グローバル・ビュー
【臨時レポート】グローバル金融市場に激震
「逆オイルショック」と欧米での感染拡大が不透明感を増幅
「逆オイルショック」と欧⽶での感染拡⼤が⾦融市場のパニック的な動きにつながる
グローバル⾦融市場における動揺が⽌まりません。昨日の米国市場ではS&P500株価指数が7.8%下落、米国10年国債利回りは史上初めて0.5%台に低下するという異例の事態となっています。グローバル⾦融市場でパニック的な動きが⽣じたのは、新型コロナウィルスの感染拡大に伴う問題が、(1)原油価格の大幅な下落、(2)イタリアをはじめとする欧州での感染問題の深刻化、(3)米国での感染拡大、という問題に波及してきたためです。
OPECプラスでの原油交渉が不調に終わったことでサウジアラビアが原油価格の増産姿勢を打ち出したことが引き⾦となり、2営業日前には1バレル50ドルを超えていたブレントの先物価格は一気に30ドル台前半に低下、「逆オイルショック」が⽣じています。これが原油・ガス、化学、商社等の株価下落につながるとともに、ロシアやブラジル、サウジアラビアなど産油国の財政や国際収⽀への懸念を呼んで産油国通貨の下落をもたらしました。また、原油価格の下落によって米シェール関連企業、ひいては米エネルギー産業への打撃が意識され、エネルギー関連企業のシェアが比較的大きい米ハイ・イールド債市場にも悪影響が及んでいます。さらに、エネルギー関連企業が米国の設備投資において重要な役割を果たしていることから、米国景気に対する懸念も強まっています。
一方、欧州での新型コロナウィルスの感染拡大も深刻化してきており、イタリア政府はロンバルディア地方での移動制限措置を導入、日本時間で今朝の時点でこれを全土に拡大する措置を講じました。他の多くの欧州諸国でも感染問題は拡大していることから、今後多くの国において経済活動を抑制するような措置が採られるとの⾒方が⾦融市場における悲観論を強めています。
グローバルな景気後退の可能性はまだ低い。政策対応の重要性が増す
⾦融市場の動揺が拡大しているため、今回のコロナウィルスによる問題がリーマンショック級の事態につながるとの⾒方も一部で出てきましたが、その可能性は低いと考えられます。米国をはじめとする先進国では、⾦融システムは健全であり、⾦融機関の⾃⼰資本も充実しています。景気には下方圧⼒がかかり続けるとみられますが、グローバル経済が短期的に景気後退 に陥る可能性は現時点では20%程度と考えられます。
今後の景気悪化を抑制する重要な役割を担っているのが政策対応です。米FRBは既に緊急利下げを実施し、今後も追加利下げに前向きとみられますが、他の多くの主要中央銀⾏は今回の問題が世界経済に及ぼす影響や財政対応等をまず⾒極めたいということですぐには手を打たない可能性があります。FRBを含む多くの中央銀⾏が注⼒するとみられるのが、流動性の供給であり、⾦融市場の動揺が企業の信用問題に波及するのを阻⽌する意図から積極的に取り組むとみられます。もちろん、株価下落などで⾦融環境が悪化すれば、⾦融政策対応も強化されるとみられ、特にFRBは追加利下げだけではなく、量的緩和を視野に入れた対応を⾏うと⾒込まれます。財政面での対応も重要です。感染拡大に伴って多くの国が移動制限を含むより強い措置をとりつつありますが、こうした措置が短期的に景気に及ぼす悪影響は大きいことから、多くの国で対応が強化されるでしょう。
⾦融市場の⾒通し
グローバル⾦融市場はパニックの状態に入っており、投資家の姿勢が極端なリスク・オフに振れることに伴って高いボラティリティーが続く公算が大きいとみられます。足元の市場では明らかにグローバルな景気後退を意識した相場となっています。移動制限が強化されたイタリアだけではなく欧州で⼈々の⾏動が変化しつつあり、英国やその他一部欧州地域では洪水の影響がこれに追い打ちをかけています。こうした状況下、景気に敏感な資産である、資源や工業関連の株式が売られやすい状況の継続が予想されます。また、レジャー関連株、銀⾏株、バリュー株、新興国株式、不動産、ハイ・イールド債が比較的弱い動きになるとみられます。地域的には、イタリア情勢の悪化により欧州株式が下げ相場をリードする展開が⾒込まれます。
その一方、⾦融市場では、「安全資産」である米国、ドイツ、日本などの国債や円・スイスフラン、⾦が投資資⾦のシフト先として注目されます。株式の中では、公益や通信は⾦利低下の恩恵を受けるとみられます。また、食品・飲料株についてもパニック買いの恩恵が及ぶとみられます。
⾦融市場の動揺が収まるには、問題の源である新型コロナウィルスによる感染問題が改善する必要になるでしょう。今後どこかの時点で新規の感染者が明確に減少する局面に入るのに合わせて⾦融市場は落ち着きを取り戻していくとが⾒込まれます。現時点では⾦融システムへの懸念は⼩さいことから、適切な財政・⾦融政策の発動によって今後株価がボトムに近づいていく可能性もあるでしょう。投資家は中⻑期的な投資スタンスとして、リスク資産を含めた分散投資を継続すべきであると考えられます。
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