グローバル・ビュー

グローバル株高局面はいつまで続くか?

Invesco Global View

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要旨
株価上昇トレンドが継続してきた背景

グローバル市場では、11月初め以降、株高トレンドが継続しています。年初来の米国の株価を強力にサポートしてきたのが、①米国景気のソフトランディングに対する期待感、➁インフレ率の緩やかな低下を背景にFRB(米連邦準備理事会)がFFレートを年内に大幅に引き下げるという期待感、➂世界的な製造業の回復への期待感—であったとみられます。

2月分CPI指標が上振れても株高が続いた理由

2月分の米CPI統計では、コアCPIの前月比が市場の事前予想比で上振れ、これが公表直後の米長期金利の上昇や2024年末時点でのFFレート見通しの上方修正につながりました。直後の株価が上昇したことには意外感がありますが、①景気の減速感が強まっていたこと、➁FRB高官の最近の発言が過度にタカ派的ではなかったこと、➂直近の企業業績が上振れたこと―が背景にあったとみられます。

4-6月期のどこかまでグローバル株価が堅調さを維持する見通し

先行きについては、私は、米国をはじめとするグローバル株価の堅調さが4-6月期のどこかまで続き、その後は横ばい圏に入るという、これまでの見方を維持したいと思います。

 

株価上昇トレンドが継続してきた背景

 グローバル市場では、11月初め以降、株高トレンドが継続しています。昨年10月30日以降、直近(3月12日時点)までのS&P500種指数の上昇率は25.7%に達し、時価総額で世界最大である米国市場がグローバル市場をけん引してきました(図表1)。年初来の米国の株価を強力にサポートしてきたのが、①米国景気のソフトランディングに対する期待感、➁インフレ率の緩やかな低下を背景にFRB(米連邦準備理事会)がFFレートを年内に大幅に引き下げるという期待感、➂世界的な製造業の回復への期待感—であったとみられます(➂については、金融市場が必ずしも強く意識しているわけではありませんが、これまでの決算発表で公表された個別メーカーの業績改善は相応に株価に織り込まれてきたと考えられます)。

(図表1)米国:先物市場に織り込まれた2024年末のFFレート、米10年国債金利、S&P500種株価指数

 もっとも、金融市場におけるソフトランディングへの期待が高まるとともに、インフレについては、「そう簡単には低下してこないのでは」という懸念が徐々に強まりました。それが、10年米国債金利や先物市場で織り込まれる2024年末のFFレート見通しの上昇が2月中旬あたりまで続いた背景です。しかし、その後、コンファレンスボードの消費者信頼感指数や、ISM製造業景況指数、ISMサービス業景況指数、雇用統計における過去2カ月分の非農業部門雇用者増加数、などの諸統計が市場予想に対して下振れたことから、金融市場では米国景気がついに減速を始めたという見方が強まり、これが2月末以降における10年国債金利や2024年末のFFレート見通しの再低下につながりました

2月分CPI指標が上振れても株高が続いた理由

 こうした中で今週発表されたのが、2月分の米CPI統計でした。結果は、注目度の高い前月比でみたコアCPI上昇率が0.4%を記録し、1月の0.4%に続いて高止まるとともに、市場予想の0.3%を上回る結果となりました(図表2)。内訳をみると、家賃・帰属家賃が高水準で上昇を続けた一方、家賃・交通以外のサービス価格が上昇も加速するなど、基調的なインフレ圧力がやや強まっていたことが判明しました。CPI統計の発表後は、2024年末のFFレートについての先物市場における見通しや10年国債利回りがやや上振れましたが、これは当然の反応であったと考えられます

(図表2)米国:コア消費者物価(食品・エネルギーを除くCPI)の前月比上昇率

 一方で、CPI発表後、S&P500種指数など主要株価指数が上昇した点は、一見すると直観的には理解しにくい反応であったと言えます。株式市場のこの反応には、以下の3つの背景があったと思われます。第1は、景気の減速感が出てきたことで、インフレが2月に高止まりしたのはあくまで一時的な出来事であるとの見方が強かったことです。2月分の雇用統計では、平均時給の前月比での上昇率が0.1%と、事前予想の0.2%や1月分実績の0.5%を下回っていました。景気減速の中で賃金の落ち着きが明らかになってきたことで、もともと振れの大きい指標であるインフレが若干上振れたところで、問題はないとの認識が市場で共有されたと考えられます。

 第2は、FRBの高官による最近の発言がおおむね金融市場の想定内であった点です。3月6日のパウエルFRB議長の議会証言は大きな注目を集めましたが、過度な年内の利下げに前向きの見方が示されたうえ、金融市場の想定を上回るような、過度にタカ派的な発言はみられませんでした。

 第3は、直近で公表された2023年10-12月期の企業業績が、金融市場における事前予想を上回っていた点です。LSEG(ロンドン証券取引所グループ)の調べでは、S&P500種指数に採用される企業の前年同期比EPS成長率は、年初に想定されていた4.7%から、10.0%へと上方修正されました(図表3)。上方修正幅が特に大きかったのは、消費関連、資本財関連、IT関連の業種であり、足元で進行する製造業の回復と整合的な結果でした(製造業の回復については当レポートの2月22日号「世界の生産がようやく回復—短期的な株高要因に」をご参照ください)。景気に減速感は出始めたものの、企業業績が想定よりも上振れていたことで、株価が強さを維持したとみられます。

4-6月期のどこかまでグローバル株価が堅調さを維持する見通し

 先行きについては、私は、米国をはじめとするグローバル株価の堅調さが4-6月期のどこかまで続くとの見方を維持したいと思います。これは、当レポート2月8日号「『米国経済のソフトランディング』シナリオに変更」で示した通り、FRBによる年内の利下げに対する金融市場の確信が強まり、それが織り込まれることで株価に上昇余地があるとみているためです。足元で米国景気に減速感が出てきていることについては、そもそも、米国景気について「ノーランディング(景気が全く減速しない)」という見方は非常に少なく、多くのエコノミストが何らかの「ランディング」(ソフトランディング、バンピーランディング⦅痛みを伴うような景気の減速⦆、ハードランディングなどのパターンがあります)を想定しており、そのランディングが今、想定通りに起ころうとしているだけです。今後の米国景気が、私が想定するようなソフトランディングを達成するなら、6月に開始されるとみられるFRBの利下げや、インフレ率のさらなる低下による実質賃金上昇率の改善、株高による資産効果によって、年後半には1%台半ば程度(潜在成長率程度)の成長軌道に乗ることになるでしょう

 4-6月期のどこかまでの株価上昇局面が終了した後は、「景気回復のペースが非常に緩慢であることで企業業績の上振れが抑制され、株価が横ばい圏に入る」という、従前の見方を維持します。景気回復のペースが緩慢になるとみているのは、高水準の政策金利がもたらす景気への悪影響が顕在化するとみているためです。実は、2024年10-12月期のS&P500種採用企業のEPS成長率についての見方は、今年初と比べて下方修正されました(図表3)。資本財関連や素材関連企業の業績見通しが下方修正された点は、中国がもたらす、その他世界へのデフレ的な圧力の強まりが反映されている可能性があります。

 今後のグローバル株式市場をみるうえでは、3月FOMCとその後に実施されるパウエル議長の記者会見や各種景気指標、インフレ指標に注目したいと思います。

(図表3)米国:S&P500種採用企業のEPS(1株当たり利益)成長率(前年同期比)

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MC2024-033