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中央銀行の6月会合が予定される中、利下げはいつ始まるか?

中央銀行の6月会合が予定される中、利下げはいつ始まるか?

〔要旨〕
  • ECB:インフレの改善が著しいため、6月に利下げを実施する可能性が極めて高いとみられる
  • カナダ銀行:インフレは減速しており、6月会合で利下げを実施する可能性は五分五分とみられる
  • FRB:メンバーから利下げにはより多くのデータを必要とするとの発言が出ており、6月会合では動きを見せないと思われる
カナダ銀行:6月5日

ECB:6月6日

FRB:6月12日

日銀:6月17日

オーストラリア準備銀行:6月18日

イングランド銀行:6月20日

世界の中央銀行の目指す先はほぼ同じ

 

子供の頃、春は心躍る季節でした。暖かくなり、夏休みがすぐそこまで来ていることは皆分かっていましたが、それが実際いつ来るかは正確には分かりませんでした(降雪日数に応じて終業式が数日ずれることもあったため)。それでも、全員が前向きな期待感を共有していました。私はこの春、市場は似たような期待感に包まれた期間を迎えており、様々な中央銀行による利下げ開始を待ち望んでいると考えています。正確なタイミングは定かでないにせよ、私たちは利下げが間もなく開始されると予想しており、ここ数週間は世界中の主要株価指数が史上最高値を更新するなど、利下げを待つ間も全体的に前向きな状況が続いています。

5月が終わろうとしている現在は、どのような状況でしょうか?私が各中央銀行の6月の金融政策決定会合に期待していることは、以下の通りです。

 

カナダ銀行:6月5日

先週、カナダの4月の消費者物価指数(CPI)は前月比0.5%上昇、前年同月比2.7%上昇となり、インフレの大幅な改善を示しました1 。これは予想に沿った数値であり、過去3年間で最も遅いペースでした。

より重要なのは、食品とエネルギーの価格を除いたコアCPIが4ヵ月連続で前月比0.1%上昇となったことで、これはインフレが十分に抑制されていることを示唆しています1 。カナダ銀行(中央銀行)はコアインフレに焦点を当てており、4月の金融政策決定発表で以下のとおり説明しました:「理事会は、特にコアインフレの推移を注視しており、経済の需給バランス、インフレ期待、賃金の伸び、企業の価格設定行動に引き続き焦点を当てている2 。」

これは6月のカナダ銀行会合前に発表される最後のCPIデータであり、6月利下げの可能性を大幅に高めたと私は考えています。他方で、米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨や一部の米連邦準備制度理事会(FRB)関係者の発言に見られるように、FRBが利上げに踏み切る可能性を考えると、カナダ銀行はまだ動きたがらないかもしれません。FRBが利上げすれば、カナダドルの対米ドルでの下落を引き起こすこととなり、問題となるでしょう。私は、今回のカナダ銀行会合で利下げが行われる可能性は五分五分と見ています。

ECB:6月6日

欧州中央銀行(ECB)は、6月会合で利下げを実施する可能性が極めて高いと私は見ています。インフレには著しい改善が見られています。4月のユーロ圏インフレ率は、ヘッドラインCPIが前年同月比2.4%上昇、コアCPIが同2.2%上昇しました。サービスCPIは依然高いものの、前年同月比3.7%上昇と大幅に鈍化しました3

また、発表されたばかりの4月の消費者インフレ期待の低下も、心強いものとなっています。1年先のインフレ期待は2.9%と、2021年9月以来の低水準となりました。また3年先のインフレ期待も、2.5%から2.4%へと低下しました4 。現在、時間当たり賃金が再加速していますが、私はこれがECBの6月利下げを阻む可能性は極めて低いと考えています。

FRB:6月12日

FRBが次回会合で動かないことは間違いなさそうです。明るい材料としては、CPIデータが1-3月期にディスインフレの進展の失速をみせた後、 4月にその再開を示したことです。更に、5月のミシガン大学消費者インフレ期待の確報値は予想を下回り、インフレ期待が十分にアンカーされている(安定的に維持されている)ことを示しました。ただし、これがFRBを満足させるのに十分でないことは明らかです。

ここ数週間、多くのFRB関係者が、利下げ開始にはより多くのデータが必要だと述べてきました。私には、ウォラーFRB理事による先週のコメントが、FOMCメンバーの大半の見方を集約しているように思われます:「労働市場の大幅な軟化が見られない状況で、金融政策スタンスの緩和を安心して支持できるようになるには、もう数カ月良好なインフレ・データを確認する必要がある5 。」これは、予想以上にタカ派的な内容となった5月のFOMC議事要旨(必要なら利上げも辞さない姿勢を示す参加者も含まれた)の公表直後のコメントでした。

FRBが選好するインフレ指標である個人消費支出(PCE)価格指数が今週の終わりに発表されます。このデータが注視され、市場を動かす力を持つことは明白です。しかし、それ単独ではFRBを動かすには十分ではないでしょう。そうは言いつつも、7-9月期に利下げが行われる可能性は依然として高いと私は考えています。

注目すべきは、アジアの中央銀行はドル高に直面して自国通貨を守る必要があるため、FRBの利下げ開始を待つ可能性が高いということです。

日銀:6月17日

日銀は数十年もの間達することのなかった、持続的な2%のインフレ目標を達成しつつあるようです。4月の日本のCPI(総合)は前年同月比2.5%上昇、コアCPI(生鮮食品を除くがエネルギーを含む総合)は同2.2%上昇となりました。これにより2か月連続でのインフレ低下となりましたが、それでもまだ中央銀行の目標値を上回っています6 。また消費者のインフレ期待は最近上昇してきており、日銀が再び利上げを行いやすくなっています。

日銀にはもう一つの目的もあるようです―それは、円安圧力に直面する中でこれに歯止めをかけることです。植田総裁は、日本経済への信頼を次のように表明しました:「4月の日銀政策決定会合後に発表されたデータを見ても、日本経済が持ち直すとの私の見方に変わりはない7 。」当然のように、ここ数週間、日銀はタカ派的な発言を強めています。6月の利上げは行われない見通しですが、2024年末までに1回よりも多く利上げが行われる可能性は高まっています。これは日本の国債市場にも影響を与え、10年物日本国債利回りは、11年ぶりに1%を超えました8

オーストラリア準備銀行:6月18日

オーストラリアではインフレがより頑強となっており、オーストラリア準備銀行(RBA)が今年利上げを実施するのではと懸念されているほどです。私は、RBAは利下げに関しては後発組の一角になると予想していますが、利上げを実施するとは考えていません。

イングランド銀行:6月20日

英国の4月のインフレデータはインフレの大幅な改善を示しましたが、予想されたほどではありませんでした。特に期待外れだったのは、サービスインフレの改善が非常に小幅だったことです。一定のサービスディスインフレの進展が見られれば、イングランド銀行による8月の利下げ実施には十分だと思われますが、私は6月会合での利下げは明らかにないだろうと見ています。

世界の中央銀行の目指す先はほぼ同じ

短期的にはこのような政策の違いが予想されるため、投資家が低金利通貨で資金を借り入れ、それを活用してより長期に高金利が続くと予想される通貨に投資するという、強固なキャリートレードが出現しています。利下げ開始時期が早い国々と遅い国々の間でも、タイミングに明らかにずれが生じると予想されることから、私は短期的にはこの傾向が続くと予想しています。しかし、学校に通う子供たち全員が最終的に夏休みを迎えるように、これらの中央銀行全てが2024年に利下げを開始すると私は予想しています。そして、これら全てとは言わないまでも、そのうちほとんどの中央銀行が緩やかな緩和(日銀の場合は緩やかな引き締め)の道筋に向かい、その結果リスク資産にとって有利な環境になる可能性が高いと考えています。

 

  • 1.

    出所:カナダ統計局

  • 2.

    出所:カナダ銀行プレスリリース、2024年4月10日

  • 3.

    出所:ユーロスタット 

  • 4.

    出所:ECB、2024年5月28日

  • 5.

    出所:ロイター、“Fed officials urge patience on timing of initial rate cut”、2024年5月21日

  • 6.

    出所:総務省

  • 7.

    出所:日本銀行

  • 8.

    出所:ブルームバーグ、2024年5月24日

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