戦術的資産配分:2024年1月号
欧州や新興国市場においてシクリカルなばらつきの兆しが
見られ始めており、米国以外の株式を選好し、リスク資産を
オーバーウェイト
インベスコ・ソリューション(以下、「ソリューション」)のマクロ・プロセスは、資産クラス(株式、クレジット、国債、オルタナティブ)、地域、ファクター、リスク・プレミア間の相対的なバリューとリターンの機会獲得を目指し、平均して6カ月から3年の時間軸で戦術的な資産配分の決定を行います。
要約
- ソリューションでは、世界的なサイクルの回復に向けたポジションを維持する一方で、米国は景気先行指数が長期トレンドを下回る水準まで低下したため、拡大期から回復期に後退しました。米国以外の成長率は引き続き改善する一方、インフレ率は低下しています。
- グローバル戦術的配分モデル1では、引き続きポートフォリオのリスクをオーバーウェイトし、債券よりも株式、米国以外の株式市場、バリュー株、中小型株を選好しています。
債券では、低格付けクレジットをオーバーウェイト、デュレーションを中立、米ドルをアンダーウェイトします。
マクロ・アップデート
成長
ソリューション独自の先行経済指標によれば、世界全体の成長は引き続き安定していますが、米国以外の先進国市場と新興国市場との間でシクリカルなばらつきが生じていることが見て取れます。米国は減速を続け、現状では長期トレンドを下回る成長率に後退しています。米国では、消費者マインド調査と景況感調査の結果は安定したものの、長期トレンドを下回る水準にとどまりました。製造業活動は改善し、長期トレンドを上回っていますが、住宅指標はわずかに悪化し、過去の平均値近辺で推移しています。他方、製造業景況調査の結果は、在庫循環が生産期待の上昇と需要回復を示している欧州においてモメンタムが改善していることを示唆しています。同様に、中国やその他のアジア諸国からのデータも、企業調査データや鉱工業生産が改善していることを示しており、シクリカルなモメンタムに良好さが見られる一方、不動産市場は弱い水準ながら安定しました(図表1a、1b、1cをご参照)。
景気循環のモデル研究に基づいた、中期的な観点からは、過去2年間の世界的な逆イールドカーブの程度と期間を考慮すると、これまでの金融引き締めのラグ効果が今後数四半期にわたり世界的にマイナスに影響するとソリューションでは予想しています。言い換えれば、先行指標が長期トレンドを下回るシナリオが当面続く可能性が高いと言えるでしょう。
2023年第4四半期は、弱いながらも安定した成長、インフレ率の急速な低下、中央銀行による引き締めサイクルの終了の示唆だけでなく、重要なこととして2024年中の利下げの可能性を認めるというゴルディロックス(適温相場)的な背景により、資産価格の力強い回復で一年を締めくくりました。2023年第4四半期に世界の債券利回りが約100ベーシス・ポイント(bps)低下したことで、割引率の低下を通じて資産クラス全体にプラスの価格再評価がもたらされました。また、社債やソブリン債などすべてのセクターにおいてクレジット・スプレッドが大幅に縮小し、過去の長期平均を大きく下回る水準で推移しているように、成長率やリスク選好度の改善への期待も引き起こしました。
世界的なリスク選好のバロメーターは、世界金融危機後の同様のピークに匹敵する水準でピークを迎えた後、直近2カ月間は安定しました。今後、世界的な成長が大幅に加速し始め、市場予想が妥当なものとなり、リスク資産にさらなるモメンタムが加わらない限り、市場はインフレ環境の正常化と緩和的な政策状況を概ね織り込んでいることから、想定外の悪材料が出た場合には利益確定売りのリスクもあると考えています。全体として、ソリューションの世界経済のマクロレジーム(市場局面)は、世界経済が依然として回復期にあることを示していますが、米国は、先行経済指標が長期トレンド以下の水準まで低下したため、拡大期から回復期に後退しています(図表2をご参照)。
インフレ
インフレ率は、生産コストと消費者物価の低下をもたらす商品価格の下落に牽引され、地域や経済セクターを問わず低下し続けています。各セクターのデータは、この傾向が今後数カ月間続く可能性が高いことを示唆しています(図表3をご参照)。
全体として、成長率、インフレ率、金融政策への期待は、当面の良好なリスク資産の状況に対するソリューションのポジショニングを引き続き下支えしている一方で、経済状況や市場環境の変化に応じてエクスポージャーを調整するつもりです。
投資ポジショニング
グローバル戦術的配分モデルでは、ベンチマーク対比のリスクをオーバーウェイトするスタンスを維持し、債券に対して株式をオーバーウェイトし、米国株式よりも先進国株(除く米国)と新興国市場を選好し、米ドルについては引き続きアンダーウェイトとします。シクリカル・セクター、バリュー株、中小型株をオーバーウェイトします。債券では、低格付けセクターを通じたクレジット・リスクを高めに維持し、デュレーションは中立を維持します(図表4~7をご参照)。
詳細:
- 株式では、バリュー株や中小型株など、営業レバレッジが高く、成長期待の反発に対する感応度が高いシクリカル・ファクターをオーバーウェイトする一方、低ボラティリティ、クオリティ、大型株などのディフェンシブ・ファクターをアンダーウェイトします。同様に、ヘルスケア、生活必需品、公共事業、テクノロジー株よりも、金融、資本財・サービス、素材、エネルギーなどのシクリカル・セクターへのエクスポージャーを選好します。地域別には、リスク選好度の改善と米ドル安期待に支えられ、引き続き新興国市場のオーバーウィエトを維持し、米国と他の先進国市場間の景気先行指標におけるシクリカルなばらつきへの見方を受け、先進国株(除く米国)を引き続きオーバーウェイトします。
- 債券では、ハイ・イールド債、バンクローン、新興国市場ハード・カレンシー債を通じ、クレジット・リスク2のオーバーウェイトを維持しています。クレジット・スプレッドは一段と縮小し、ほとんどのセクターで歴史的な低水準で推移しています。しかし、ボラティリティは引き続き抑制され、クレジット市場は安定したマクロ環境のもとで安定した利回りを提供すると予想されます。クレジット資産については、キャピタル・ゲインよりも国債に対するインカムの優位性に限定されます。ソブリン債については、インフレ・モメンタムがマイナスの領域になっていることから、先進国市場全体で一般債のデュレーションを選好しています(図表3をご参照)。
- 為替では、景気回復局面では通常、リフレーションによる米国以外の資産への力強いフローを伴うため、米ドルをアンダーウェイトとします。先進国市場では、ユーロ、英ポンド、ノルウェークローネ、スウェーデンクローネ、シンガポールドルを、スイスフラン、日本円、豪ドル、カナダドルに対して選好します。新興国市場では、韓国ウォン、チリ・ペソ、タイ・バーツ、中国人民元などのような低利回りでバリュエーションが割高な通貨に対して、コロンビアペソ、ブラジルレアル、南アフリカランド、インドネシアルピアのような魅力的なバリュエーションをもつ高利回り通貨を選好しますが、米ドル安シナリオではこれらの通貨が好調に推移すると予想されます。
Footnotes
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1.
ベンチマークはMSCI All Country World Index 60%とBloomberg Global Aggregate Index (Hedged) 40%で構成。
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2.
クレジット・リスクは、DTS(デュレーション×スプレッド)で計測。
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