マーケット・アップデート

欧州バンクローン市場、月次アップデート 2022年1月

欧州バンクローン市場、月次アップデート 2022年1月
2021年12月の欧州バンクローン市場は、相対的に高く安定したインカムがプラスに寄与し、月間トータル・リターンは+0.42%となりました1

Credit Suisse Western European Leveraged Loan Index(以下「CS WELLI」または「指数」)の2021年12月のトータル・リターンは+0.42%となり、内訳は価格変動が+0.10%、金利収入が+0.32%となりました1。年初来では+4.63%となりました1

今月、市場では新型コロナウイルスのオミクロン株の感染拡大懸念に注目が集まりました。オミクロン株の感染力は高いとされ、欧州全域で同株が新型コロナウイルスの主な感染源であると見られています。各国政府は、クリスマス期間中の経済活動においてワクチン接種パスポートを要求するなど、緩やかな経済規制を維持しました。一方、オミクロン株による症状は以前の変異株に比べて軽度であること、罹患からの回復も早いことなどが楽観的に捉えられています。

このため、2022年にはコロナ禍による経済への悪影響が収まるとの見方が広がり、12月の株式市場はS&P500指数が4.36%、ストックス欧州600指数が5.37%上昇し、いずれも史上最高値圏で推移しましたした2

CS WELLIは0.10ユーロ上昇し、年末におけるローン平均価格は、年初に比べ1.36ユーロ高い98.71ユーロとなりました1

欧州バンクローン市場は、CLOやその他の投資家から旺盛な需要が見られ、プライベート・エクイティに関係するローンが堅調に発行されました。2021年の新規発行額は、200本以上のディールで1,120億ユーロとなって過去最高額を記録しました。これは、前年の520億ユーロの2倍以上となり、2007年の1,090億ユーロをやや上回りました。主な案件はLBO(レバレッジド・バイアウト)であり、2021年に前年比ほぼ倍増の700億ユーロを調達しました。

しかしながら、12月の新規発行額は5億ユーロのみとなりました。オミクロン株の感染拡大懸念から、市場参加者は年内の取引を早々に手仕舞いしたものと思われます。新規発行ローンのスプレッドは、+421bps(フロアは+0%)となり、年初と比べ約16bps拡大しました。

2021年のCLO市場も同様に堅調となり、同年のCLO新規発行額は過去最高水準となる386億ユーロとなりました。年末におけるCLO(AAA格)のスプレッドは+100bpをやや下回る水準となりました。

2022年もCLO市場のファンダメンタルズ(旺盛なローン供給と投資家のCLO需要)に変化はないと考えております。市場ではCLOの組成が下支えされ、バンクローンに対する需要につながると予想します。

月末のCS WELLI の額面価格合計(市場規模)は約3,870億ユーロとなり、年初来で21%増加しました1

リターン

12月のCS WELLIのセクター別リターンは、小売が+0.56%と最も高いリターンとなり、非耐久消費財が+0.53%、メディア・通信が+0.50%となりました1 。今月は全てのセクターがプラスとなった 一方で、最も低いリターンとなったのは、ゲーム・レジャーの+0.03% 1 で、オミクロン株の感染拡大懸念から旅行が困難となったことが、同セクターにマイナスの影響を与えました。

格付け別では、12月は「B」格が+0.42%と最も高く、「BB」格が+0.38%、「CCC」格が▲0.21%となりました1

12月末におけるCS WELLI構成銘柄の平均価格は、前月末比0.10ユーロ上昇して98.71ユーロでした1。CS WELLIの3年ディスカウント・マージンは前月末と同じ4.13%でしたが、2021年を通してみると0.46%低下しました1。12月のクレディ・スイス欧州ハイ・イールド債券(Credit Suisse Western European High Yield)指数は+1.06%のリターンとなり、スプレッド・トゥ・ワーストは3.60%となりました3

ファンダメンタルズ

12月のユーロ圏総合PMIは1.9ポイント低下し53.4となり、予想を下回る結果となりました。背景には、新型コロナウイルス感染拡大による経済活動がドイツと周辺国のサービス部門で低下していことがあると考えられています。製造業PMIは予想をわずかに上回り、サプライチェーンの問題は続いているものの、納期が大幅に短縮されたことが上昇要因と見られています。

12月のユーロ圏消費者物価指数(速報値)によると、コア消費者物価指数は0.02%増の2.63%(前年比)となり、予想値をやや上回りました。総合インフレ率は0.11%上昇して年率4.97%(前年比)となり、これも予想値をやや上回りました。エネルギーのインフレ率は大きなベース効果を背景に前年比で低下した一方で、食品、アルコール、タバコのインフレ率は予想以上に上昇しました。

12月16日に行われた欧州中央銀行(ECB)定例理事会で、ECBはユーロ圏の経済成長率が今後数カ月は減速する可能性が高いことを認めた一方で、春以降の景気には前向きな見通しを示しました。ユーロ圏の2022年のインフレ率は、年率3.2%(+1.5%)に上方修正されましたが、2022年後半には目標値(約+2.0%)を再び下回るとの見通しも示されました。同時に、ECBはパンデミック緊急購入プログラム(PEPP)での資産の純購入を2022年3月に終了すること、再投資プログラムを通じてオミクロン・リスクに備えること(PEPPでの資産の純購入の再開可能性)、資産購入プログラム(APP)について2022年4月から9月の間、現状の月200億ユーロの資産購入額に対して総額900億ユーロを上乗せすることを決定しました。また、資産の純購入はECBの主要金利の引き上げ開始前に終了する意向も示しました。

12月末現在、S&P欧州レバレッジド・ローン指数における過去12カ月のデフォルト率(額面ベース)は0.62%でした4。過去平均は年3.19%です4

指数のトータルリターン(%)

脚注

  • 1

    Credit Suisse Western European Leveraged Loan Index (CS WELLI)、ユーロ建てヘッジ付き、2021年12月31日現在。過去の実績は将来の成果を保証するものではありません。指数に直接投資することはできません。

  • 2

    ストックス欧州600指数およびS&P500指数は、2021年12月31日現在。

  • 3

    Credit Suisse Western European High Yield Indexはユーロ建て、2021年12月31日現在。

  • 4

    S&P European Leveraged Loan Index。過去の平均デフォルト率は、2007年6月1日から2021年12月31日までを対象に集計しています。

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