欧州バンクローン市場、月次アップデート 2024年5月
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2024年4月の欧州バンクローン市場は、相対的に高く安定したインカムがプラスに寄与し、月間トータル・リターンは+0.78%となりました
Credit Suisse Western European Leveraged Loan Index(以下「CS WELLI」または「指数」)の2024年4月のトータル・リターンは+0.78%となり、内訳は価格変動が+0.01%、金利収入が+0.77%となりました1 。
米国の3月のインフレ率が、予想を上回る3.5%と2023年9月以来の高水準となったことを背景に、米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げが後ずれするとの観測が高まり、4月のリスク資産のリターンは市場によって異なりました。例えば、クレディ・スイス欧州ハイ・イールド債券(Credit Suisse Western European High Yield)指数のリターンは-0.10%、S&P500指数は-4.1%、MSCI欧州指数(除く英国)は-1.5%、世界の債券市場全体では-2.5%となりました2 。こうした中、欧州バンクローン市場は堅調に推移しました。
欧州の経済指標は改善を続けています。2024年1-3月期のユーロ圏GDP成長率は前期比+0.3%となり、ドイツは+0.2%(前期は-0.5%)のプラス成長に転じました。同様に、4月のユーロ圏総合購買担当者景気指数(PMI) 速報値は51.4と大幅に上昇し、インフレ率も前年同期比2.4%と落ち着いて推移しました。総合的に判断すると、欧州中央銀行(ECB)は通常と異なり、米連邦準備制度理事会(FRB)に先立って6月に利下げを行うと思われます。

4月のCS WELLIは好調に推移しました。トータルリターンは金利収入がその殆どを占め、+0.78%となりました。また、CS WELLI構成銘柄の足元の平均価格は、年初時点の96.89ユーロとほぼ同水準の96.83ユーロで推移しています。同時に、4月のバンクローンの新規発行額は63億ユーロとなり、2023年4月の11億ユーロに比べて大きく増加しました。年初来の新規発行額は293億ユーロとなり、前年同期の新規発行額95億ユーロを大幅に上回りました。新規発行が堅調であったのは、バイアウトやM&A案件がやや増加(前年同期比35%増となる約70億ユーロ)したことに加え、主にはリファイナンス案件が年初来で(前年同期比)約400%増の約170億ユーロとなったことによります。
バンクローンの発行体は今年に入り機会を見ながらリファイナンスを行っています。新規発行バンクローンの3カ月ローリング利回りは8.85%(平均スプレッドは438bp)となりました。最近のピークである2023年12月の9.5%(同465bp)をわずかに下回っているものの、投資家にとって非常に魅力的なリターンを提供しています。
2024年のCLO発行は活発であり、新規発行されたバンクローンのほとんどを吸収しています。4月の新規CLO額は約40億ユーロとなり、約10億ユーロの新規発行額となった昨年4月を大幅に上回りました。また、年初来の累計発行額は約160億ユーロとなり、前年同期比で約95%増加しました。CLOの新規発行が増加した背景には、予想を上回るバンクローンが発行されたことや、CLOの裁定取引が機能しやすかったことがあります。なお、CLOノート(AAA格)のスプレッドは、4月末時点でEURIBOR+145bp〜150bpの水準(2022年6月末時点と近い水準)となりました。
リターン:2024年4月
4月のCS WELLIのセクター別リターンでは、不動産が+1.72%と最も高いパフォ-マンスとなり、続いてエネルギーの+1.43%、食品・製薬の+1.33%となりました。今月はマイナスリターンとなったセクターはなく、プラスとなったセクターで最も低いリターンとなったのは、メディア・通信の+0.18%でした1 。
4月のCS WELLIの格付別リターンでは、どの格付けも同水準のリターンとなりました。「BB」格が+0.84%と最も高く、「B」格が+0.83%、「CCC」格が最も低い+0.82%となりました1。
4月末におけるCS WELLI構成銘柄の平均価格は、前月末比で約0.08ユーロ上昇し、96.83ユーロとなりました1。CS WELLIの3年ディスカウント・マージンは4.90%となり、前月末比で0.05%縮小しました1。
4月のクレディ・スイス欧州ハイ・イールド債券(Credit Suisse Western European High Yield)指数は-0.10%のリターンとなり、スプレッド・トゥ・ワーストは3.74%、イールド・トゥ・ワーストは7.11%となりました3。
ファンダメンタルズ
ユーロ圏経済は5四半期にわたる停滞後に再び成長しました。ユーロ圏の2024年1-3月期のGDP成長率は+0.3%と予想を上回り、すべての主要国でプラス成長となりました。スペインとポルトガルは力強い成長(+0.7%)となり、イタリアも高めの成長(+0.3%)となったことがユーロ圏全体の経済を牽引しました。フランスとドイツ(+0.2%)は小幅の成長となりました。
4月のユーロ圏総合購買担当者景気指数(PMI) は、1.1ポイント上昇して過去11カ月で最高の51.4となり、景気拡大判断の節目となる50を2カ月連続で超過しました。サービス業は好調(1.4ポイント上昇して52.9)であったものの、製造業は0.5ポイント下落して45.6となりました。
しかしながら、ドイツのPMIが大幅に上昇したことは、他のユーロ圏各国に対し長期間劣後していた欧州の中核かつ最大の経済が回復に向かっている兆候を示しています。
4月のユーロ圏の消費者物価指数(速報値)は、前年同月比2.4%となり、予想と一致しました。コア・インフレ率は予想(2.6%)を上回る前年同月比2.7%となりました。
4月末現在、モーニングスター欧州レバレッジドローン指数における過去12カ月のデフォルト率(額面ベース)は1.48%でした4。過去平均は年率2.86%となりました4 。

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