Snapshot

米国バンクローン市場、月次アップデート 2019年9月

US Loan Market Snapshot

要旨 

-   2019年8月は、米中貿易戦争の深刻化と世界的な景気減速懸念の高まりにもかかわらず、良好な需給環境に支えられ、バンクローンのマイナス・リターンは限定的

-   バンクローンは、8月は金利低下の恩恵を受けた債券資産にアンダーパフォーム

-   金利見通しが低下する中でも、バンクローンはそのディフェンシブな特性から、優れた下値耐性と高水準のクーポン収入を提供

2019年8月は、米中貿易戦争の深刻化と世界的な景気減速懸念の高まりにもかかわらず、良好な需給環境に支えられ、バンクローンのマイナス・リターンは限定的

8月のバンクローン市場のリターンは▲0.27%と軟調な展開となりましたが、年初来では+6.30%と、過去10年で最も高いリターンとなっています。8月に入り米国が新たな対中制裁関税の発動を表明するなど、米中貿易戦争に対する懸念が深刻化したことや、米国や中国、ドイツなどで一部弱い経済指標が確認されたことにより市場センチメントが悪化しました。これらの懸念は米連邦準備制度理事会(FRB)による利下げ期待を加速させることになり、その結果として変動利付資産であるバンクローンの個人投資家向けファンドからの資金流出の動きは長期化することとなりました。一方でバンクローン市場に吹くこれらの逆風にもかかわらず、CLOの組成が昨年並みのペースで行われていることからバンクローンに対する需要は堅調で、新規発行額が夏休みシーズンで限定的であったことが需要面での支えとなりました。実際8月の新規発行額は期限前償還額より少額であったため、バンクローンの市場規模は2ヶ月連続で縮小しました。

バンクローンは、8月は金利低下の恩恵を受けた債券資産にアンダーパフォーム

8月のバンクローンは、ハイイールド債(+0.39%)や投資適格社債(+3.03%)など、デュレーション(金利リスク)のあるクレジット商品に対してアンダーパフォームしました2。米10年国債は、利回りが0.52%低下して1.50%となり、リターンは+4.67%でした。8月はローン価格が下落したことから、額面以上で取引されているローンの比率は20.6%に減少しました3。格付け別では、「BB」格のリターンが+0.09%となり、「B」格の▲0.41%や「CCC」格の▲1.81%を上回りました4。8月末時点のローン市場の平均価格は96.64ドルでした5。この価格とフォワードLIBORカーブに基づいたバンクローンの利回り水準は6.13%となります5

ファンダメンタルズ

-   8月に発表された経済指標は、堅調な消費指数を確認できた一方、購買担当者景況指数(PMI)や耐久消費財受注の数値は市場予測を下回るなど、まちまちとなりました。一方で第2四半期における発行体の収益成長率は2%を維持しており、2018年と比較すると収益成長率は鈍化しているものの、バンクローン市場全般のファンダメンタルズを維持するには十分な水準と考えています。

-   8月は、過去12カ月のデフォルト率は1.29%に低下しました4

 

市場の需給環境

 

-   リテール資金は8月も流出が続きましたが、新規発行が限られ、CLOの新規発行が着実に行われたことで、需給環境は安定的でした。

-   8月のCLOのグロス新規発行額は110億米ドルと堅調さを維持し、条件改定や借り換え目的を除いたネット新規発行額は76億米ドルでした3

-   個人投資家向けローン・ミューチュアル・ファンドとETFからは、8月は28億米ドルの資金が流出となり、11ヶ月連続での資金流出となりました3

-   8月のバンクローンの新規発行額は293億米ドルと、先月からほぼ横ばいとなりました。借り換えや条件改定を除いたネット新規発行額は150億米ドルでした。8月は新規発行額を上回る498億ドルの期限前償還があったため、バンクローン市場の供給は大きく相殺されました3

相対価値/市場機会

金利見通しが低下する中でも、バンクローンはそのディフェンシブな特性から優れた下値耐性と高水準のクーポン収入を提供

経済見通しに対してリスクが立ち込めるにつれて、金利見通しも低下し、その結果として投資家がハイイールド債へシフトし、ハイイールド債のスプレッドはシニアローンと比較して歴史的にタイトな水準となっています。債券に対する需要が高まる合理性は、固定利付の債券資産は金利低下時にはシニアローンなどの変動利付資産に比べてよいパフォーマンスが期待できるとされることに起因します。しかし、この単純な動きは、①LIBOR+クレジット・スプレッドで構成される相対的に高い絶対利回り水準、②クレジット損失のリスクを最小化する発行体の資本構成におけるバンクローンの優位性(返済順位の高さ)─を過小評価するものです。過去、これらの特徴はいずれも、他のリスク資産対比低い価格変動性につながってきました。金利が現在の水準から低下しても、ローンの全体的なクーポンは魅力的なままでしょう。金利が低下する場合(一般的には景気低迷期)、スプレッドの拡大が同時に起きることが多いため、バンクローンのインカムは比較的安定的に推移する傾向があります。このように、バンクローンは投資家に対し、無担保社債市場よりも景気減速や発行体の困難に対して構造的に優れた特性を提供する一方で、低金利環境下にもかかわらず高水準のクーポン収入を提供します。

バンクローンとハイ・イールド債券の利回り格差は引き続きタイト
短いデュレーションで高い金利収入の提供を続けるバンクローン
相対利回り

1.S&P/LSTA Leveraged Loan Index、2019年8月31日時点。

2.バンクローンはS&P/LSTA Leveraged Loan Index、投資適格社債はBAML Investment Grade Index、ハイ・イールド債券はBAML US High Yield Index、2019年8月31日時点。

3.JP Morgan、2019年8月31日時点。

4.S&P LCD、2019年8月31日時点。

5.S&P LCD、インベスコ、2019年8月31日時点。

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