欧州バンクローン市場、月次アップデート 2024年9月
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2024年8月の欧州バンクローン市場は、相対的に高く安定したインカムがプラスに寄与し、月間トータル・リターンは+0.58%となりました。
Credit Suisse Western European Leveraged Loan Index(以下「CS WELLI」または「指数」)の2024年8月のトータル・リターンは+0.58%となり、内訳は価格変動が-0.09%、金利収入が+0.67%となりました1 。
8月は夏季休暇のシーズンとなるため、通常は金融市場が閑散とした動きになるものの、今年は記憶に残る月となりました。7月の米雇用統計が市場予想を下回ったことで月初の金融市場は大きく変動し、米国金利は急低下しました。また、米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げが織り込まれたことで円キャリートレード*の解消が進み、世界的に株式市場は軟調な展開となりました。円キャリートレードの解消と米雇用者数の減少を受け、株式市場においては、1日でS&P500指数は約5%、日経平均株価は10%以上下落し、一方でVIX指数は100%以上上昇しました。翌週にはこれらの株式指数は大きく反発し、日銀が利上げについて慎重な姿勢を示したことともあって円安が進行しました。また、一部の経済指標が改善したことで、景気後退懸念が和らぎました。下旬にかけてはリスク資産価格が上昇し、金利は緩やかに水準を切り上げる展開となりました。
CS WELLI構成銘柄の平均価格は前月の97.43から97.40とほぼ横ばいとなった一方、金利収入が寄与したことで同指数のトータル・リターンはプラスとなりました。また、CS WELLIの3年ディスカウント・マージンは470bp、平均スプレッドは394bp、利回りは8.29%となりました(それぞれ、月間で1〜3bpと小幅な変動となりました)1。
夏季には典型的ですが、8月のバンクローンの新規発行は限定的でした(新規発行額は約1億ユーロ、前年同月は約4億ユーロ)。一方、CLO市場は引き続き堅調となり、8月は約25億ユーロ(前年同月は18億ユーロ)のCLOが発行されました2。
シンジケートローンに関わるいくつかの銀行にヒアリングしたところ、今後の新規発行は適度な水準が見込まれ、9月中旬には具体的な案件が出てくると予想されています。いくつかのCLOウェアハウスがローン購入を継続しており、バンクローン価格を下支えすると思われます。また、M&A/LBO市場が改善してきているため、バンクローンを新規発行する発行体がいくつかあると思われます。

リターン:2024年8月
8月のCS WELLIのセクター別リターンでは、エネルギーが+1.08%と最も高いパフォ-マンスとなり、続いてメディア・通信の+1.05%、林産品/パッケージングの+0.71%となりました1。最も低いパフォーマンスとなったセクターは、耐久消費財の-0.18%で、他にマイナスリターンになったセクターはありませんでした1。
8月のCS WELLIの格付別リターンでは、「CCC」格が+1.28%と最も高く、「BB」格が+0.55%、「B」格が最も低い+0.49%となりました1。
8月末におけるCS WELLI構成銘柄の平均価格は、前月末比で0.03ユーロ下落し、97.40ユーロとなりました1。CS WELLIの3年ディスカウント・マージンは4.70%となり、前月末比で0.01%縮小しました1。
ファンダメンタルズ
8月のユーロ圏総合購買担当者景気指数(PMI)速報値は1.0ポイント上昇し、51.2となりました。ドイツは0.6ポイント低下して48.5となりましたが、フランスは3.6ポイント上昇して52.7となりました(フランスのPMIは、オリンピックの影響で特にサービス業の数値がプラスの影響を受けました)。これら2カ国を除くPMIは0.9ポイント上昇し、52.5となりました。ユーロ圏PMIは6月から7月にかけて大幅に低下していましたが、8月は(大幅に数値が上昇したフランスを除いても)ユーロ圏全体のPMIが改善しました。ユーロ圏周辺国の経済が底堅く推移したことや、オリンピックの恩恵を受けたフランスの景気がドイツおよび製造業の不振を相殺したことなどが背景です。
8月のユーロ圏消費者物価指数(速報値)は、7月の2.6%から2.2%に低下しました。コアインフレ率は7月の2.9%から2.8%(予想通り)にわずかに低下しました。ベース効果に加えて、8月にエネルギー価格が下落し、エネルギー・インフレ率が-3.0%となったため、総合インフレ率は欧州中央銀行(ECB)が目標とする2%に近づきました。
8月の独IFO景況感指数は、予想を上回ったものの、景況感の落ち込みを表す結果となりました。自動車輸出期待の数値が2008年および2020年以来の低水準となり、需要の減速や米中貿易問題の不透明感を反映しました。
ECBは9月の定例理事会で政策金利を再び引き下げると予想されています。
8月末現在、モーニングスター欧州レバレッジドローン指数における過去12カ月のデフォルト率(額面ベース)は0.78%でした3。過去平均は年率2.82%となりました3 。
投資機会
マクロ経済動向を反映してバンクローン市場は堅調に推移しています。欧州の経済成長は(プラス圏であるものの)横ばいになる可能性がありますが、今後は資金調達コストが低下することで、クレジットの支援材料になると思われます。CLOによるバンクローン需要は引き続き堅調であり、年後半にはM&Aも増加すると思われます。全体的にはバンクローンの需給環境は引き続き良好です。図2で示すようにバンクローンはボラティリティが低いことから、リスク調整後リターンが高くなり、今年もバンクローンにとって好ましい状況となっています。


*低金利の通貨で資金を調達し、その資金を株式などの高リターン資産に投資すること。
G2024-09-011
そのほかの投資関連情報はこちらをご覧ください。https://www.invesco.com/jp/ja/institutional/insights.html