欧州バンクローン市場、月次アップデート 2022年2月
2022年1月の欧州バンクローン市場は、相対的に高く安定したインカムがプラスに寄与し、月間トータル・リターンは+0.29%となりました1
Credit Suisse Western European Leveraged Loan Index(以下「CS WELLI」または「指数」)の2022年1月のトータル・リターンは+0.29%となり、内訳は価格変動が▲0.03%、金利収入が+0.32%となりました1。
今月は、主要中央銀行による政策金利の引き上げ方針が明らかになり、金融市場は大きく変動しました。米連邦準備制度理事会(FRB)は、当初の見込みよりも早く、3月に利上げを実施すると見られています。また、欧州中央銀行(ECB)も今後の利上げが予想されています。このため、金利上昇による景気悪化懸念が高まり、株式市場は軟調になりました。1月の株式市場では、ストックス欧州600指数が約4%、S&P500指数は約5%、ナスダック100指数は約10%、それぞれ下落しました2。債券市場も同様に下落し、CS WELLI は月間で▲1.65%のリターンとなりました 3。
こうした中、変動金利である欧州バンクローン市場は堅調に推移しました。1月は+0.32%のリターンとなり、固定利付債のハイ・イールド債券市場を大きく上回りました。
さらに、市場参加者がオミクロン株のリスクが低いと認識していることや、今後はコロナ禍による経済への悪影響が収まるとの楽観的な見通しを持っていることも支援材料となりました。
欧州バンクローン市場では、今月も順調な発行が継続しました。1月の新規発行額は、110億ユーロと前年同月比11%増となりました。新規発行のスプレッドは、EURIBOR+400bps(フロアは0%)となり、オミクロン・ショックで価格変動が大きくなった昨年末と比べ、約21bps縮小しました。
バンクローン市場とは対照的に、1月のCLO市場は閑散となり、新規CLOは発行されませんでした。しかしながら、2月上旬の時点では、多くの新規発行が予定されており、CLO(AAA格)のスプレッドは、EURIBOR+100bpを下回る水準になると予想されています。加えて、CLO組成準備のためのウェアハウスが積み上がっており(推計70本以上)、2022年のCLO発行とバンクローン需要を喚起すると思われます。
月末のCS WELLI の額面価格合計(市場規模)は約3,870億ユーロとなり、前年同期比20%増加しました1 。
リターン
1月のCS WELLIのセクター別リターンは、オミクロン株に関わるリスクが遠のいたことを背景にゲーム・レジャーが+0.81%と最も高いリターンとなり、航空が+0.58%、林産品・容器が+0.44%となりました1 。最も低いリターンとなったのは、エネルギーの▲2.21%でした 1 。
格付け別では、1月は「B」格が+0.31%と最も高く、「BB」格が+0.21%、「CCC」格が+0.28%となりました1。
1月末におけるCS WELLI構成銘柄の平均価格は、前月末比とほぼ変わらず98.69ユーロでした1。CS WELLIの3年ディスカウント・マージンは4.12%で、前月末比0.01%下落しました1。1月のクレディ・スイス欧州ハイ・イールド債券(Credit Suisse Western European High Yield)指数は▲1.65%のリターンとなり、スプレッド・トゥ・ワーストは4.17%でした3。
ファンダメンタルズ
2月上旬に欧州中央銀行(ECB)の政策理事会が開催されました。ECBは、インフレ上昇リスクが高まっていることを背景に、柔軟な金融政策の必要性を表明しました。ラガルド総裁は、インフレ上昇リスクを考慮して本年中の利上げの可能性を示すなど、タカ派色が強まりました(昨年末には、同総裁は「2022年の利上げは、ほぼない」と発言)。また、政策金利の引き上げ前に資産購入を終了させる政策に変わりはないものの、年内の資産購入プログラム(APP)による資産買い入れペースを再検討する可能性を示唆しました。
ユーロ圏で高進するインフレにより、ECBは金融政策の早期変更の検討を余儀なくされました。ECBは、「インフレ率の見通しがその予測期間の終了前までに2%に達し、残りの予測期間で2%を維持すると見込まれ、さらに基調インフレの動向が中期的に物価上昇率が2%に安定するよう十分に進展していると判断されるまで政策金利は現行水準又はより低い水準を維持」するというフォワードガイダンスにコミットしています。ラガルド総裁は、本年12月までに少なくとも累計0.4%ポイントの利上げを行うという市場の見通しに対して、特に否定的な見解は出しませんでした。
1月のユーロ圏総合購買担当者景気指数(PMI)の確定値は、ドイツの下方修正を反映し、速報値の52.4から0.1ポイント下方修正されました。前月同様、イタリアとスペインの総合PMIは、生産高の見通しが予想値や過去平均を上回っているものの、新規受注が大幅に減少したことを背景に、予想値を下回りました。英国では、総合PMIが0.8ポイント上方修正されました。経済成長率が鈍化したにもかかわらず、依然として物価とコスト高の圧力が残っています。
PMIの賃金動向を見ると、①ドイツでは、他のコスト同様、賃金がコストプッシュインフレの上昇要因となっています。②フランスでは、一部の企業が適切に人材を確保することが難しく、人手不足が企業経営の支障となっています(コロナ禍による自宅待機も含む)。③イタリアでは、多くの企業で燃料、素材、運輸、賃金、エネルギーなどのコスト負担が急増しており、企業は営業利益率を保つため、製品の値上げを余儀なくされています。
ユーロ圏の2021年10−12月期の実質国内総生産(GDP)速報値は前四半期比+0.3%となり、コロナ禍前の2019年10−12月期をわずかに上回る水準となりました。ユーロ圏各国が今冬に導入した行動制限の違いによって、各国の2021年10−12月期のGDP成長率に大きな差が生じました。オーストリアはマイナス成長(▲2.2%)となり、スペインはプラス成長(+2.0%)となりました。
1月末現在、S&P欧州レバレッジド・ローン指数における過去12カ月のデフォルト率(額面ベース)は0.62%でした4。過去平均は年3.18%です4。
脚注
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1
Credit Suisse Western European Leveraged Loan Index (CS WELLI)、ユーロ建てヘッジ付き、2022年1月31日現在。過去の実績は将来の成果を保証するものではありません。指数に直接投資することはできません。
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2
ストックス欧州600指数およびS&P500指数は、2022年1月31日現在。
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3
Credit Suisse Western European High Yield Indexはユーロ建て、2022年1月31日現在。
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4
S&P European Leveraged Loan Index。過去の平均デフォルト率は、2007年6月1日から2022年1月31日までを対象に集計しています。
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