米国バンクローン市場、月次アップデート 2023年11月
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10月のバンクロ-ン市場は相対的に高いインカムなどを背景に底堅く推移
バンクローンの相対価値に魅力
10月のバンクロ-ン市場は上値は抑えられるも底堅く推移
10月のバンクローン市場は月間で+0.03%のリターンとなり、年初来のリターンは+9.94%となりました1。中東で紛争が勃発したことに加えて、金融引き締めが「より高い水準でより長く」続くようなシナリオを示唆する経済指標や米連邦準備制度理事会(FRB)高官のコメントが出たことや、第3四半期決算シーズンを迎えたこともあり、市場のボラティリティは上昇しました。価格リターンが月間で-0.81%となる一方で、金利リターンは+0.84%となり、トータルではほぼ横ばいとなりました。ローンの新規発行は先月急増しましたが、10月に入って再び減少しました。いくつかの案件は投資家からの人気が低く発行取りやめになるなど、ローン・マネジャーはローンの供給が少ない中でも投資の規律を維持していることが窺えます。
10月のバンクローンのリターンは、ハイ・イールド債(-1.25%)と投資適格債(-1.94%)を上回りました2。年初来では、ハイ・イールド債の+4.66%、投資適格債の-1.74%を上回りました。格付別のリターンは、BB格(+0.35%)、B格(-0.05%)、CCC格(-0.16%)となりました。ローン市場の平均価格は71ベーシスポイント(bps)下落し、94.12となりました3。現在の平均価格を踏まえると、ローンはフォワードカーブを含めて10.45%のイールドとなります³。
ファンダメンタルズ
第3四半期のGDPは4.9%と高い成長となりました。雇用者数は予想を上回って増加し、インフレ率はやや上昇しました。
新たなデフォルトは1件(Air Methods)発生し、10月の12ヵ月累計の額面デフォルト率は1.27%から1.36%に上昇しました4。また、80ドル未満で取引されるローンの割合は4.36%から5.12%にやや上昇しました4。
市場の需給環境
経済動向が注目される中で、今月は需給環境が与えた影響は限定的でした。
10月のCLOの新規発行は33案件で141億ドル(うち借換案件は23億ドル)、年初来では249案件で1,071億ドル(うち借換案件は115億ドル)となりました3。
個人投資家向けローン・ミューチュアル・ファンドとETFからは、11億ドルの資金流出となり、年初来での流出額は194億ドルとなりました3。
10月のローンの新規発行は先月より45%低下して318億ドルとなりました。内訳は、借換案件(175億ドル)、買収案件(63億ドル)、条件改定案件(55億ドル)などとなり、借換/条件改定案件を除いた新規発行額は88億ドルでした。年初来累計の新規発行額は2,897億ドル、借換/条件改定案件を除くと687億ドルとなりました3。
投資機会
中東における紛争の勃発や、それがより広い地域に拡大する懸念は、10月の市場の悪材料となりました。この紛争は今後数週間あるいは数か月、金融市場にとってより影響を与えるものとなる可能性がありますが、今後の展開は不透明です。地政学的な混乱を別にすれば、ローン市場は今のところややゴルディロックスのような環境にあります。金利の上昇によってローン投資家のクーポン収入が増える一方、堅調な経済成長が企業利益を支えています。10月の経済指標は「より高い金利水準がより長く」続くことを示唆し、SOFRの高止まりによって歴史的にも高い水準のクーポン収入を得続けることができます。ちなみに、10月のローンの金利リターンは+0.84%で、年率換算では+10.08%(ハイ・イールド債は年率+6.60%5)でした1。ローンにおける非常に高い水準のインカムは2023年の年初来トータル・リターンの原動力となり、その80%超を占めていますが、2024年にも近いリターンを生む追い風となる可能性が高まっています。



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