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グローバル金融市場:11月の注目ポイント

グローバル金融市場:11月の注目ポイント
〔要旨〕
世界経済は減速:ユーロ圏の経済はさらに弱まる兆しを見せ、中国は景気回復への道のりが険しいことを示すデータを発表
米連邦準備理事会(FRB)に注目が集まる:今週は米連邦公開市場委員会(FOMC)が開催。最も注目すべきなのは、政策金利発表後の記者会見と考える
中国の「独身の日(11月11日)」:中国の消費者の購買意欲を測るにあたり、11月の中国の非常に重要な買い物イベントである「独身の日」が参考になるだろう
 
10月の注目ポイントと注目度がそれほど高くなかったポイント
11月の注目ポイント

 

10月は大変な月でしたが、11月も引き続き、市場関連のニュースが盛りだくさんとなりそうです。ここでは、この1カ月の注目ポイント(に加えて注目度がそれほど高くなかったこと)を簡単にまとめ、今後数週間、私が注目していこうと考えているポイントについてご紹介します。
 

10月の注目ポイントと注目度がそれほど高くなかったポイント

注目度がそれほど高くなかったポイント:先週、ついに米3カ月債と米10年債の利回り差が反転(逆イールド)し、景気後退の兆しと呼ばれる状況が確認されました(既に米2年債と米10年債の逆イールドは発生していました)。留意していただきたいのは、米3カ月債と米10年債のイールドカーブは、一般的に景気後退を表す指標として米連邦準備理事会(FRB)が好んで参照しており、ニューヨーク連邦銀行による景気後退確率のモデルにも使用されているということです。しかし皮肉なことに、投資家は米2年債と米10年債の逆イールドを懸念する一方、今回の米3カ月債と米10年債の逆イールドについては、FRBが予想よりも早く金融政策の転換を行うことにつながると想定しており、より楽観的にみているようです。

注目ポイント:10月、米国株は堅調に推移しました 1 。私は、10月の株価上昇は、FRBによる金融政策の転換が早まるとの見方や、9月の投げ売りによる売り過ぎの揺り戻し、これまでのところ予想を上回っている企業業績(ただし、一部非常に厳しい結果もありました)などの要因が、複合的に作用した結果だと考えています。

注目度がそれほど高くなかったポイント:欧州中央銀行(ECB)は、今後の指針をほとんど示さないまま、9月に引き続き0.75%の利上げを決定しました。ECBは、直近の声明で、金融引き締めに「実質的な進展」があったと言及しつつ、それまでの「今後複数回の会合」で利上げを行っていくとの文言を、「さらに」利上げを行うとの曖昧な表現に変更しました。このため、ECBが近く、金融政策をそれとなく転換するとの見方もあります 2 が、実際にECBが金融政策の軸足を移すかどうかは不透明です。ECBのラガルド総裁は、「さらなる利上げを予定していることは認めるが、そのペースや、どの程度の水準まで行うかは言えない」と述べています 3 。以前にも申し上げたように、欧州のインフレ圧力の多くの部分は金融政策が影響を与えることができないところからきているため、私自身は、ECBが大幅な利上げを実施するのではないかと懸念しています。欧州経済の見通しが暗くなりつつあるのは、当然のことのように思えます。

注目ポイント:カナダ銀行(中央銀行)は先週、0.5%の利上げを実施しましたが、その利上げ幅は前回の0.75%から縮小しました。マックレム総裁は記者会見で、「この引き締め局面は終わりに近づいている…。ただ、近づきつつはあるものの、まだそこに至ってはいない。」と述べました 。そして、米国で経済指標が比較的堅調かつ、来週のFOMCで0.75%の利上げが予想される状況下にもかかわらず、こうした発言がありました。一部の中央銀行の金融引き締めのスピードがあまりにも急激ではないかと懸念してきた私は、これを歓迎すべきニュースと考えます。カナダ銀行は、欧米の中央銀行の中で、金融政策を「それとなく転換する」先陣を切ったのかもしれません。

注目ポイント:日本銀行は、欧米の中央銀行と全く異なる状況にあります。直近の日銀の政策決定では、政策金利を据え置き、イールドカーブ・コントロールを維持することが公表されました。また、物価上昇率の見通しを2.9%に引き上げました。

注目度がそれほど高くなかったポイント:世界経済は、以下のように減速しています。

  • ユーロ圏:ユーロ圏経済は、10月の購買担当者景気指数(PMI、速報値)が9月からさらに悪化し、弱まりを示しました。製造業PMIは9月の48.4から10月は46.6に低下しました 5 が、これは予想を大きく下回っており、4カ月連続での低下となりました。おそらく最大の懸念点は、新規受注の大幅な減少です。10月のサービス業PMIも低下し、3カ月連続での低下となりました 5 。加えて、10月は投入コスト上昇のスピードが加速しました。
  • 米国:米国の2022年7-9月期の国内総生産(GDP)成長率は、2四半期にわたるマイナス成長の後、+2.6%と予想を上回りました。当然のように、これは株式市場でも好感を持って受け止められました 6 。しかし、私の同僚からは、純輸出と在庫の影響を除くと成長率ははるかに低くなり(それでもプラス領域ではあります)、まったく異なる姿になると指摘しています。また、設備投資がここ2四半期縮小していることを挙げ、それがしばしば景気後退に導く要因となるとの理由から、米国経済の先行きを懸念しています。
  • 中国:中国は、発表が遅れていたGDPと経済指標を公表しましたが、これにより景気回復に向けた道筋が平たんでないことが明らかになりました。良いニュースは、家計消費が大幅に増加したことです。悪いニュースは、それがまだパンデミック(世界的大流行)前の水準を下回っていることです。

注目度がそれほど高くなかったポイント:中国共産党大会を受け、先週、中国の株式市場は大幅に下落しました。投資家は、新型コロナウイルスの規制強化に関する報道を懸念しており、今後の経済政策についてより詳細な情報を待っていることから、短期的には弱含みが続く可能性があります。良いニュースは、中国株のバリュエーションが過去水準と比較して魅力度が高まっていることです。直近の下落により、中国株のバリュエーションは歴史的な低水準に近づいています。中国株の景気変動調整後の株価収益率(CAPE)は13.7倍で、過去の最低値である13.1倍をわずかに上回っています(ちなみに、現在の米国株のCAPEは31.8倍、インド株のCAPEは37.6倍となっています) 7

そこそこ注目されたポイント:先週の米国決算発表は、一部の大手テクノロジー企業が予想を下回る業績を発表するなど、比較的厳しい結果となりました。しかし、全体的に見れば失望するようなニュースばかりではなく、これまでのところ、決算シーズンは比較的堅調に推移しています。10月28日現在、S&P500種指数の構成企業のうち、52%が決算発表を終えました。このうち71%が1株当たり利益について、68%が売上について、予想を上回る結果を報告しています 8 。エネルギーセクターや情報技術セクターはこれまでのところ好業績を発表しており、予想を上回る利益を報告した企業の割合はそれぞれ89%、84%と最も高くなっています。しかし、素材セクターや公益事業セクターはこれまでのところ厳しい結果となっており、予想を上回る業績を報告した企業の割合は、それぞれ55%、57%と最も低くなっています 8
 

11月の注目ポイント

米連邦公開市場委員会(FOMC):今週はFOMCが開催されますが、サプライズはないと考えています。政策金利が0.75%引き上げられるだろうという点について、強いコンセンサスが形成されています。最も注視すべきは、むしろ政策金利引き上げ発表後の記者会見だと私は考えています。今回こそ、FRBによる金融政策転換のタイミングになるとの見方もあります。しかし私は、仮に金融政策の転換が行われるとしても、それはカナダ銀行のように、それとなく方向転換を行うのではないかと考えています。私は、パウエルFRB議長が、これまでの引き締めが経済に反映される時間を与えるため、今後は政策金利の引き上げペースを減速するのが適切である、とのカナダ銀行のマックレム総裁のメッセージに共鳴する可能性は十分あると考えます。言い換えれば、引き締めは継続されるものの、より減速したペースで行われるということです。私にとってはそれでも十分に思えますが、市場にとってはそうではないかもしれません。

米国の中間選挙:上院の結果は不透明ですが、下院で民主党が敗北する可能性が高いことはほぼ確実のようです。しかし、私たちにとって関心のある観点でいえば、中間選挙が市場に大きな影響を与えることはないでしょう。もちろん、投資家は政府のチェック・アンド・バランス(抑制と均衡)を好む傾向があることから、議会の分裂は若干のプラス材料になるかもしれません。しかし過去を見ると、より重要なことは大統領就任から何年かであり、大統領就任から3年目が、株式市場のリターンに最もプラスに働く傾向があるようです 9 。今回は、歴史が繰り返されることを期待しましょう。

インフレ:特に米国において、物価が一気に下がる「完璧なディスインフレ」を期待する声もあります。しかし、私はそれほど簡単な、あるいは明確な形にはならないと考えています。インフレ圧力の原因となるものには、グローバル・サプライチェーンからの圧力など迅速に緩和されるものもあれば、賃金など、変化に時間がかかるものもあります。さらに、新型コロナウイルスの大幅なロックダウン措置が再び実行されれば、グローバル・サプライチェーン圧力など、緩和しているインフレ要因が強まる可能性もあります。

世界の購買担当者景気指数(PMI):私たちは、多くの中央銀行が同時に引き締めを行うという異常な環境下に置かれてきました。タイムラグを考慮すると、既にいくらか経済へのダメージは見られたものの、私は、今回の引き締めが経済に与える影響の多くの部分はまだあまり見られていないと考えています。PMI、特に新規受注のサブインデックスは、しばしば最初の「炭鉱のカナリア」になり得ます。この指標を注意深く見守りたいものです。複数の中央銀行が強力な景気減速策を講じていることから、前月比で小幅な減少であれば問題ないと考えます。しかし、急激な下落であれば懸念材料となり、まさに中央銀行が引き締めを「やりすぎた」ことの表れになるといえるでしょう。

中国の「独身の日」:中国とその経済には、多くの暗たんたる空気感が漂っています。しかし、雰囲気よりも重要なのは実際の結果です。私は、中国の消費者の購買意欲を測るにあたり、11月11日(近年は複数日に延長されています)に開催される、中国の非常に重要な買い物イベントである「独身の日」が参考になるだろうと考えています。2020年の「独身の日」の売上が、中国経済が新型コロナウイルスによる最初の落ち込みから大幅に回復したことを、正確に反映していたことを思い出してください。今年の売上高がどうなるかによって、中国経済が直近の落ち込みからどのように回復しているのか、特に中国の消費需要の強さについて、知ることができるかもしれません。

ロシア・ウクライナ紛争:周知のように、この紛争は世界経済に大きな影響を与え、成長率を押し下げ、インフレを悪化させました。今後数週間、特に寒さが厳しくなるにつれて、その動向を見守りたいところです。特に、ロシアは冬に軍事的な成功を収めてきた歴史があるため、寒さが厳しくなれば、ロシアにとって軍事的に有利に働く可能性があるとの見方もあります。ロシアのウクライナ産穀物に対する新たな禁輸措置(基本的に、以前合意した、ウクライナ産穀物の黒海の港からの輸出許可の停止にあたる)は、食料価格に大きな問題をもたらす可能性をはらんでいます。

今後の決算発表:決算シーズンは今後も続きますが、今後数週間で厳しい決算発表がさらに確認されるならば、市場心理が悪化する可能性もあります。

 

  1. 出所:ブルームバーグ
  2. 出所:ECB、2022年10月27日
  3. 出所:Yahoo Finance、“Euro slides after ECB's more dovish tone on rate outlook”、2022年10月27日
  4. 出所:Global News、“Bank of Canada says economy will ‘stall’ amid rate hike but skirts recession call”、2022年10月26日
  5. 出所:S&P Global、2022年10月24日
  6. 出所:米国商務省経済分析局
  7. 出所:Refinitiv Datastream and Invesco、2022年10月28日
  8. 出所:FactSet Earnings Insight、2022年10月28日
  9. 出所:ブルームバーグ、ダウ・ジョーンズ、2021年12月31日

 

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