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岐路に立つ米国経済と中国経済:世界の二大経済大国はどこへ向かうのか?

岐路に立つ米国経済と中国経済:世界の二大経済大国はどこへ向かうのか?
〔要旨〕
岐路に立つ米国経済と中国経済:市場関係者や人々は、米国や中国経済の行く末を示すサインを探っている
中国経済:中国の景気回復は2022年も続くとみており、中国株式には上昇余地があると見込む
FRBの道筋:米連邦準備理事会(FRB)のデータに依存した政策運営を考慮すると、FRBは今後数カ月のうちに、金融引き締めへの積極度合いを緩めるだろう
 
中国経済の岐路:景気回復を維持できるか?

中国では財政・金融ともに政策支援が実施される可能性があることから、2022年も景気回復が続き、中国株式の上昇余地もあるだろう

米国経済の岐路:本格的な景気後退を回避できるか?

米国のインフレ指標の落ち着きや労働市場の需給の緩和により、FRBの金融引き締め政策の積極度合いは緩和されると見込む

今後の米国経済と中国経済の注目点

7月のFOMC議事要旨や中国の不動産政策の動向に注目

 

米国の作家アーネスト・ヘミングウェイはかつて、「人生の最も重要な岐路には標識がない、という考えに慣れなければならない」と語ったそうです。それは、世界の二大経済大国である米国経済と中国経済にも当てはまるような気がします。現在は、両国経済はともに岐路に立っており、市場参加者や人々は、両国経済がこれからどこへ向かうのか、そしてもちろん、投資への影響を示すデータを探しています。そして、そのデータは時に相反することもあり、市場の混乱を深めています。

 

中国経済の岐路:景気回復を維持できるか?
中国では財政・金融ともに政策支援が実施される可能性があることから、2022年も景気回復が続き、中国株式の上昇余地もあるだろう

最近発表された経済指標を見ると、中国では経済再開を受けた景気回復が足踏みしているように見受けられることから、中国がこのまま景気回復を続けることができるのかどうか疑問視する声も聞かれています。7月の経済指標を見ると、小売売上高は前年同月比2.7%増と市場予想を下回り、6月から増加ペースが鈍化しました 1 。固定資産投資も減少しました。また、鉱工業生産は前年同月比3.8%増と市場予想の4.6%を大幅に下回り、6月の前年比3.9%増もわずかに下回りました 2 。このように、7月の経済指標は(最近のデータのように)市場予想を下回るものでした。ただし、景気拡大ペースは減速してはいるものの、依然として拡大していることには留意する必要があるでしょう。

さらに、注目したいサインは経済指標だけではないということを強調したいと思います。金融と財政の両面で、経済や市場の方向性に影響を与えるとみられる政策にも注目する必要があります。例えば、中国汽車工業協会が発表した7月の国内自動車販売台数は前年同月比29.7%増でした 3 。自動車取得税減税などの政府の支援策が追い風となり、中国の自動車販売は2カ月連続の増加となりました。この結果から、政策当局が政策手段を活用すれば、自国経済に大きなプラスの効果を及ぼせることが分かるでしょう。

金融政策の面では、最近の経済データの弱まりに対応するため、中国人民銀行(PBOC)は予想に反し、政策金利を引き下げました。そして、PBOCは、景気回復を支えるために必要と判断すれば、今後も利下げを続ける可能性があります。

これまでのところ、中国政府は、債務レバレッジへの懸念から不動産市場に対する広範な支援を政府主導で実施することを避けており、中国株は直近、主に不動産市場の苦境から、上昇分の一部を失うことになりました。しかし、私は、中国政府は必要であれば中国経済のハードランディングを防ぐ手段を持っていると考えます。投資家は中国株式に対して過度に悲観的ですが、ポジティブ・サプライズにつながる可能性があります。

まとめると、私は、必要であれば財政・金融両面による政策支援が実施される可能性があることから、中国では2022年も景気回復が続くと考えており、中国株式は2022年前半の下落分をある程度取り戻すだろうと予想しています。

 

米国経済の岐路:本格的な景気後退を回避できるか?
米国のインフレ指標の落ち着きや労働市場の需給の緩和により、FRBの金融引き締め政策の積極度合いは緩和されると見込む

米国の株式市場も岐路に立たされており、多くの投資家が米国株式市場の今後について疑問に思っています。興味深いことに、多くの投資家は、現在の米国株式の反発は一時的(弱気相場における一時的な上昇)と考えているようです。2022年のS&P500種指数の最高値から最安値までの騰落率(1月3日から6月16日まで)は、マイナス20%強となりました(20%以上の下落は弱気相場入りと定義されています) 4 。底打ち後の株価の反発を疑問視する声が多い中、1957年以降の弱気相場局面を調べたところ、弱気相場からのリバウンドが持続するかどうかは、実際に景気後退が生じたかどうかに左右される傾向にあることが分かりました。

私は、インフレの状況を背景に、米国経済が景気後退を回避できる可能性が高まったと考えます(ここでは、景気後退の定義として、全米経済研究所による、「経済全体に波及し、数カ月以上継続する経済活動の著しい低下」という、ややあいまいな定義を念頭に置いています)。サプライチェーンの圧力は緩和され、高水準にあったコモディティ価格の上昇も落ち着いています。マネタリストであれば、マネーサプライの伸びの鈍化により、インフレは大幅に抑制されると考えるでしょう。また、フィリップス曲線を重視しているのであれば、インフレ動向は労働市場の需給の緩和に左右されると考えるでしょうが、求人数が減少し、一部で解雇が発表されていることから、インフレが緩和されつつあるようにみえます。つまり、インフレはピークに達し、まだ高水準なものの、その上昇は緩やかになりつつあるようです。

結局のところ、景気が後退するかどうか、そして株価の上昇が止まるどうかは、すべて今後の金融政策にかかっていると私は考えています。FRBが重視するインフレ指標はその上昇が緩やかになっており、新規失業保険申請件数は増加傾向にあります。FRBがデータに依存した政策運営を行っていることを考慮すると、今後数カ月のうちに、FRBの積極的な金融引き締め姿勢が緩和されると私は考えています。そして、金融引き締めは継続されるものの、市場が予想するほどには積極的ではないと予想しています。そしてそれは、米国株式市場の上昇を持続させるのに十分なものであると考えています。

 

今後の米国経済と中国経済の注目点
7月のFOMC議事要旨や中国の不動産政策の動向に注目

今後は、FRBが最も関心を寄せるデータ、特にインフレ指標とインフレ期待を注視したいと考えます。また、7月に開催された米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨から、FRBがタカ派スタンスからの脱却のきっかけとなるような兆候があったかどうかを探りたいと考えています。また、中国の新しい政策、特に不動産市場に関する政策にも注目します。

その理由は、私は、短期的な経済や市場の方向性は、ほとんど政策によって決定されると考えるからです。しかし、最初に、目に見えるサインを読み、解釈することに謙虚でなければなりません。かつて、AOLの元CEOであるスティーブ・ケースが言ったように、「ナビゲーションのための道路標識は存在しない。そして実際、私たちが道路のどちら側にいるべきかどうかについて、まだ誰も判断していない 5 」のです。

 

  1. 出所:中国国家統計局、2022年8月15日
  2. 出所:中国国家統計局、2022年8月15日
  3. 出所:中国汽車工業協会
  4. 出所:ブルームバーグ、弱気相場は、株式市場が20%以上下落することと定義。過去の実績は将来のリターンを保証するものではありません。インデックスに直接投資することはできません。
  5. 出所:Entrepreneur.com、“20 Leadership Quotes From the World's Most Influential Leaders”、2020年1月2日

 

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