市場見通し

2023年の見通し:日本中小型株式 - いざ転換の年へ

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2022年はウクライナでの「戦」争や、インフレとの「戦」いにより、中小型株が窮地に陥る

2022年の漢字は「戦」でした。ロシアによるウクライナ侵攻により「戦」争の恐ろしさを目の当たりにしたことや、円安・物価高による生活上での「戦」いを多くの人が実感したからだったそうです。一方、株式市場を相手に日々「戦」っている私共運用担当者にとっても、2022年は「戦」の荒波にもまれた1年だったと感じています。

ウクライナでの「戦」いが資源価格の高騰に繋がったほか、コロナ禍による供給制約や労働者不足等が世界的なインフレに発展、欧米では消費者物価指数が前年比で8~10%も上昇し、およそ40年振りの物価高騰に見舞われました。主要中央銀行は、このインフレとの「戦」いに向け過去に例を見ないスピードで利上げを断行、それに合わせて長期金利も大きく上昇しました。唯一の例外が日銀だったのですが、それでも日本株市場は海外の金融引き締め、長期金利上昇の影響を強く受けることとなりました。

私共が投資対象とする中小型グロース株は、利益成長率が市場平均に比べて高い分、バリュエーションも同様に高くなる傾向にあります。翌期などの目先の利益ではなく、もっと将来の利益を現在価値に割引いて株価形成される場合が多く、結果的に金利の変動に株価が影響を受け易くなります。事実、米連邦準備制度理事会(FRB)が声明文で2022年3月にも利上げに踏み切ることを示唆した1月、東証株価指数(TOPIX)のパフォーマンスは▲4.84%となりましたが、新興成長株市場の代表指数とも言える東証マザーズ指数は▲23.26%という暴落を強いられたのです。これほどの月間下落率は歴史的に見ても稀で、リーマンショック(2008年10月)の▲25.69%、バーナンキショック(2013年6月)の▲25.49%に次ぐ水準でした。今回の急落は「○○ショック」と名前こそ付きませんでしたが、私共を含め中小型グロース運用の担当者にとっては「ショック」と言っても過言ではない程の大変厳しい市場環境でした。
 

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出所:Bloomberg, 2022年12月15日

来年に向け、米国を中心に各国の金融引き締めは収束へ

一方、同様に金利の観点で今後を見据えると、2023年には転換点に向かう動きが期待できると見ています。現在、多くの投資家にとって最大の注目点は、世界的なインフレや中央銀行による今後の利上げの動き、中でも米国FRBの動向です。FRBは2022年3月以降7度の利上げを実施しており、一時期9%を超えていた消費者物価上昇率は低下傾向にあります。それでも労働市場は依然としてひっ迫しており、FRBが目指す2%の物価目標を大きく超えた水準にあることから、来年前半までまだ数度の利上げが予想されておりますが、いずれにしろ前半までで利上げは終了し、その後は景気減速と共に物価の落ち着きを見極める段階に移行していくと思われます。このような利上げ終了は、2022年1月に起きたことと反対の現象という意味でも、中小型グロース株にとって大きなプラス転換への第一歩となりうると考えています。

さらに、そもそも私共は日本株や日本経済を取り巻く環境に対しては決して悲観的な見方をしておりません。むしろ2023年は日本経済が主要先進国に比べ相対的に堅調な推移を辿り、日本株も海外株式に比べアウトパフォームする可能性が高いと考えています。
 

世界経済の成長率予測(実質GDP)
世界経済の成長率予測

出所:Economic Outlook 2022, 2022年11月22日

主要先進国の中で、景気モメンタムの強さでは日本が出色で、日本株の魅力度も高い

国内では8月に新型コロナの感染第七波が到来、再びサービス消費を中心に落ち込む状況が見られました。政府は感染収束後に新型コロナを感染症法上の「2類相当」から「5類」への分類変更を検討するとしていましたが、その後の動きは乏しく、日本は本当の意味でのコロナ後のリベンジ消費を経験しておりません。日銀の試算では2021年末に50兆円を超える過剰貯蓄が存在するとされていますが、これは国内総生産(GDP)のうち家計消費支出の約20%にも相当する金額です。全部が消費に回ることはないにせよ、新型コロナが季節性インフルエンザ並みの感染症5類への変更がなされれば国内でも相応規模のリベンジ消費が期待できると見ています。
 

超過貯蓄(実質ベース、2021年価格)
超過貯蓄

出所:内閣府およびCEICよりインベスコ作成

個人消費、設備投資、補正予算に加え、日銀の金融緩和が日本の景気を強力にサポート

加えて、過去2年間多くの日本企業は供給制約やコロナ禍により思ったような設備投資が出来ておりません。このようなペントアップ設備投資需要に加え、構造的な人手不足やデジタルトランスフォーメーション(DX)への対応、あるいはより強靭なサプライチェーン構築のため、企業は依然強気な設備投資を計画しています。さらには、先の臨時国会では総額約29兆円の第2次補正予算が成立しました。電気・都市ガスの負担軽減、燃料価格抑制のための補助金に加え様々な「基金」への支出など、これらの迅速な執行により相応の景気浮揚効果が見込まれています。その一方、日銀が目指す「賃金上昇を伴う形での2%の物価安定目標の持続的、安定的な達成」のハードルは依然高いと思われ、現在の金融緩和政策は大枠としては維持されるものと予想しております。
 

設備投資額の推移
設備投資額の推移

出所:日本銀行「短観」
2022年12月14日

中小型株の三条件のひとつ、金融緩和が視野に入る段階へ

この様に、2023年は日本経済が相対的に健闘すると思われる中、日本株の中でも中小型株はどう見るべきでしょうか。毎年このレポートでもお話ししている通り中小型株の動向を予想する上では①金融緩和、②技術革新、③規制緩和の3つが重要です。金融緩和についてはご説明した通り、国内では概ね緩和方向が維持される一方、海外では逆風だった金利上昇がいよいよ終了する場面が視野に入って来ました。2023年は向かい風が止み、それがいつ追い風に変わるのか、そんな状況になってきたと言えると思います。
 

省力化、機械化、デジタル化を企図した技術革新が進む

技術革新という点では引き続き注目材料には事欠きません。地政学リスクやインフレ、円安等も重なったことで、サプライチェーンの見直しが始まっているほか、一部では製造業の国内回帰の動きが始まっています。一方、国内では高齢化社会の進展に加え外国人労働者不足に拍車がかかっており、省力化、機械化、デジタル化等が喫緊の課題となっています。山積する課題と豊富な投資資金が合わさることで新たなビジネスやサービスが生まれるだけでなく、従来のオールドビジネスがAIやデジタルと組み合わさることで新たな事業が立ち上がる可能性に注目しています。また、人的資本に関する開示が今後は加速することに加え、リスキリングによるキャリアアップ等の機会が広がること等により、関連する新しいサービス・需要も生まれてくることでしょう。
 

雇用人員判断
雇用人員判断

出所:日本銀行「短観」
2022年12月14日

2023年は、中小型株の三条件が揃い踏みとなる可能性も

規制緩和という点では、改革のひとつとしてNISA制度の拡充が検討されています。投資枠の拡大や恒久化等は、即その全てが日本株投資に回るわけではないものの、「貯蓄から投資へ」の流れを確実にするためにも是非前向きに進めて欲しいと思います。個人投資家は昨年に続き2022年も日本株を買い越しているのです。今後ともこの流れをより確実なものとするためにも更なる改革に期待しています。

明るい話ばかりが続きましたが、忘れてはいけないのが世界的な金融引き締めを受け、世界景気は全体として下向きだということです。日本企業はこれまで述べてきた国内に起因する追い風を受けて、全体として2023年度も増益が続くと見ていますが、業種間、企業間での格差は大きいものとなるでしょう。それでも国内景気は相対的に堅調が見込まれていることから、中小型株が活躍できる余地は大きいと思われます。さらに2023年も後半となると、世界的に金利引き下げが視野に入ってくる可能性があります。そうなるといよいよ中小型株の三条件①金融緩和、②技術革新、③規制緩和がそろい踏みという好環境となります。2023年はそれに向けた三段跳び:ホップ・ステップ・ジャンプのホップの年となるでしょう。2023年は卯年。相場の格言は「跳ねる」です。2023年「跳ねる」相場でのインベスコの奮闘に是非ご期待頂ければと思います。
 

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