2月FOMCはややハト派的な内容に
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要旨
市場予想通り25bpの利上げ、パウエル氏の発言はややハト派的
1月31日~2月1日に開催されたFOMC(米連邦公開市場委員会)では、市場予想通り、FF金利が25bp(ベーシスポイント、=0.25%)引き上げられ、4.50~4.75%のレンジに変更されました。私が注目したのは、金融市場が今年後半におけるFF金利の引き下げを予測しているのに対して、FRB(米連邦準備理事会)が利下げを見込んでいない点について、パウエル議長が、「金融市場がFRBよりも大幅なインフレ率の低下を予想しているため」と発言した点です。これは、インフレ率が市場での想定通りに低下してくれば、FRBが利下げを実施する可能性が高まることを意味しているという意味で非常に重要です。
FRBはインフレリスクをなお注視
その一方、パウエル議長の記者会見では従来通りのタカ派的な内容が目立ちました。サービス分野のインフレが落ち着いてこないリスクには、投資家としても引き続き留意すべきです。
株価はインフレの落ち着きとともに上昇し、その後は横ばい圏入りか
今後の米国景気は緩やかに悪化するとみられますが、そうした中で2月14日に公表される1月分のCPI指標と3月14日に公表される2月分のCPI指標でインフレのある程度の落ち着きが示されれば、3月21~22日に開催される次回のFOMC会合において、25bpの利上げの実施と、インフレ安定を条件としてのその後の利上げの停止が発表される可能性が出てくると見込まれます。
市場予想通り25bpの利上げ、パウエル氏の発言はややハト派的
1月31日~2月1日に開催されたFOMC(米連邦公開市場委員会)では、市場予想通り、FF金利が25bp(ベーシスポイント、=0.25%)引き上げられ、4.50~4.75%のレンジに変更されました。実施された利上げ幅は昨年12月のFOMC会合での50bpから縮小されたことになります。今回の会合に対する金融市場の関心は、米国のインフレ指標が直近で落ち着きを見せる中、パウエルFRB議長が利上げの早期打ち止めなどを含むハト派的なコメントを行うかどうかにありました。実際のパウエル議長の記者会見での発言は、これまでよりもややハト派的であったと言えます。これは、パウエル議長が、財インフレが予想通り低下しはじめたことを受けて、「ディスインフレのプロセスがスタートした」点に初めて言及したことによると考えられます。金融市場では、10年物米国債利回りはFOMCでの発表前日の3.51%から記者会見後には3.42%に低下、S&P500種指数は前日の終値から1.0%上昇しました。NASDAQ総合指数の前日比での上昇率は、長期金利の低下を追い風に2.0%に達しました。
私が注目したのは、金融市場が今年後半におけるFF金利の引き下げを予測しているのに対して、FRB(米連邦準備理事会)が利下げを見込んでいない点について、パウエル議長が、「金融市場がFRBよりも大幅なインフレ率の低下を予想しているため」と発言した点です。パウエル議長は、①景気の減速は見込むものの景気後退は想定しない、➁労働市場のタイトさがいくらか和らぐ、➂インフレは着実に低下するが急速に(quickly)低下することはない―というFRBの現在の想定の下では、年内の利下げは見込めないとの考えを示すとともに、もしインフレが急速に下がってくればFRBとして相応の対応をすることになるとの考え方を示しました。昨年12月会合でのFOMC参加者によるインフレ見通しでは、今年10-12月期におけるコアPCEデフレーター(エネルギー・食品を除く民間消費価格指数)の上昇率を前年同期比3.5%としていました。これは2022年12月段階での実績である4.4%よりもかなり低い水準ですが、直近の金融市場では2023年10-12月期にこれが3%を下回るという見通しが増えてきています。インフレについての今回のパウエル議長の発言は、インフレ率が市場での想定通りに低下してくれば、FRBが利下げを実施する可能性が高まることを意味しているという意味で非常に重要です。
FRBはインフレリスクをなお注視
その一方で、記者会見でのパウエル議長への質問は利上げの停止についてのテーマに集中し、これに対するパウエル議長の回答では従来通りのタカ派的な内容が目立ちました。パウエル議長は、「ディスインフレのプロセスがスタートしたのは財分野においてだけであり、家賃部分を除くサービス分野ではまだインフレが続いている、労働市場が非常にタイトなままであることを踏まえると、サービス分野のインフレ率が低下するかどうかについては不確実性が高く、インフレ抑制に勝利したとは言えない」点を強調しました。今後の利上げ停止までの追加利上げ幅についても、継続的な複数の利上げが必要である、との考え方が繰り返し示されました。これは、25bpの追加利上げを見込む金融市場よりもタカ派的な見通しです。今回の記者会見では、労働市場が非常にタイトなまま推移すれば、サービス分野のインフレ率が高止まりし、財分野のインフレの低下が一段落した後にインフレ率が全体として2%を上回る状況が続く点も懸念点として示されました。投資家としても、インフレが落ち着かないリスクには引き続き留意すべきでしょう。
株価はインフレの落ち着きとともに上昇し、その後は横ばい圏入りか
パウエル議長が言明したように、今後のFRBの金融政策は、これまで同様、データ、特にインフレ指標に大きく左右されるとみられます。当レポート先週号では、足元での米国の指標からは、サービス価格が今後落ち着いていくことが示唆されるとの見方をご紹介しました(「FRBのハト派化期待」と「景気悪化」の綱引き、1月26日発行)。財分野のインフレ圧力の低下が続くことが見込まれる中、サービス分野のインフレ圧力が徐々に和らぐのに合わせて、FRBは利上げを停止することになるでしょう。
今後の米国景気は緩やかに悪化するとみられますが、そうした中で2月14日に公表される1月分のCPI指標と3月14日に公表される2月分のCPI指標でインフレのある程度の落ち着きが示されれば、3月21~22日に開催される次回のFOMC会合において、25bpの利上げの実施と、インフレ安定を条件としてのその後の利上げの停止が発表される可能性が出てくると見込まれます。
インフレ指標の落ち着きが続けば、今後の金融市場では、FRBによる利上げの停止を本格的に織り込む形での短期間の株価上昇局面が到来すると見込まれます。その後、FRBによる利上げ停止がいったん市場に織り込まれれば株価の上昇は一服し、景気・企業業績の弱さという悪材料と、FRBによる利下げの可能性という好材料が綱引きをする形で株価が横ばい圏に入ると見込まれます。上記のインフレ指標や、インフレへの影響が大きい雇用関連指標、景気指標を引き続き注視していきたいと思います。
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MC2023-013