ロシアがウクライナへの「特別軍事作戦」を開始
〔要旨〕
金融市場への影響:2022年に入り、原油、パラジウムなどのコモディティ価格が大きく上昇している一方、ロシアのウクライナ侵攻を受け、ロシアやウクライナの株価が急落
ロシア・ウクライナ紛争による世界経済への影響:コモディティ価格の上昇や軽度のスタグフレーションが見込まれる。また、今回の軍事衝突により、主要中央銀行のタカ派度を和らげると予想される
結論:短期的には金融市場の高ボラティリティが予想されるものの、長期投資家はポートフォリオの分散化を進めることが望ましい
ロシアはウクライナに対して軍事作戦を開始しました。ウクライナは戒厳令を宣言、キエフやドンバスを含むウクライナの一部で軍事衝突が進行中です。ウクライナでは人命の損失を含む重大な混乱が生じることが懸念されます。一方、西側諸国はロシアに対する経済制裁とウクライナへの支援を強化しています。
金融市場への影響
2022年に入り、原油、パラジウムなどのコモディティ価格が大きく上昇している一方、ロシアのウクライナ侵攻を受け、ロシアやウクライナの株価が急落
これまで市場関係者はリスク回避姿勢を強めていますが、すべての資産クラスに及んでいるわけではありません。各資産クラスや地域の市場の動きは、ロシア・ウクライナ紛争の影響を最も受けたコモディティ市場の値動きによるマクロ経済的な影響を反映したものとなっています。
・コモディティ:原油、天然ガス、穀物、パラジウムが急上昇しました。ロシアはこれらの主要な輸出国であり、ウクライナは穀物の主要な輸出国です。
・通貨:米ドル、スイスフラン、日本円が上昇しました。一方、ユーロ、英ポンドは軟調となっています。
・債券:米国債、ドイツ国債などのユーロ圏国債、英国債はすべて利回りが低下(債券価格は上昇)しました。
・株式:EMEA(ヨーロッパ、中東、アフリカ)を中心に、株価指数は全面的に下落しています。特に、ドイツなどのロシアとの貿易関係が強い国は大きく下落している一方で、エネルギー産出国の下落は限定的です。
・新興国市場:ロシアとウクライナが急落しています。また、トルコやインドなどのコモディティ輸入国は、ブラジルなどの輸出国よりも大きな打撃を受けています。メキシコペソと南アフリカランドは下落しているものの、限定的なものとなっています。
ロシア・ウクライナ紛争による世界経済への影響
ロシアのウクライナ侵攻による経済的影響は、コモディティ価格の上昇や軽度のスタグフレーションが見込まれる。また、今回の軍事衝突により、主要中央銀行のタカ派度を和らげると予想される
紛争の先行きは不透明なもので、さまざまな可能性が考えられます。私たちは、ロシアが主要各国と決定的に対立する状況になったと考えます。欧州での衝突は、明らかに国際システムにとって大きな衝撃です。しかし、北大西洋条約機構(NATO)が西ヨーロッパを防衛していることを考えると、軍事衝突はウクライナ領土に集中すると予想されます。したがって、一般市民や企業などへの被害はウクライナとロシアで最も大きく、両国以外への影響は重要ではあるものの極端には大きくないと見込まれます。その中では、欧州への影響が最も大きい一方、米国とアジアへの影響は小さいと見込まれ、多くの新興市場にとっては影響がその中間になると考えられます。
他の地域への経済的影響は、コモディティ価格の上昇、インフレの押し上げと経済成長を損なう一種の軽いスタグフレーション的なものになると考えられます。しかし、かつてのイランのように、ロシアが西側の決済システムや個人向けインターネット・サービスから除外されるまで緊張がエスカレートした場合、エネルギー供給の中断から深刻なスタグフレーション・ショックが生じる可能性があります。ロシアは欧州に天然ガスの40%、石炭を含む固形燃料の半分、石油の約4分の1を供給しています1。
この軍事衝突により、主要中央銀行の政策スタンスはタカ派度を和らげるとみられ、3月の米連邦準備理事会(FRB)による利上げ幅は0.25%の方向となり、ECBは中立姿勢にとどまると予想されます。
長期的な影響は深刻である可能性が高く、時間の経過とともに顕在化するでしょう。国益と国家イデオロギーに関する限り、対外経済政策の焦点は、国家安全保障リスクを軽減、あるいは少なくとも管理することに当てられるでしょう。これは、経済や金融面での関係強化を促進するような体制、そしてその結果として相互の依存度と紛争のコストが高まるような体制から世界が離脱していくことを意味します。
結論
短期的には金融市場の高ボラティリティが予想されるものの、長期投資家はポートフォリオの分散化を進めることが望ましい
短期的には金融市場の高ボラティリティが続くと予想されますが、過去の紛争では長期投資家が多くの興味深い投資機会を得ることができたことに留意してください。戦争が勃発したこと(そしてスタグフレーション・リスクが高まったこと)を受けてボラティリティと不確実性が高まったことを考えると、ポートフォリオの分散化を進めることが望ましいと考えられます。
1.出所:国際エネルギー機関
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MC2022-024