米国バンクローン市場、月次アップデート 2022年8月
7月は利上げ加速懸念が和らぎ、バンクロ-ン市場は反発
バンクローンの相対価値に魅力
7月は利上げ加速懸念が和らぎ、バンクロ-ン市場は反発
7月のバンクローン市場は+2.14%のリターン(年初来で-2.51%)となりました 1 。第2四半期の業績が概ね堅調であることや、FRBの利上げサイクルがより緩やかになるとの思惑が広がったことで、投資家のセンチメントは幅広く改善しました。リスク選好度の回復に加え、新規供給が限定的だったことや、CLOの組成が堅調であったことから、ローン価格が上昇しました。95ドル以上で取引されるローンの割合は、6月末の28.8%から7月末には60.3%に上昇しました 1 。
資産価格が上昇する中で、ローンのリターンはハイ・イールド債(+6.00%)と投資適格債(+2.94%)を下回りました。年初来では、ローンはハイ・イールド債の-8.87%、投資適格債の-11.40%を大幅に上回りました 2 。ローンのうち、7月に買われたのは高~中格付のものが目立ちました。BB格(+2.27%)はB格(+2.30%)と同程度のリターンとなり、ともにCCC格(-0.28%)を上回りました。また、大型100銘柄に含まれるローンもアウトパフォームし、月間で+3.10%の上昇となりました 1 。ローン市場の平均価格は131ベーシスポイント(bps)上昇し、93.76となりました 3 。現在の平均価格を踏まえると、バンクローンはフォワードLIBORカーブを含めて8.95%の利回りとなります 3 。
ファンダメンタルズ
7月の経済指標は、企業業績に対してマクロ面での鈍化を引き続き示しています。第2四半期のGDPは2四半期連続でマイナスとなり、個人消費と投資の減速が見られました。米連邦準備制度理事会(FRB)は、金融引き締めによるインフレ抑制の一環として、金利を 75bps 引き上げました。
7月のデフォルトはなく、12ヵ月累計の額面加重デフォルト率は0.28%で横ばいとなりました 4 。デフォルト・リスクが目立つ発行体は少数に留まり、90ドル以下で取引されるローンの割合は16.2%から12.7%に減少し、80ドル以下で取引されるローンの割合はわずか2.96%となりました。
市場の需給環境
新規供給はごくわずかでしたがCLOの新規組成がそれを吸収し、リスク選好度の回復からすでに恩恵を受けている市場にとって、需給面での追い風となりました。
CLOの新規発行については市場のボラティリティが高まる中で底堅く推移し、7月には30案件で126億ドル(借り換え/条件改定案件なし)の発行となりました 3 。これにより、年初来累計の発行総額は222案件で1,055億ドルとなり、借り換え/条件改定案件を除くと838億ドルとなりました 3 。
個人投資家向けローン・ミューチュアル・ファンドとETFからは、3ヶ月連続で資金流出となりました。7月には37億ドルの資金がこの資産クラスから流出し、年初来累計の資金流入額は114億ドルに減少しました 3 。
7月のローン新規発行は低調となりました。7月の新規発行額は35億ドルとなり、2010年以降では2番目に少ない金額となりました。これらは実質的にすべてM&A/LBO案件でした 3 。年初来累計の新規発行額は1,845億ドル、借り換え/条件改定案件を除くと1,282億ドルで、それぞれ前年比67%減、43%減となりました 3 。
相対価値/市場機会
高い利回りを提供するバンクローン
金利の低下で7月にハイ・イールド債券が大きくアウトパフォームしたことを受け、ローンの利回りの魅力度は再び歴史的なレベルにまで拡大しました。ハイ・イールド債券と比較すると、ローンは発行体の資本構造の中でよりディフェンシブなポジションでありながら、より高い利回りを提供しています。そのため、ローンをポートフォリオに組み入れることは、絶対ベースでも相対ベースでも魅力的であると思われます。リテールからの資金流出は引き続き価格に対する需給面での逆風となっていますが、堅調なCLO発行に加えて、新規ローン供給の見通しが限定的であることから、年内に向けての需給面での支援材料は十分にあると思われます。
- S&P/LSTAレバレッジド・ローン指数。2022年7月31日現在。
- S&P/LSTAレバレッジド・ローン指数ならびにブルームバーグ。2022年7月31日現在。
投資適格社債はBAML投資適格社債指数、ハイ・イールド債券はBAML米国ハイ・イールド債券指数。 - JPモルガン。2022年7月31日現在。
- S&P LCD。2022年7月31日現在。
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