グローバル・フィックスト・インカム・ストラテジー2019年7月

グローバル・フィックスト・インカム・ストラテジー2019年7月

グローバル・マクロ・ストラテジー⾦利⾒通し

-    英国をニュートラル→オーバーウエートへ

グローバル・マクロ・ストラテジー通貨⾒通し

-    英ポンドをニュートラル→アンダーウエートへ

-    オーストラリアドルをニュートラル→オーバーウエートへ

グローバル・マクロ・ストラテジー

⾦利⾒通し
 

米国:ニュートラル・・・米景気の底堅さにもかかわらず、市場利下げを織り込み過ぎだが、逃避需要は引き続き⾼い⾒込み

米景気は、当⾯は貿易をめぐる不確実性により緩やかなものとなるものの、中期的には米連邦準備理事会(FRB)の⾦融政策による下⽀えが予想されます。関税によって真の状態が⾒極めにくい⾯はありますが、インフレは一進一退で推移するはずです。このような景気とインフレの環境は、FRBが年内に2回の利下げを⾏うとみられる状況を⽣み出しています。債券市場は、2020年にかけてさらなる複数回の利下げを織り込んでいますが、貿易や英国の欧州連合(EU)からの離脱(ブレグジット)のような多くの外⽣的リスクが依然として存在することから、リスク考慮後のリターンの⾒通し上、米国債のアンダーウエートが⼗分に魅⼒的だとは思えません。

欧州:アンダーウエート・・・既に追加緩和の織り込みが難しい水準にあると判断

ユーロ圏の購買担当者指数(PMI)は4-6⽉期に多少の安定を⾒せましたが、ドイツの鉱工業⽣産は依然として弱い状況です。ドイツの不振により、ユーロ圏の実質域内総⽣産(GDP)成⻑率は、1-3⽉期の前期比+0.4%から、4-6⽉期には同+0.2%に鈍化すると予想されます。市場の注目は、11⽉に退任するドラギ総裁の後任にラガルド⽒が任命された欧州中央銀⾏(ECB)に移りました。市場では、ECBが資産購入策を再開し、政策⾦利である預⾦⾦利を引き下げ、さらにハト派的なフォワード・ガイダンスを提供すると予想しています。ユーロ圏の中核国債については、現在の割高さ(利回りの低さ)や、既に年内20ベーシスポイントの利下げが織り込まれ、さらなる緩和を織り込むことが難しい水準にあることを踏まえ、戦術的にデュレーションを短期化したままとしています。

中国:オーバーウエート・・・主要先進国債券に⽐べて下げ渋っている利回りに投資妙味あり

納税シーズンに伴い、当⾯はインターバンク市場の流動性が引き締まる可能性がありますが、中国の緩和的な⾦融政策と、海外の中央銀⾏の概して積極的な⾏動により、中期的にはオンショアの中国国債に前向きなスタンスを維持しています。確かに、ロング・ポジションが広範に存在することや、市場にすでに織り込まれている期待通りの、あるいはそれ以上の措置を中央銀⾏が打ち出せるかどうか不透明であることを踏まえると、当⾯の中国オンショア国債はボラティリティにさらされやすい公算です。しかし、米国や日本、ドイツといった世界の主要国の国債利回りと比べ、中国オンショア国債の利回りが相対的に下げ渋っており、利回り格差が拡⼤していることが、中国国債への資⾦流入につながると予想しています。

日本:ニュートラル・・・利回りの⾼⽌まりと日本の投資家の回帰が予想される

日本国債(JGB)の利回りは先⽉からほぼ横ばいで推移しています。JGBは、ECBの緩和を⾒越して利回りが急低下した欧州国債に⼤きく出遅れており、その利回りはドイツ国債などと比べ高⽌まっています。海外債券の利回りの魅⼒後退は、日本の投資家の円債回帰につながるでしょう。

英国:オーバーウエート・・・織り込まれている緩和規模は他の主要債券よりも穏やかで、需給面も好材料

英国の経済データの悪化と「合意なきブレグジット」リスクの高まり、世界的な景気減速が、イングランド銀⾏(BOE)がハト派姿勢を強める状況を後押ししています。ただし、市場が織り込んでいるBoEの緩和規模は、他の中央銀⾏に比べると比較的穏やかなものです。さらに、今後3カ⽉の純供給が⼤幅なマイナスとなるなど、英国債の需給要因は非常に好材料です。一方で、総選挙が早期に⾏われるようであれば、財政リスクプレミアムが高まる可能性があります。

カナダ:ニュートラル・・・国内の景気は強いものの、海外からの利回り低下圧⼒は無視できず

中央銀⾏のカナダ銀⾏(BoC)は、とりわけ強いカナダの景気と、減速する海外の景気、世界的な貿易摩擦による逆風とのバランスをとる必要があります。カナダの10年国債利回りは、低水準からいったん上昇し、1.5%近くにとどまっています1 。年内の利下げは市場では織り込まれていませんが、カナダ国債の利回りは世界的な⾦利低下圧⼒の影響を受け続けると予想されます。

オーストラリア:ニュートラル・・・当面は⾦融政策も様⼦⾒で債券利回りも動意薄の公算

2カ⽉(2会合)連続での利下げを経て、中央銀⾏のオーストラリア準備銀⾏(RBA)は、より条件次第の緩和バイアスに移⾏しているようです。11⽉までは、相当な下振れショックが起きない限り、さらなる利下げは⾏われないでしょう。財政による政策対応やマクロ・プルーデンス措置の一部緩和も、⾦融政策が経済⽀援の負担を全⾯的に担う必要性を低下させました。オーストラリアの経常収⽀は、歴史的に前例のない⿊字状態となっており、インフレ上昇につながるオーストラリアドル安の余地を削減し、海外の債券利回りに対するプレミアムの拡⼤を抑えるはずです。

インド:ニュートラル・・・ファンダメンタルズは好条件ながら、これ以上の利回り低下余地は限定的と判断

インドの政策とマクロ環境は、おおむね債券の⽀援材料になっています。最近の経済データは、インフレ率や成⻑率の軟化を⽰しており、中央銀⾏のインド準備銀⾏(RBI)は、現緩和サイクルで4回目となる利下げを8⽉に⾏うでしょう。それにもかかわらず、過去10カ⽉間の⼤幅な⾦利低下を踏まえ、私たちはオーバーウエートからニュートラルへ、スタンスを引き下げてきました。今年のモンスーン(夏場の降水量)の不⾜や高い財政⾚字が、それらがなければ問題のないインフレ環境に逆風を引き起こす可能性もあります。利回りは今や5年ぶりの低水準にあり、これ以上の低下余地は限られていると私たちは考えています。

 

ロブ・ワルドナー(チーフ・ストラテジスト)

ジェームズ・オング(ディレクター、デリバティブ・ポートフォリオ・マネジメント)

ノエル・コラム(アソシエイト・ポートフォリオ・マネジャー)

イー・フー(シニア・アナリスト)

マイケル・シビター(シニア・ポートフォリオ・マネジャー)

ブライアン・シュナイダー(シニア・ポートフォリオ・マネジャー)

スコット・ケース(ポートフォリオ・マネジャー)

アムリッパル・シドゥー(クオンツ・アナリスト)

 

1. 出所:Bloomberg、2019年7⽉22日時点。

通貨⾒通し

米ドル:ニュートラル・・・FRBの緩和⾒通しと有事の「避難先」とで⼀進⼀退となる⾒込み
FRBの利下げは、利回りが高い地域に収益機会を求めて投資家が米国を離れる可能性があるため、米ドルの潜在的なマイナス要因です。しかし、他の多くの中央銀⾏も同様に緩和を検討しており、投資機会は限られることでしょう。当⾯は、貿易とブレグジットのリスクが引き続き迫っていることを踏まえると、米ドルは「避難先通貨」のステータスとFRBの緩和の間で一進一退となる可能性が想定されます。

ユーロ:ニュートラル・・・ECBの緩和と年末にかけての景気安定観測でレンジ推移の公算
ECBは今年⾦融緩和を⾏う可能性が高く、それはユーロ圏のファンダメンタルズの改善につながるものの、ユーロにとっては下押し要因となる⾒込みです。欧州の景気は、世界的な景気の改善を背景に輸出セクターが回復することから、年内には安定すると予想しています。内需セクターが引き続き堅調さを⾒せていることも、この⾒方を⻑期的に維持することに⾃信をもたらしてくれます。こうした要因は、当⾯のユーロドル相場をレンジ内で推移させることになるでしょう。

中国⼈⺠元:ニュートラル・・・米中通商協議次第ではあるものの、⼈⺠元安が進⾏した際には中国資産購入の好機とみなす投資家の存在も
⼈⺠元の対米ドルレートは、7⽉は狭いレンジ内で推移し、米中通商協議の再開やFRBの⾦融緩和姿勢に下⽀えされ、1米ドル=6.90⼈⺠元を下回る水準にとどまりました。市場は貿易関連の報道を注視しており、中国資産への配分を増やそうとしている投資家は、⼈⺠元安を購入の機会とみなす可能性があります。もし、貿易に関して予想されていたほどの進展がない場合、⼈⺠元は不安定になり、1米ドル=6.90⼈⺠元台半ば前後となる可能性はありますが、中期的なメインシナリオとしては引き続き1米ドル=6.60〜6.80⼈⺠元を想定しています。

日本円:オーバーウエート・・・日本の投資家の対外投資の減少と経常⿊字の拡⼤が円を後押し
7⽉は、投資家のセンチメントが改善したにもかかわらず、日本円は比較的底堅く推移しました。これはおそらく、日米⾦利差の縮⼩を反映したものと考えられます。今後は、①日本からの対外直接・証券投資に伴う資⾦流出の減少、②コモディティ価格の下落や消費税率の引き上げを控えた貯蓄率の上昇による経常⿊字の拡⼤―などが円の⽀援材料となるはずです。

英ポンド:アンダーウエート・・・「合意なきブレグジット」のリスク拡⼤が英ポンドを下押し
ボリス・ジョンソン⽒が英国の新首相となり、10⽉に「合意なきブレグジット」となる可能性が高まっています。「合意なきブレグジット」に反対する議員も、それを⽌める明白なメカニズムを欠いており、ほぼ唯一の⼿段と考えられる政府の不信任投票も、確実に機能するわけではありません。この不確実性や景気の減速、BoEの⾦融政策のハト派的スタンスへのシフトは、ポンドの魅⼒低下につながるとみています。

カナダドル:ニュートラル・・・カナダの⾼成⻑と他国の⾦融緩和観測に⽀援されたカナダドル⾼はおおむね⼀巡
カナダドルは、カナダ経済の好成⻑と、他の主要中央銀⾏の⾦融緩和観測の高まりを背景に上昇してきました。しかし、経済データが多少なりとも悪化すれば、カナダドルの下押し要因となるはずです。

オーストラリアドル(豪)ドル:オーバーウエート・・・国際収⽀の⼤幅な改善と利下げ圧⼒の後退が豪ドルを⽀援
コモディティ価格の上昇と海外からの直接投資の流入により、オーストラリアの国際収⽀は、ほぼ前例のない⿊字となりつつあります。このため、RBAの利下げにもかかわらず、豪ドルは下⽀えされています。財政の緩和とマクロ・プルーデンス引き締めの終了も、RBAの追加利下げへの圧⼒緩和につながっており、海外との⾦利差が豪ドルの下押し要因となることを限られたものにしています。今後も世界の景気が引き続き弱いようであれば、豪ドルが米ドルにアウトパフォームすることはないでしょうが、ニュージーランドドルやカナダドルといったリスクに敏感な他の通貨にはアウトパフォームできると考えています。

インドルピー:ニュートラル・・・ファンダメンタルズは良好ながら、バリュエーション面やRBIの介入の可能性から横ばいを⾒込む
インドルピーは、インドの良好な政策環境や、8⽉の利下げがおおむね織り込まれていることから、当⾯は若⼲の上昇バイアスを伴いながら、横ばいで推移すると予想しています。現在のバリュエーションを踏まえると、それほどの上昇は⾒込まれず、またルピーが上昇すれば、RBIが介入すると予想されます。ルピーに対するスタンスはニュートラルですが、今後数カ⽉間はルピーのボラティリティ低下が予想されることから、ルピーはかなりのキャリー益を提供する可能性があるとは考えています。

ロブ・ワルドナー(チーフ・ストラテジスト)
ジェームズ・オング(ディレクター、デリバティブ・ポートフォリオ・マネジメント)
ノエル・コラム(アソシエイト・ポートフォリオ・マネジャー)
イー・フー(シニア・アナリスト)
マイケル・シビター(シニア・ポートフォリオ・マネジャー)
ブライアン・シュナイダー(シニア・ポートフォリオ・マネジャー)
スコット・ケース(ポートフォリオ・マネジャー)
アムリッパル・シドゥー(クオンツ・アナリスト)

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