グローバル・ビュー
【臨時レポート】FRBの大幅利下げでも株安は止まらず
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米国景気の急減速と投資家のドル資金引き揚げが背景か
FRB(米連邦準備理事会)が異例の大幅利下げと量的緩和に踏み切り、中央銀行6行による国際協調が実施されたにもかかわらず、グローバル金融市場の動揺が止まりません。16日の米国市場では、S&P500株価指数が前日比で12.0%下落し、前日に上昇した分を帳消しにしました。2月19日に終値ベースでの最高値を付けてから、S&P500株価指数の累積下落率は29.5%に達しました。中央銀行の政策が株価下落の歯止めとならなかったのは、欧州だけではなく米国内でもコロナウィルスの感染問題が深刻化し、景気に対する認識が急速に悪化したためと思われます。FRBなどの等中央銀行による行動はそれだけでみれば株価上昇要因であったと思われますが、実体経済見通しの悪化の連想による株価押下げがそれを上回ったという構図です。
トランプ米大統領は、16日、米国政府として10名以上の集会や通学、通勤、外食の自粛を国民に求めました。こうした措置はコロナウィルス対策として必要なものですが、その一方で、人々や企業による経済活動が大きく制約されることは避けられず、悪影響を受ける産業ではパニック的な雰囲気が広がり、景気全体にも甚大な悪影響が避けられないとの見方が広がっています。ニューヨーク連銀製造業景気指数は各種の製造業業況調査の中で最も早いタイミングで公表されますが、昨日に公表された3月分は-21.5ポイントと、2月の+12.9ポイントから急激に悪化し、リーマンショック以来の低水準を記録しました。金融市場では、新興国を含めてグローバルに株価下落が生じており、原油を始めとする資源価格も続落しています。コロナウィルス問題の激震が米国を襲い、そのショック波が増幅されてグローバル金融市場に新たな激震をもたらしていると言えるでしょう。
こうした市場の混乱は、米国の投資家の一部が、自国市場での動揺を受けて海外から投資資金を引き揚げ始めたことによる影響が一因であると推察されます。世界的にドル需給がひっ迫し、ドル資金の調達が以前よりも困難になってきたことも、こうした動きを背景としたものであったとみられます。中央銀行6行がドル資金の供給を拡大すると決めたことは適格な判断であったと言えますが、スワップ市場の動きを見る限り、ひっ迫した状況は未だ明確に改善されていません。16日の日本市場では、日本銀行が株式ETFの買入れ額を当面倍増するという思い切った決断を下したにもかかわらず、日経平均株価指数が下落しました。これは、米国景気が急速に悪化するという見方が台頭したことに加えて、米国などの海外勢による投資資金の引き揚げが背景にあったからとみられます。実は、米国市場に資金が還流する傾向は3月9日から明確になっていました。為替市場では、3月9日を境に、対ドルでの円安傾向、ユーロ安傾向が継続しています(図表1)。
今後の金融市場を見る上では、当面は米国での感染拡大状況や米国政府の感染問題対策が鍵になります。新規の感染者数が抑制されるまでは、金融市場ではボラティリティが高い状況が続くとみられます。特に、米国政府から移動制限を含むより強い措置が発動される場合は、金融市場がさらに動揺する可能性があります。足元では米国サンフランシスコ地域で食料品の買い物などを除く外出が禁止される事態となりましたが、こうした措置が他の地域にも広がるようであれば、短期的な金融市場への悪影響も懸念されます。これらに加えて、中国を含む各国による財政面での対策にも引き続き注目したいと思います。

MC2020-038
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