欧州バンクローン市場、月次アップデート 2023年7月
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2023年6月の欧州バンクローン市場は、相対的に高く安定したインカムがプラスに寄与するとともに、価格変動もプラスリターンとなり、月間トータル・リターンは+0.95%となりました
Credit Suisse Western European Leveraged Loan Index(以下「CS WELLI」または「指数」)の2023年6月のトータル・リターンは+0.95%となり、内訳は価格変動が+0.30%、金利収入が+0.65%でした1 。
マクロの主なテーマとしては、引き続きウクライナ紛争、中国の成長鈍化、概ね改善傾向にある欧州のインフレなどでした。欧州中央銀行(ECB)の理事会は市場予想通りの決定を行なった一方で、欧州の景気先行指標は成長の鈍化を示唆しました。月後半には、ロシアの民間軍事会社ワグネルがモスクワへ進軍するとの見方が広がって地政学リスクが強く意識されました。短期で終結したこの反乱は今後さらに大きな影響を及ばす可能性がありますが、多くの市場では反乱が収まった後、すぐに値を戻しました。
6月の欧州バンクローンの新規発行は24億ユーロで、年初来の発行額は約127億ユーロ(前年同月は230億ユーロ)となりました。新規発行市場では、アメンド・アンド・エクステンド(A&E)案件やアドオン案件が多くを占める中で、米国の化学・素材メーカーであるUnivarとしては最初となるデュアル・カレンシー・レバレッジド・バイアウト(LBO)ローンを新規発行して人気を集めました。A&E案件では、EGグループとIdemiaによる大型ローン2件が発表されました。B3格で3年のA&E案件では、概ねEURIBOR+500bp程度(96から98ユーロ前後のOID)で建値され、オール・インのクーポンで8.5%から9%程度の水準となりました。
新規発行ローンの直近3カ月の平均スプレッドはEURIBOR+450bpとなり、最終利回りは8.85%となりました。前月比でスプレッドが縮小(5月は468bp)したのは、バンクローン市場の良好な需給環境が背景となっています。こうした状況下、6月末のCS WELLI平均価格は0.40ユーロ上昇し、94.71ユーロとなりました。
今後も、バンクローン需要は底堅く推移すると見られています。レバレッジド・コメンタリー&データ(LCD)によると、グローバルABS会議(スペインのバルセロナで6月中旬に開催)で、今後発行の可能性のあるいくつかのCLOについて投資家に説明がなされました。ローンの新規発行の抑制が続けば、マネジャーはタイミングを見て発行することになるため、発行のタイミングははっきりしていません。新規の投資家は、過去10年以上で最も高い利回りとなっているCLOノートに注目しており、また、例えばAAA格のエージェンシー債(ブルームバーグ・ユーロ・アグリゲート債券インデックスベース4 )の利回りが約3.15%となる中で、最近発行された欧州CLOノート(AAA格)の利回りは5.5%に達しており、CLOノートに対する需要は依然として旺盛です。6月のCLOの新規発行額は16億ユーロとなり、年初来では120億ユーロ(前年同期比15%減、2022年度の新規発行額は260億ユーロ)、2023年4-6月期は13件で50億ユーロとなりました。
リターン:2023年6月
6月のCS WELLIのセクター別リターンでは、ゲーム/レジャーが+2.37%と最も高いパフォ-マンスとなり、続いてメディア・通信の+1.77%、食品/タバコの+1.57%となりました。マイナスリターンとなったのは小売の-1.24%、不動産の-0.31%で、この2セクターのみがマイナスリターンとなりました1 。
6月のCS WELLIの格付別リターンでは、「BB」格が+0.96%と最も高く、「B」格が+0.91%、「CCC」格が最も低い-3.02%となりました1。
6月末におけるCS WELLI構成銘柄の平均価格は前月末比約0.40ユーロ上昇し、94.71ユーロとなりました1。CS WELLIの3年ディスカウント・マージンは5.57%となり、前月末比0.07%縮小しました1。
6月のクレディ・スイス欧州ハイ・イールド債券(Credit Suisse Western European High Yield)指数は+0.60%のリターンとなり、スプレッド・トゥ・ワーストは4.78%、イールド・トゥ・ワーストは8.07%となりました2。
ファンダメンタルズ
6月のユーロ圏総合購買担当者景気指数(PMI)は前月比2.5ポイント低下して50.3となり、コンセンサス予想(52.5)を下回りました。景況感の弱さは広範囲に及びましたが、サービス業の数値が2.8ポイント低下して5カ月ぶりの低水準(52.4)となり、PMI全体の低下の主な要因となりました。また、製造業は1.9ポイント低下(44.6)し、引き続き景気後退の目途となる50を下回りました。6月のPMIはあらゆる地域で低下が見られ、ドイツでは3.1ポイント低下して50.8となり、また、フランスでは3.8ポイント低下の47.3となって50を下回りました。ユーロ圏の他の地域の景況感も全体として低調なものとなりました。これまでの傾向としては、サービス業がより堅調に推移して製造業の不振をカバーしていましたが、6月のPMIでは、高止まりするインフレと金利上昇でサービス部門が減速することによって成長率が低下することが示唆されました。
6月の独IFO景況感指数は大きく低下しました。同指数は2カ月連続で低下して2022年11月以来の低水準となりました。期待指数は5ポイント低下して83.6、現況指数は1.1ポイント低下して93.7となりました。上記のPMIおよび独IFOの数値はともに大幅に低下し、2023年4月以来の欧州経済の減速を示す結果となりました。
6月のユーロ圏消費者物価指数(速報値)は、前年と比べてインフレ率が広い範囲で低下していることを示唆しました。総合指数(前月から0.6%低下して前年同月比で5.5%)は、主としてエネルギー(3.8%低下)及び食品(0.8%低下)の価格の動きに牽引されて引き続き低下しました。一方、コア・インフレ率は前月から0.1%上昇して前年同月比で5.4%となりました。また、エネルギー価格の低下とサプライチェーンの改善を背景に、製品価格は4カ月連続で低下しました(前月から0.3%低下して前年同月比で5.5%)。
市場予想通り、欧州中央銀行(ECB)は政策金利を0.25%引き上げ、3.5%としました。理事会メンバーは積極的な利上げを示唆し、ラガルド総裁は7月も利上げを実施する可能性が高いと伝えました。しかしながら、利上げの方向性は示されたものの、具体的な日程やターミナルレートは示されませんでした。6月後半には、ポルトガルのシントラで世界中央銀行会議が開催され、複数のECB高官が意見を述べるフォーラムの機会がありました。全体的には9月の利上げについてははっきりしませんでしたが、足元のインフレ動向を鑑みると、最後の利上げとなる可能性が高まっています。もっとも、ECB高官が主に強調したのは、当面は政策金利を高めに維持するというスタンスでした。
イングランド銀行(BOE)は政策金利を0.5%引き上げ、5.0%としました。金融政策委員会(MPC)は、「直近のデータでは、労働市場がタイトで需要が継続的に底堅く、インフレが依然として高止まりする可能性がある」と認めました。
6月末現在、モーニングスター欧州レバレッジドローン指数における過去12カ月のデフォルト率(額面ベース)は0.98%でした3。過去平均は年2.93%となりました3 。

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