---|---|---|
11月21日 |
米連邦公開市場委員会議事要旨 |
中央銀行の意思決定プロセスについて |
11月22日 |
英国の秋季予算見通し |
英国の経済状況について政府が最新情報を発表 |
11月23日 |
ユーロ圏製造業・サービス業購買担当者景気指数 |
製造業とサービス業の経済の健全性を示す |
11月23日 |
欧州中央銀行金融政策 |
中央銀行の意思決定プロセスについて |
11月23日 |
日本CPI |
インフレの動向を示す |
11月24日 |
米国製造業・サービス業 購買担当者景気指数 (速報値) |
製造業とサービス業の経済の健全性を示す |
来週はサンクスギビングのため、本レポートをお休み致します。また12月の第1週に、2024年の投資見通しについてお話しさせて頂きたいと思います。
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1.
出所:MSCI。2023年11月17日の週のMSCIワールド・インデックスのリターンは3.0%となった。MSCIワールド・インデックスは、先進国の代表的な株価指数とみなされる。
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MC2023-185