Global markets in focus

中東における緊張の高まりから原油価格は変動するものの、その他の市場は現状を維持

中東における緊張の高まりから原油価格は変動するものの、その他の市場は現状を維持
〔要旨〕
  • 中東:緊張は依然として高いものの、原油価格の持続的な上昇には世界的な原油供給の根本的な減少が必要であり、それは私たちの基本シナリオではない
  • FRB:インフレの上昇リスクと成長・雇用の下振れリスクからFRBは様子見姿勢を維持
  • 米国債:カナダは4月に記録的な額の米国債売却を行ったが、これは外国人投資家が米国資産の配分を減らしているもう一つの兆候と言える
中東の緊張が原油・ガス市場に影響

FRB はタカ派的な据え置き

イングランド銀行はハト派的な据え置き

日銀はハト派的な据え置き

ノルウェー銀行がサプライズで利下げ、スイス国立銀行は予想通り利下げ

カナダは時を待たず米国債を売却

注目の日程
 

彼らは行動に出るか出ないか?様子を見るしかなく、状況は不透明なままとなっている。これはまさに、2025年を完璧に表す表現です。中東で緊張の高まりが続くなか、先週のニュースは地政学関連で占められ、週末にかけて、米国がイランへの攻撃を行うかに注目が集まりました。結果として攻撃は行われましたが、市場は落ち着いた反応を示しました。現在の問題は、イランがどのような反応を示すかです。

先週は、各国の中央銀行にとってもせわしない週となりました。米連邦準備理事会(FRB)はタカ派的なトーンで金利を据え置きましたが、イングランド銀行と日銀は、ハト派的なトーンで金利を据え置きました。各行のメッセージは引き続き、「より明確な材料を要する」というものでした。
 

中東の緊張が原油・ガス市場に影響

中東での緊張の高まりが続く中で、米ドルは先週安定的に推移し、大幅な上昇は見られませんでした1。世界は今、米国の核施設攻撃を受けてイランがどう反応するか、注視しています。

中東情勢に最も大きく反応したのは原油と天然ガスの価格でした2。しかし私たちの見解では、コモディティ価格がこの水準を維持または上昇するためには、供給が持続的かつ大幅に減少する必要があります。それはあり得るものの、私たちの基本シナリオではありません。

イランは日量約330万バレルの原油を生産しています。この量は、石油輸出国機構(OPEC)の他の加盟国が持つ合計約570万バレルの余剰生産能力で容易に補填可能です。サウジアラビア単独で、さらに日量300万バレル近くを生産することも可能です3

イランは、2019年に行ったように、アブカイク油田などの域内施設を攻撃する可能性があります。しかし、イランの軍事能力は現在大幅に低下しており、域内の他国を攻撃することで、イスラエルへの支持が強まる可能性があります。同様に、ホルムズ海峡を通過する船舶を標的とする可能性もあります。世界の原油供給量の約25%が、オマーンとイランの間にあるこの幅33キロメートルの海峡を通って輸送されています4。ただしこれらの船舶の多くは、イラン産の原油を中国に輸送する船舶です。論理的には、イランは主要な買い手かつ同盟国への供給を阻害すべきでないはずです。今のところ、船舶はホルムズ海峡を通常のペースで通過しているとみられます5

エネルギー輸入大国の欧州は、原油・ガスの価格上昇の影響を受けやすい立場にあります。私たちは、原油価格は1バレル85ドルに満たない程度で推移し、2025年を通して引き続き欧州にとってのインフレ圧力となると予想しています。欧州が輸入する天然ガスの大部分は、ホルムズ海峡経由で輸送されるカタール産ではないため、ロシアからのガス供給が急減した2022年と比べると、これに対する脆弱性は低いと考えられます。

原油・天然ガス以外について言えば、ほとんどのその他の金融市場は中東の情勢をほぼ見過ごしたかのようです。歴史的に見ても、その反応が正しいと言えるかもしれません。例えば、直近のイスラエルとハマスの衝突は2023年10月7日に始まりましたが、その後S&P 500種指数は40%以上上昇しています6
 

FRB はタカ派的な据え置き

FRB は先週、政策金利の据え置きを決定しました。パウエル FRB 議長の発言からは、米政権のさまざまな政策が経済のハードデータにどのような影響を与えるか様子見する姿勢が伺えます。確かに、労働市場には落ち込みが見られつつありますが、FRB が動くほどの大幅なものではありません7

「ドットプロット」としても知られる最新の経済見通しによれば、年末までに 0.5ベーシス・ポイントの利下げが行われるというのが依然として予測の中央値となっていますが、今年中の利下げを予想しないとするFOMCメンバーは 3 月会合時点の 4 人から 7 人に増えました8。FRB のこのタカ派的なトーンは、米ドルの押し上げにはつながりませんでした9。おそらく、FRB の独立性が一部の投資家にとって依然として懸念材料となっているためでしょう。トランプ大統領は先週、250べーシス・ポイントの利下げを求めました。
 

イングランド銀行はハト派的な据え置き

イングランド銀行(BOE)も先週、政策金利を据え置きましたが、会合のトーンはよりハト派的でした。投票権を持つメンバーのうち3人が25ベーシス・ポイントの利下げを求めました。デイブ・ラムズデン副総裁は、スワティ・ディングラ氏やアラン・テイラー氏と共に利下げを主張しました。

BOEの政策決定会合の直前に英国のインフレデータが発表されましたが、インフレ率は予想を上回ったものの、上昇ペースは減速しており、サービス及び賃金インフレはBOEの予測をやや下回りました10。これに最近の求人数の弱さを加味すると、より多くのメンバーが利下げを求めた理由も理解できます11。5月の小売売上高は前年同月比1.3%減と、予想を下回る結果(ブルームバーグのコンセンサス予想では同1.8%増)となりました12。市場は今年残りの期間に2回の利下げが行われることを織り込んでいますが、私たちは3回の利下げが行われる可能性がかなり高いと見ています13
 

日銀はハト派的な据え置き

日銀も先週、金利の据え置きを決定しました。再び、世界経済の不確実性が政策当局を様子見姿勢に追いやっているようです。日本の30年物国債利回りは最近急上昇し、政策当局はさらなる売りの誘発を警戒しています14。同時に日銀は、国債買い入れの減額ペースを緩めると表明しました。
 

ノルウェー銀行がサプライズで利下げ、スイス国立銀行は予想通り利下げ

ノルウェー銀行(中央銀行)は先週、コンセンサス予想に反して0.25ベーシス・ポイントの利下げを実施しました。ノルウェーは今回の利下げサイクルで後れを取っており、先週が最初の利下げでした。スイス国立銀行は予想通り0.25ベーシス・ポイントの利下げを実施しました。スイスは現在、極めて低水準で持続的な物価上昇が続く例外的な状況にあります。
 

カナダは時を待たず米国債を売却

米国資産について、緩やかにではありますが、外国人投資家が賛同しない資産を購入しない兆候がさらに見られつつあります。先週のデータからも、外国人投資家が、米国株と長期証券の保有を900億ドル弱減らしたことが示されています。カナダは4月に最も多くの米国債を売却しました(過去のどの月と比べても多く、他のどの国と比べても多い)15。これは米国からの資本の全面的逃避とまでは言えませんが、米国に対する心理が冷え込んでいることを示す兆候と見られます。今後1年間でさらに冷え込む可能性は十分考えられます。
 

注目の日程

公表日

国・地域

指標等

内容

6月23日

ユーロ圏、英国、米国

製造業・サービス業PMI
(速報値)

製造業・サービス業の経済活動の早期指標。GDP予測と市場心理に影響を与える

6月23日

ドイツ

Ifo景況感指数

ユーロ圏経済の主な牽引力であるドイツの企業景況感を測定

6月24日

米国

S&Pケース・シラー住宅
価格指数

消費者の資産及び消費に影響を与える住宅用不動産価値の変化を追跡

6月24日

米国

コンファレンス・ボード
消費者信頼感指数

消費者心理を測定する、消費支出の先行指標

6月24日

米国

リッチモンド連銀製造業
指数

地域の製造業の健全性を示し、より広範な経済トレンドの兆候となる可能性

6月25日

米国

新築住宅販売件数

住宅市場の強さと消費者の需要を反映

6月25日

米国

原油在庫

原油価格とインフレ期待に影響を与える

6月26日

ドイツ

CPI(速報値)

主要なインフレ指標。欧州中央銀行(ECB)の金融政策に影響を与える

6月26日

米国

新規失業保険申請件数

労働市場の健全性を週次で概観する

6月26日

米国

コア耐久財受注

企業投資の動向を示す

6月26日

米国

中古住宅販売件数

住宅市場活動の先行指標

6月27日

日本

東京コアCPI

日本のインフレに関する早期指標。日銀の政策に影響を与える

6月27日

米国

個人所得・個人支出

消費者の購買力と経済のモメンタムを測定

6月27日

米国

コア個人消費支出(PCE)
価格指数

FRBが選好するインフレ指標。金利の決定に重要となる

6月27日

米国

ミシガン大学消費者信頼感
指数(確報値)

消費者信頼感指数の確報値。市場の見通しに影響を与える

  • 1.

    出所:ブルームバーグL.P.、2025年6月20日、貿易加重通貨バスケットに対する米ドルの価値を測定する、米ドル指数に基づく

  • 2.

    出所:ブルームバーグL.P.、ニューヨーク・マーカンタイル取引所、2025年6月20日、ブレント原油・天然ガス先物に基づく

  • 3.

    出所:OPEC、2025年5月31日

  • 4.

    出所:米国エネルギー情報局、2025年5月31日

  • 5.

    出所:ブルームバーグL.P.、2025年6月19日

  • 6.

    出所:ブルームバーグL.P.、2025年6月18日、2023年10月7日から2025年6月18日までのS&P 500種指数総リターンに基づく

  • 7.

    出所:米国労働統計局、2025年6月14日、失業保険の新規申請件数と継続受給者数に基づく

  • 8.

    出所:FRB

  • 9.

    出所:ブルームバーグL.P.、米国ドル指数に基づく

  • 10.

    出所:英国国家統計局、2025年5月31日

  • 11.

    出所:英国国家統計局、2025年5月31日

  • 12.

    出所:英国国家統計局、2025年5月31日

  • 13.

    出所:ブルームバーグL.P.、2025年6月19日、イングランド銀行のマーケット・インプライド・レートに基づく

  • 14.

    出所:ブルームバーグL.P.、2025年6月19日、日本10年物国債利回りに基づく

  • 15.

    出所:マクロボンド、2025年6月19日

当資料は情報提供を目的として、インベスコ・アセット・マネジメント株式会社(以下、「当社」)が当社グループの運用プロフェッショナルが日本語で作成したものあるいは、英文で作成した資料を抄訳し、要旨の追加などを含む編集を行ったものであり、法令に基づく開示書類でも金融商品取引契約の締結の勧誘資料でもありません。抄訳には正確を期していますが、必ずしも完全性を当社が保証するものではありません。また、抄訳において、原資料の趣旨を必ずしもすべて反映した内容になっていない場合があります。また、当資料は信頼できる情報に基づいて作成されたものですが、その情報の確実性あるいは完結性を表明するものではありません。当資料に記載されている内容は既に変更されている場合があり、また、予告なく変更される場合があります。当資料には将来の市場の見通し等に関する記述が含まれている場合がありますが、それらは資料作成時における作成者の見解であり、将来の動向や成果を保証するものではありません。また、当資料に示す見解は、インベスコの他の運用チームの見解と異なる場合があります。過去のパフォーマンスや動向は将来の収益や成果を保証するものではありません。当社の事前の承認なく、当資料の一部または全部を使用、複製、転用、配布等することを禁じます。

MC2025-070