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欧州バンクローン市場、月次アップデート 2023年12月

欧州バンクローン市場、月次アップデート 2023年12月
2023年11月の欧州バンクローン市場は、相対的に高く安定したインカムがプラスに寄与したとともに、価格変動もプラススリターンとなり、月間トータル・リターンは+0.97%となりました

Credit Suisse Western European Leveraged Loan Index(以下「CS WELLI」または「指数」)の2023年11月のトータル・リターンは+0.97%となり、内訳は価格変動が+0.27%、金利収入が+0.70%でした1 。11月末時点のCS WELLIの年初来トータルリターンは+11.1%となり、同指数は年初の91.56ユーロから、96.07ユーロに上昇しました。

11月は、欧州(および米国)で金融政策が緩和的になるとの期待が高まったこと、それによって来年の景気が下支えされてソフトランディングするとの思惑が広がったことを背景に、リスク資産は堅調に推移しました。インフレ圧力が引き続き鈍化したことで、投資家センチメントは全体的に回復しています。前月に勃発したイスラエル-ハマス紛争で急上昇した株式・債券・金利等のボラティリティは、停戦交渉などの進展で低下しました。また、原油価格も紛争勃発前の水準まで下落しました。

CS WELLI:2023年年初来の累積リターン

全体的にセンチメントが改善したこともあり、バンクローンの新規発行はほぼ横ばいの水準で維持されました。いくつかのCLOが新規発行されたことで、CLOからのバンクローン需要がローン価格を下支えしました。また、流通市場でも概ね活発な取引が見られましたが、金利の低下によってバンクローンのリターンはハイ・イールドを下回りました。いくつかのCLOは利益確定のローン売却を行いましたが、それによってローンの価格やリターンにややばらつきが生じ、高格付銘柄が低格付銘柄をアウトパフォームしました(次項の格付別リターンをご参照) 。
 

リターン:2023年11月

11月のCS WELLIのセクター別リターンでは、食品・製薬が+2.47%と最も高いパフォ-マンスとなり、続いて不動産の+1.63%、サービスの+1.37%となりました。今月は全てのセクターがプラスリターンとなり、最も低いパフォ-マンスとなったのは、エネルギーの+0.07%でした1

11月のCS WELLIの格付別リターンでは、 「BB」 格が+1.03%と最も高く、「B」格が+1.01%、 「CCC」格が最も低い-1.36%となりました1

11月末におけるCS WELLI構成銘柄の平均価格は前月末比約0.30ユーロ上昇し、96.07ユーロとなりました1。CS WELLIの3年ディスカウント・マージンは5.26%となり、前月末比0.13%縮小しました1

11月のクレディ・スイス欧州ハイ・イールド債券(Credit Suisse Western European High Yield)指数は+3.13%のリターンとなり、スプレッド・トゥ・ワーストは4.54%、イールド・トゥ・ワーストは7.59%となりました2
 

ファンダメンタルズ

11月のユーロ圏消費者物価指数(速報値)は、10月の数値から0.5%低下(3カ月連続の低下)し、2021年7月以来の水準である前年同月比2.4%となりました。市場予想が2.7%であったため、予想外の大きなポジティブサプライズとなりました。主な下振れ要因はコアインフレ率の低下ですが、前年同月比で0.6%低下して3.6%となり、市場予想(3.9%)を大きく下回りました。コアインフレ率の低下は、主には食品インフレ率の低下(前年同月比で0.5 %低下して6.9%)によるものです。

11月のユーロ圏投資家信頼感指数は、10月の-21.9から-18.6(予想値は-22.4)へと急上昇しました。この中で期待指数は-16.8から-10.0に改善し、2023年2月以来で最小のマイナス水準となりました。

11月のユーロ圏総合購買担当者景気指数(PMI)は0.6ポイント上昇して47.1となり、予想値の46.9を上回りました。ドイツや周辺国の景気回復が示唆されましたが、フランスの数値はやや低下しました。ドイツ(およびユーロ圏全体)の製造業PMIの上振れは、製造業回復の兆しかもしれません。英国では、総合PMI(速報値)が大幅に改善して50.1となり、景気拡大を示唆する水準となりました。

欧州中央銀行(ECB)は10月の定例理事会ですべての政策金利を据え置き、中銀預金金利を4.0%で維持しました。ECB総裁は、現状の金融政策に変更がないこと、データを重視する金融政策を継続することを強調しました。金融市場では、インフレ動向を踏まえて、2024年に中銀預金金利が約1%利下げされることを織り込んでいます。最初の利下げは、2024年の初夏から前倒しされて、4月頃の見通しとなっています。こうした動きは、2024年のユーロ圏の低めの経済成長見通しを反映しています。

11月末現在、モーニングスター欧州レバレッジドローン指数における過去12カ月のデフォルト率(額面ベース)は1.42%でした3。過去平均は年2.89%となりました3

指数のトータルリターン(%)


 

脚注

  • 1.

    Credit Suisse Western European Leveraged Loan Index (CS WELLI)、ユーロ建てヘッジ付き、2023年11月30日現在。過去の実績は将来の成果を保証するものではありません。指数に直接投資することはできません。

  • 2.

    Credit Suisse Western European High Yield Indexはユーロ建て、2023年11月30日現在。

  • 3.

    Morningstar European Leveraged Loan Index。過去の平均デフォルト率は、2007年6月1日から2023年11月30日までを対象に集計しています。

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