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すべてFRBの計画通りに進んでいるのだろうか?

すべてFRBの計画通りに進んでいるのだろうか?
〔要旨〕
米連邦準備理事会(FRB)の動向は?:FRBはインフレ抑制のために景気を減速させるという目標に向かって前進している
中央銀行が解決できない問題:ロシア・ウクライナ紛争は、エネルギー価格の高止まり、サプライチェーンの混乱、そして世界的な飢餓の危機への脅威を引き起こしている
市場の底値は近いのか?:市場は天井よりも底値にはるかに近い
 
中央銀行が解決できない問題

大きな障害があったとしても、FRBは米国経済をソフトランディングに導くことができるだろう

市場の底値はどこにあるか?

過去を振り返ると、株価が大きく下落したあとは、その後高値を更新している

投資計画へのこだわり

投資計画では、幅広い分散投資、長期的なアロケーション、定期的なリバランスを確保することが重要である

 

先週もまた、主要な株価指数やその他多くの資産価格が下落するという値動きの激しい1週間となりました。それを考えているとき、私は、9歳の時、父が購入したばかりの新車でニューヨークからフロリダまで家族でドライブ旅行した時のことを思い出しました。
旅行中、私がバージニア州の田舎で後部座席にもどしたり(父は「楽しく過ごしているのだから」と停車しませんでした)、母が車の中にキーを残したまま外に出て、車から閉め出されてしまったりしました。1979年当時の「路上支援サービス」が到着するまで、私たちは何時間も待たなければなりませんでした。また、オーランドでの最初の夜は、車内に宿泊しなければなりませんでした。父が、ディズニーワールドで予約しなくてもホテルに宿泊できると考えたからです。それ以外にも、私は車内で「ジョーズ」を読んでいてぼうぜん自失となり、フロリダにいる間中、ビーチに行きたくないと言いました。この旅で、父が「すべてが計画通りに進んでいる。」と何度も言っていたことを覚えています。冗談ではなく、この旅がうまくいっていると本気で信じていたのです。

ここ数週間、多くの資産クラスが大きく下落しているなか、私は父の言葉を思い出し、中央銀行、特に米連邦準備理事会(FRB)はすべてが計画通りに進んでいると信じているのだろうかと考えていました。そして、私のこれに対する見解には異論があるかもしれませんが、ここ数カ月、FRBは景気を冷やすという目標に向かって進んでいると考えています。

 

①金融環境の引き締め、②資本市場のフロスの減少、③実質所得の低下―など、FRBが実際に利上げを実施しなくても景気を冷やしている

1. 金融環境の引き締め: FRB(および他の主要中央銀行)は、実際の引き締めはほとんど行わずに金融環境を引き締めています。中央銀行からの情報発信は強力な手段となりました。先週の本リポートで米国の住宅ローン金利について触れましたが、それをはるかに超えるものになっています。主要中央銀行がここ数カ月で非常に緩和的な金融政策からの転換を開始して以来、世界的に金融環境が引き締まっています。

2. 資本市場におけるフロス(小さい泡)の減少: 金利の上昇を受け、多くの資産価格が下落しています。世界の株式市場は再評価されている、すなわち、中央銀行の大幅な引き締めへの期待から、市場では株式の価値が再調整されています。これは、利上げ局面が始まるたびに、市場が金利上昇に対応するために生じる通常のプロセスです。実際、再評価されているのは株式だけではありません。FRBや他の主要先進国の中央銀行による金融引き締めの開始を受け、すべての資産クラスで一種の再評価や消化作業が進んでいるのです。急激な金利上昇を受け、債券市場も大きな損失を出しています。

同様のことが暗号資産でも見られています。暗号資産は、株式や債券との相関が低い資産とみなされることが多く、分散投資に適していると考えられます。また、ビットコインのような暗号資産は、効果的なインフレヘッジとして機能するとの見方もありました。しかし、ここ数年、知名度が高まり、時価総額が拡大するなか、暗号資産は「主流の資産」の一つとなり、多くの暗号資産が伝統的な資産クラスと似たような価格動向を示すようになっています。特に、金融引き締めが始まると、その傾向が顕著になります。最近、暗号資産はより投機的なハイテク株と高い相関性を示しており、再評価が続けば、短期的にこの傾向が続く可能性があります。

また、ステーブルコインでも急落や混乱が見られました。ステーブルコインは、ビットコインなどの従来の暗号通貨と異なり、価格の安定と、投機的な投資ではなく代替通貨としての利用が目指されています(多くは、安定した価格を維持できるように資産に裏打ちされています)。たとえば、米ドルを担保に価格が安定されているテザーへの売り圧力が強まり、一時米ドルとのペッグ(固定)が消失しました。また、米ドルに裏打ちされていない「アルゴリズム型」ステーブルコインであるテラUSDは、先週さらに売りにさらされ、価値が急落しました。このような混乱は好ましいものではありませんが、私は、中央銀行がシステムから流動性を除去する際に起こる現象の一つであると考えます。そして、予想される引き締めの積極度合いが高まれば高まるほど、短期的な混乱が起こる可能性が高くなります。

資産価格の下押し圧力は過度のリスク許容度を低下させ、家計の純資産を減少させます。資産価値の減少は需要を冷やし、インフレを抑制するのに役立つかもしれません。

3. 実質所得の低下: 欧米の主要国では、労働市場のタイト化と名目賃金の上昇にもかかわらず、インフレ率の上昇に伴って実質賃金が急落しています 1 。米国では労働市場が最もタイト化し、名目賃金が最も速く上昇したにもかかわらず、実質賃金の低下が最も速いペースで進んできました。これは中央銀行とは直接関係ありませんが、FRBなどの中央銀行が引き締めを迅速に開始しなかったために、実質所得が低下してしまっていると考えられます。一方で、実質所得の低下は需要の冷え込みにつながり、中央銀行がインフレを抑制するのに役立つというプラスの面もあります。

 

中央銀行が解決できない問題

このように、FRBは資本市場からフロス(小さい泡)を取り除き、景気を減速させているのです。しかし、FRBはインフレ率を最終的な目標である2%に低下させることができるのでしょうか。特に、金融政策では解決できない2つの重要な問題があるため、すぐには難しいと私は考えています。

1. ロシア・ウクライナ紛争: ロシアとウクライナの紛争は、エネルギー価格の高止まり、サプライチェーンの混乱、そして最も懸念されることに、世界的な飢餓の脅威をもたらしながら続いています。これは、中央銀行では解決できない問題であり、早期の解決を願うばかりです。

2. 中国でのロックダウン: 中央銀行は、中国の新型コロナウイルスの感染拡大を解決することもできません。中国では感染拡大を受けた都市封鎖(ロックダウン)措置によりインフレ圧力が強まり、サプライチェーンは混乱し、経済成長が鈍化しています。その一例が、直近公表された中国の小売売上高と鉱工業生産です。しかし、私は、最近の動きに非常に好ましい点を見いだしています。上海の感染者数は劇的に減少し、政府は新型コロナ関連の厳格な措置を削減する計画を発表しました。上海の感染者は現在、ほぼゼロに近い状態です。このことから、新型コロナウイルスの変異株であるオミクロン株は、他の国々と同じように、中国の都市をも比較的速く通り過ぎようとしています。現在、北京では一部外出禁止措置がとられており、中国もまだ安心はできません。しかし、この傾向は、2022年後半の中国経済にとって良い兆しだと私は考えています。先に公表された小売売上高や工場生産に関する経済データは失望をもたらすものでしたが、中国経済はこれを乗り越え、2022年後半に大きく改善すると予想しています。

大きな障害があったとしても、FRBは米国経済をソフトランディングに導くことができるだろう

ロシア・ウクライナ危機と中国のゼロコロナ政策による影響を受けての、中央銀行にとっての重要な課題の一つは、インフレ上昇がとまり、経済成長が抑制されたとしても、コモディティ価格が高止まりする可能性があるということです。短期的にはこの2つの問題はインフレを悪化させますが、中期的には、インフレが落ち着いた後もコモディティ価格が高止まりした場合には、新興国や特に欧州の経済成長に悪影響をもたらす可能性があります(エネルギーと食糧の輸出国である米国はその影響は軽微と見込まれます)。

先週、パウエルFRB議長は、FRBは米国経済がソフトランディングできるかどうかは保証できないことを認めました。金融引き締めの開始が他の中央銀行と比べて遅れたFRBは、他の中央銀行と同様、景気を冷やすためにその役割を果たしています。パウエル氏の発言にもかかわらず、私は、FRBが米国経済をソフトランディングに導くことができると考えています。計画通りにはいかないかもしれませんが、大きな障害があっても実現できると考えています。
 

市場の底値はどこにあるか?
過去を振り返ると、株価が大きく下落したあとは、その後高値を更新している

では、これらを踏まえて、市場はまだ、底を打っていないのでしょうか?そして、底を打ったことをどうやって知ることができるのでしょうか?

この再評価のプロセスは、多くの波乱を生むことになるでしょう。私たちは15年近くも非常に緩和的な金融政策の環境下にいたことを忘れてはいけません。それは母乳のようなもので、すでに経験しているように、離乳のプロセスは簡単ではないでしょう。

私は未来を見通すことができるわけではありませんが、私たちは市場の天井よりも底にずっと近いところにいると考えています。過去の経験からは、株価が大きく下落したときは、必ずその後に高値を更新するための素地が生み出されたことがわかっています。
 

投資計画へのこだわり
投資計画では、幅広い分散投資、長期的なアロケーション、定期的なリバランスを確保することが重要である

振り返ってみると、私のディズニーランドへの波瀾(はらん)万丈の旅は、完全に計画通りに進んだわけではありませんでした。しかし、フロリダまで往復して、本当にひどい目に遭うこともなかったので、おそらく父の言う通りだったのでしょう。結局のところ、私たちが頼れる唯一の「投資計画」は、幅広い分散投資、長期的なアロケーション、定期的なリバランスを確保することによって、市場が低迷する可能性を織り込んだ計画であり、私はそのことを再認識しました。
 

  1. 出所:ブルームバーグ、マクロボンド、インベスコ。欧米主要国は、以下の通り:米国(2022年4月)、英国(2022年2月)、ドイツ(2021年12月)

 

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MC2022-064