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中央銀行はいずれも金利を据え置いたが、市場へは異なるメッセージを発した

中央銀行はいずれも金利を据え置いたが、市場へは異なるメッセージを発した
〔要旨〕
  • FRB:パウエル議長は、FRBは今回のサイクルでの金利がピークに達しているか、それに近いところにあると考えており、追加利上げの可能性は低いと述べた
  • ECB:ラガルド総裁は、今後の決定は、金利が「必要とされる限り、十分に抑制的な水準に設定される」ことを保証すると述べた
  • イングランド銀行:ベイリー総裁は、インフレ圧力が予想以上に持続的であることが判明した場合、金融引き締めを再開し得ると述べた
FRBは小さいが重要な変更をコミュニケーションに加えた

ECBとBOEはタカ派的なトーンを発信

市場はFRBから導きを得ている

全ての道は2024年の利下げに通ず?

よい休暇を!
 

米連邦準備制度理事会(FRB)、欧州中央銀行(ECB)、イングランド銀行(BOE)の中央銀行3行は、先週の会合でいずれも金利を据え置きました。しかし、アクションは同じでも、市場に向けたメッセージは大きく異なっており、FRBは他の中央銀行2行に比べてタカ派的ではなく、私が予想していたほどタカ派的でもありませんでした。

 

FRBは小さいが重要な変更をコミュニケーションに加えた

先週の本レポートで、私はこれらの中央銀行3行全てが、12月に内々に方向転換するものの、公の場ではタカ派的な姿勢を維持すると予想していましたが、これは誤りでした。ECBとBOEについては―「十分に高く、十分に長く」というお決まりの文言とともに―公の場でタカ派的な姿勢を維持しましたが、FRBから受け取ったのは、全く異なるメッセージでした。

始まりは、「ドットプロット」とも呼ばれる経済予測サマリーでした。2024年の利下げ幅を0.5%と示唆した、9月の連邦公開市場委員会(FOMC)におけるドットプロットを覚えておいでかもしれません。これは、6月のドットプロットが同年の利下げ幅を1%と示唆した後だっただけに、市場にネガティブな衝撃を与えました。これが、9月の米10年物国債利回りの大幅上昇の始まりとなりました。先週、FRBはタカ派的な9月の見通しをいくらか後退させました:12月のドットプロットは、2024年の利下げ幅を0.75%と示唆しました。私は、これは9月の予想に比べて確実に現実的と考えられるものの、6月のドットプロットの方が更に正確だったことが証明されるだろうと見ています。

またFRBの声明の文言には、小さいながらも重要な変更がありました1 。FRBは「いかなる」との表現を付け加え、「いかなる追加的な政策的引き締めの度合いを決定する際にも…」としました。つまり、これ以上の利上げが行われる可能性は非常に低いということです。パウエル議長は記者会見の質疑応答で、声明文に この「いかなる」との文言が含まれたことについて質問され、そうした見方が正しいことを認めました。パウエル議長はこれを、FRBが今回のサイクルでの金利がピークに達しているか、それに近いところにあると考えており、追加利上げの可能性は低いと認めたものだと述べました。
 

ECBとBOEはタカ派的なトーンを発信

パウエル議長の発言は、ラガルドECB総裁やベイリーBOE総裁の発言とはかなり異なっていました。

  • ラガルド総裁は、今後のECBの決定は、金利が「必要とされる限り、十分に抑制的な水準に設定される」ことを保証すると述べました。ECBは、現在の金利水準が「十分に長い期間」維持されれば、インフレ率を目標水準に回帰させることに「大きく貢献する」だろうとしました2
  • ベイリー総裁は、インフレ率がBOEの目標値まで低下するためには、金利が「十分に長い期間、十分に抑制的」でなければならないと指摘し、インフレ圧力が予想以上に持続的であることが判明した場合には、金融引き締めを再開し得ると付け加えました3
     

市場はFRBから導きを得ている

市場は明らかにパウエル議長の発言に耳を傾けており、ECB、BOE、カナダ銀行(同様に12月会合で金利を据え置いた)の言葉よりもはるかに重きを置いています。市場はまた、ここ数日、FOMCのメンバーたちが、政策が転換したとの見方を後退させようとしているのを無視しています。

しかし、先週のパウエル議長の声明で、言わば、「馬は既に納屋を離れて」しまったと言えます。これは、その前の週にシュナーベルECB理事が、「事実が変われば、私の考え方も変わる......直近のインフレ指標は、更なる利上げの可能性をむしろ低くしている......最近のインフレデータは、遅くとも2025年までに(インフレ率を)2%まで戻せるだろうとの確信を私に与えている」と類似の発言を行ったことに引き続くことを思い起こしてください4

こうした状況から、先週は米国債利回りの大幅な動きが続きました。雇用とインフレ関連のデータが予想を上回った後に、米10年物国債利回りが10月中旬にピークの5%に達したことを覚えておいでかもしれません5 。しかし、11月のFOMCがそれほどタカ派的でなかったことや、ディスインフレの進展を示すデータが出てきたことで、利回りは低下し始めました。11月下旬に行われたウォーラーFRB理事のハト派的なスピーチも、利回りの低下に拍車をかけました。米10年物国債利回りが4%を割り込んだ直近の下げは、先週のFOMCの決定と記者会見を受けたものでした5

利回りが低下した結果、リスク資産は上昇しました。先週、MSCI ACWI株式指数が2.5%超上昇したように、ヘッドラインは主に、株式とそのパフォーマンスの好調さに焦点をあててきました5 。パフォーマンスがより好調であるにもかかわらず、不動産は見過ごされてきました。世界の不動産投資信託(REIT)は先週、MSCI ACWI不動産投資信託指数が5.3%上昇し、力強い上昇を記録しました5 。金利がREITに与える影響を考えれば、これは驚くべきことではありません。
 

全ての道は2024年の利下げに通ず?

では、欧米先進国の中央銀行からのそれぞれ異なるメッセージを、私たちはどう理解すれば良いのでしょうか?私はこう考えます:これらの中央銀行は全て、同じ目的地に向かうバスのようなものです。あるものは早く出発し、あるものは速く走り、またあるものは風の強い道やでこぼこ道を走っています―一部のバスの運転手は、乗客に過剰なコミュニケーションをアナウンスしてしまうこともあります。しかし私の見るところ、バスはすべて同じ方向、同じ目的地に向かっています:ディスインフレが続き、利上げが終了し、2024年上半期には、これら全ての中央銀行で利下げが開始されるでしょう。

だからといって、政策が完全に明確だとは限りません―実際、そうではないからです。利回りや様々な資産クラスにボラティリティをもたらし得る、政策が不透明な期間が今後予想されますが、私は、金融政策環境に鑑み、2024年に向けて世界のリスク選好度は総じてポジティブになると予想しています。私たちの「2024年のグローバル市場見通し」をぜひご参照ください。
 

よい休暇を!

本レポートは、2023年は今回で最後となり、1月8日の週に再開を予定しています。皆様が良い年末年始を迎えられますよう、心からお祈りしています。

 

  • 1.

    FRB及びパウエル議長発言の引用出所:FRB、2023年12月13日

  • 2.

    出所:ECB記者会見、2023年12月14日

  • 3.

    出所:ブルームバーグニュース、“ BOE Holds Rates With Warning of a ‘Way to Go’ on Inflation”、2023年12月14日

  • 4.

    出所:ロイター、“Exclusive: ECB hawk Schnabel takes rate hike off table” 、2023年12月5日

  • 5.

    出所:ブルームバーグ、2023年12月15日

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