グローバル・ビュー
【臨時レポート】クレジット市場にも動揺が拡大
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不透明感の強まりに対してECBが対応を強化
米国など主要国市場の株価は日替わりで乱高下を繰り返しながら切り下がってきていますが、昨日も同様の状況が続きました。18日はS&P500株価指数は、前日比で5.2%下落し、財政出動への期待感から前日に上昇した分がほぼ吹き飛ばされる形となりました。ダウ工業株30種平均指数は、終値ベースでは2017年2月2日以降で初めて20,000ドルの水準を割りました。直近の市場では、コロナウィルスの感染拡大に伴う実体経済への悪影響がより強く市場で織り込まれる中で、①国債やクレジット市場における動揺、➁原油価格のさらなる下落、➂ドルへの資金集中、が生じており、金融市場に新たな不透明感がもたらされています。
国債やクレジット市場における動揺(①)については、感染拡大に対応するための主要国の財政政策対応が財政赤字拡大につながるとの認識が広まっており、過去数日で各国の長期国債利回りが急上昇しました(図表1)。特に、財政の脆弱性が元々強く認識されているイタリア、ポルトガル等の欧州周縁国では国債利回りがより明確に上昇する事態となっており、それらの国債を多く保有する金融機関の株価下落や、借入れコスト上昇の影響を受けやすい業種の株価下落につながっています。一方、ドルやユーロ建て社債市場では、社債利回りの国債利回りに対するスプレッドが拡大、特にハイイールド債市場ではスプレッドが大きく拡大してきました(図表2)。次に、原油価格の下落(➁)は、コロナウィルス問題による世界経済への短期的な悪影響についてのより悲観的な見方の台頭を反映していると思われます。原油価格の下落は、エネルギー関連や化学、商社など比較的広い業種で悪影響をもたらすことから、これら業種の株価下落につながりました。ドルへの資金集中(➂)については、ユーロや円といった主要通貨に対してドルがさらに上昇する動きがより明確となってきました(図表3)。金融機関や企業が今後に備えてドルの現金を手元に積み上げる動きや、米国の一部投資家の海外からの証券投資資金を引き揚げる動きが継続している模様です。
これらの不透明要因は今後さらに悪化する可能性があり、グローバル金融市場では引き続きボラティリティーの高い状況が続くと見込まれます。ただし、各国当局がこれらの状況を改善しようとする政策努力を強めていることも見逃せません。FRB(米連邦準備理事会)やECB(欧州中央銀行)は先週以降、量的緩和や市中への潤沢な資金供給措置を講じてきましたが、今後も動揺が拡大する事態となれば、市場安定化のためのより強力な措置が採られると見込まれます。実際、ECBが18日に緊急理事会を開催し、7500億ユーロという巨額の枠を設けて柔軟に資産を購入することを決定したことは、市場安定化のための政策として評価できます。また、ユーロドルのスワップ市場では、ドル資金の調達コストが低下する兆候もみられます(図表4)。これは、主要国の中央銀行が協調して市中にドル資金を供給する政策の成果であると言えるでしょう。他方、米国、中国、イスラエルなど多くの国においてコロナウィルスの治療薬やワクチンを開発する動きが強まっています。仮にこうした方面でブレイクスルーがあれば、金融市場安定化に向けての朗報となるでしょう。




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