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欧州バンクローン市場、月次アップデート 2023年2月

欧州バンクローン市場、月次アップデート 2023年2月
2023年1月の欧州バンクローン市場は、相対的に高く安定したインカムがプラスに寄与するとともに、価格変動もプラスとなり、月間トータル・リターンは+2.73%となりました
 

Credit Suisse Western European Leveraged Loan Index(以下「CS WELLI」または「指数」)の2023年1月のトータル・リターンは+2.73%となり、内訳は価格変動が+2.13%、金利収入が+0.60%でした。

1月のリスク資産のパフォーマンスは、1月のリターンとしては過去から見ても高い水準となりました。GDP成長率、エネルギー・ガス価格、インフレ率の低下、中国経済の再開などといったマクロ経済の改善を背景に、各金融市場は上昇しました。暖冬や価格改定により天然ガス価格が低下したことで、2023年のユーロ圏経済成長率は0.5%程度の増加予想となり、足元では景気後退懸念が弱まりました。

かかる環境下、バンクローン市場は堅調に推移しました。1月のCS WELLI平均価格は2.05ユーロ上昇し、93.61ユーロとなりました。リスクオンとなったセンチメントを背景に、低格付のCCC格の月間リターンは+4.21%となり、 +2.73%のリターンとなったCS WELLIを大幅に上回りました。

1月の欧州バンクローン市場における新規発行は14件で28億ユーロと引き続き低調で、前年同月比、約75%減少しました。新規案件の平均スプレッドはEURIBOR+506bpとなりました。一方、償還価格と発行価格の差額(OID)は、よりクレジットリスクが高いとみなされる発行体による90ユーロ台前半のものから、大手の通信や教育といった安定したセクターの発行体による98ユーロ台のものまで、大きく異なりました。また、1月の新規発行ローンの平均利回りは8.75%と非常に魅力的な水準となり、昨年1月の約4.4%と比べ大幅に改善しました。

当月は、新規発行の大半が既存ローンの期限を延長する「Amend and Extend」取引となりました。このため、新規資金の供給が限られ、1月末時点の額面価格合計は、昨年10月にピークとなった4,170億ユーロから約190億ユーロ減少し、3,980億ユーロとなりました。

CLOの新規発行は引き続き堅調でした。1月を通してみると、10億ユーロのCLOが新規発行され(前年同月は無発行)、1月後半にかけて複数のCLOが発行されました。新規発行CLO(AAA格)のスプレッドは、月初にはEURIBOR+220bp程度でしたが、月末にはEURIBOR+185bp程度まで大幅に縮小し、CLO裁定取引のサポート要因となりました。

新規資金の流入が少ない中で、高格付けローンの組み入れを図る複数のCLOマネジャーが需給を引き締め、良好な経済指標も手伝って、ローン価格は堅調に推移しました。今後はCLOノートのスプレッドが縮小する一方で、CLOの活発な新規発行が継続すると思われます。

バンクローン市場全体では、M&A(LBO)やパイプラインが抑制されており、こうした需給環境がバンクローン価格にプラスの影響を与えると予想されます。1月末のCS WELLIの額面価格合計(市場規模)は約3,980億ユーロとなりました1

 

リターン:2023年1月

1月のCS WELLIのセクター別リターンでは、不動産が+4.49%と最も高いパフォ-マンスとなり、続いて食品/タバコの+3.63%、製造の+3.27%となりました。1月は全てのセクターがプラスリターンとなりました1

格付け別では、1月は「CCC」格が+4.21%と最も高く、「B」格が+3.01%、「BB」格が最も低い+1.93%となりました1。 

1月末におけるCS WELLI構成銘柄の平均価格は前月末比約2.05ユーロ上昇し、93.61ユーロとなりました1。CS WELLIの3年ディスカウント・マージンは5.81%となり、前月末比0.79%縮小しました1

1月のクレディ・スイス欧州ハイ・イールド債券(Credit Suisse Western European High Yield)指数は+3.14%のリターンとなり、スプレッド・トゥ・ワーストは4.88%、イールド・トゥ・ワーストは7.57%となりました3

 

ファンダメンタルズ

欧州中央銀行(ECB)は、予想通り、2月に政策金利を0.5%引き上げました。同行の政策理事会は、3月にさらに0.5%の利上げを行う意向を示し、それ以降の利上げはデータ次第との見方を表明しています。ラガルドECB総裁は、「まだなすべきことはあるだろう」と述べています5。一方、政策理事会は、「経済成長とインフレの見通しのバランスが良くなってきた」、と述べています。

1月のユーロ圏の消費者物価指数(速報値)は予想に反して0.7%低下し、前年同月比8.5%(予想値:8.9%)となりました(注:ドイツのインフレ率寄与は推計)が、エネルギー価格が予想値よりも大きく下落(前年比で約17%となり、その前の25%から低下)たことが要因です。サービスのインフレ率(前年比)は0.2%減の4.2%となる一方、財のインフレ率は予想外の0.5%増の6.9%となりました。コア・インフレ率は前年比5.2%と横ばいとなり、インフレの高止まりが示唆されます。

天然ガス動向は引き続き安定しています。欧州では現在、季節平均比を約15%下回る天然ガス消費となり、天然ガス貯蔵量は標準量を約20%上回っています。天然ガス価格は、2021年後半以来の低水準となる約60ユーロ/メガワット時まで下落し、企業の投入コスト低下、消費者の暖房費節減、政府の財政削減などに寄与しています。中国経済の再開によって、昨年の天然ガス価格高騰時にはほとんど見られなかったアジアのLNG需要が増加する可能性があります。

2022年10-12月期のユーロ圏GDPは前期比0.1%増となり、小幅のマイナスであった予想値を上回りました。スペイン、フランス、イタリアは予想値より増加したものの、ドイツは0.2%減となり、予想値(0.0%)を下回りました。ユーロ圏経済の見通しは、経済活動データの改善、ガス/エネルギー価格の低下、中国の早期の経済再開を背景に改善しました。ガス価格の低下は、短期的にはユーロ圏の経済成長を支えると見られています。

1月のユーロ圏景況感指数はすべてのセクターで改善し、長期的な平均値に回帰しました。また、ユーロ圏消費者信頼感指数も、過去から見ると低水準に留まるものの改善しました。こういった改善は広く各国にまたがりました。

1月のユーロ圏総合購買担当者景気指数(PMI、速報値)は前月比0.9ポイント上昇し、50.2(予想値は49.8)となりました。改善は製造業(生産高が1.2ポイント上昇し49.0)とサービス(活動が0.9ポイント上昇し50.7)ともに見られました。PMIの改善は11月から続いています。

1月末現在、モーニングスター欧州レバレッジドローン指数における過去12カ月のデフォルト率(額面ベース)は0.41%でした4。過去平均は年3.00%となりました4

指数のトータルリターン(%)

脚注

  • 1

    Credit Suisse Western European Leveraged Loan Index (CS WELLI)、ユーロ建てヘッジ付き、2023年1月30日現在。過去の実績は将来の成果を保証するものではありません。指数に直接投資することはできません。

  • 2

    ストックス欧州600指数およびS&P500指数は、2022年12月31日現在。

  • 3

    Credit Suisse Western European High Yield Indexはユーロ建て、2023年1月30日現在。

  • 4

    Morningstar European Leveraged Loan Index。過去の平均デフォルト率は、2007年6月1日から2023年1月31日までを対象に集計しています。

  • 5

    2023年2月2日に行われた、欧州中央銀行(ECB)の記者会見より。

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