【臨時レポート】米大統領選は予想を超えた激戦に
金融市場で不確実性が台頭する可能性に注意
トランプ陣営が健闘する展開に
11月3日に実施された米国大統領選挙は、事前予想を超えた混戦になりつつあります。執筆時点(日本時間11月4日14時現在)において、大統領に当選するために必要な選挙人数の270人に対して、ジョー・バイデン候補は205人、トランプ候補は114人を獲得することが確実視されています(CNN調べ、以下同様)。しかし、両陣営の支持率が拮抗する激戦州では、郵便投票分の開票が比較的早い段階で行われるフロリダ州、オハイオ州、ノ-スカロライナ州、ジョージア州においてトランプ氏がバイデン氏をややリードしています(CNNによる、以下同様)。これまでのところは、トランプ氏が事前の世論調査の結果以上に健闘していると言えそうです。
これから先の大統領選挙の行方を握るのは、①接戦となっているテキサス州、アリゾナ州における票の行方、➁ペンシルベニア州やウィスコンシン州など、郵便投票の結果が選挙日当日に初めて開票され始める(ミシガン州の場合は前日に開票開始)激戦州の動向―です。トランプ氏が投票所で直接投票することを呼び掛けていたこともあり、開票開始が遅かったこれらの州(➁)では執筆時点でトランプ氏の得票がやや勝っていますが、郵便で投票した人々の間ではバイデン氏の支持者が多かったとみられることから、バイデン氏が開票作業の終盤で得票を伸ばす可能性が高いと考えられます。総じて、現時点では、大統領選挙の結果は全く予断を許さない状況です。
他方、トランプ氏が各州の選挙において僅差で敗れるような場合には、トランプ陣営が訴訟によって票の数え直しや集計の無効を訴える可能性もあり、最終的に決着がつくまでは、相当な時間がかかる可能性にも留意しておく必要があります。
結果判明まで時間がかかる場合は一時的に米株安・米長期金利低下の可能性
選挙日にあたる11月3日の米国市場では、バイデン氏が勝利する可能性が高いという観測が強まったことから、株価が上昇しました。しかし、今後、選挙結果の判明に時間がかかる場合には、不透明感が台頭し、株価には一時的な下落圧力が働くとみられます。また、企業活動や家計の消費活動が減速する公算が大きいことから、いったん上昇した米国の長期金利が再び下振れる可能性があります。投資家の間にリスクオフの態度が強まることで、足元でやや円安方向に動いてきたドル円レートは円高に振れる可能性が高まります。逃避資金が金に向かうことも予想されます。
もっとも、こうした金融市場での不透明感は大統領選挙の結果が判明すれば解消され、バイデン氏、トランプ氏のどちらが大統領選に勝利しても、相場は逆方向(株高、米長期金利高、円安)に向かうとみられます。ただし、バイデン氏が勝利する場合、民主党が上院で過半数を奪還できない場合には注意が必要です。この場合は、バイデン氏の主要な政策を実現させることは極めて困難になるとみられ、大規模な財政支出が実施できないことで、景気浮揚への期待は失われ、株価や米長期金利の上昇は限定的と見込まれます。
激戦の上院選にも注目
同時に実施された上下両院選挙では、下院は事前予想通り民主党が過半数を獲得するとみられる一方、上院では民主党と共和党のどちらが過半数を獲得するかが決まるまで、ある程度の時間がかかる可能性が出てきました。CNNによる開票速報では、上院の激戦州のうち、民主党候補がリードしているのはモンタナ州だけであり、ノースカロライナ州、サウスカロライナ州、メーン州、アイオワ州、ジョージア州(2議席のうち、任期満了に伴う改選議席分は共和党候補がリード、残る特別選挙分は特定候補が過半数に達しない場合には来年1月5日に決選投票となりますが、現時点では過半数の票を得る候補者がいないうえ、共和党2候補の得票が民主党候補の得票を大きく上回ることから1月5日の決戦投票では共和党候補が有利とみられます)では共和党候補がリードしています。今回の選挙では郵便投票が歴史的に多い選挙となりましたが、郵便投票の開票ペースや地域的な開票ペースの差があることから、これらの州での勝敗は予断を許しません。上院では民主党が非改選の35議席に加えて、事前の世論調査では13議席で優勢とみられることから、現在の各候補のリードが続けば、民主党の上院での議席数は激戦2州分を合わせて49議席(民主党と会派を同じくする独立系のサンダース議員とキング議員を含む)となり、共和党が引き続き上院での多数派を維持します。
他方、民主党がこれらの激戦州のうち2議席を獲得すれば、副大統領が上院の議長を兼ねることから、大統領選で勝利した党が事実上の過半数を握ります。先に触れたように、どちらの政党が上院を制するかは来年以降の米政権の政策遂行力を大きく左右することから、上院選挙の最終的な結果も、大統領選挙の結果と合わせて注目されます。
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