5月FOMC:予想通り政策金利を据え置き

要旨
政策金利を据え置き。利下げ再開にはまだ距離
5月6~7日に開催されたFOMC(米連邦公開市場委員会)では、大方の事前予想通り、政策金利が据え置かれました。パウエルFRB(米連邦準備理事会)議長は、「トランプ政権の政策がはっきりするまでは政策変更を急ぐ必要がない」という、従前からの見方を繰り返し、利下げとは距離を置くスタンスを改めて示しました。総じて、今回のFOMCはおおむね想定内であったと言えます。
6月あるいは7月のFOMCでの利下げ再開を見込む
私は、4月分以降の米国のハードデータには既に実施済みの追加関税による悪影響が出始めることで、6月17~18日に開催予定のFOMCで利下げが再開されるとみていますが、仮にそこで利下げが決定されなくても、7月29~30日に開催予定のFOMCにおいては、7月初めをめどに進行中の米国と主要貿易相手国との間の通商交渉の結果がかなり判明しているとみられることから、利下げが実施される可能性が高いと見込んでいます。
グローバル株式市場の行方
4月下旬以降、グローバル株式市場では、前向きの動きが強まってきました。今後、米国株式市場については、4月分以降のハードデータの弱さや分野別追加関税の発表が株価下押し圧力になる一方、通商交渉の進展や、どこかの時点でFRBによる利下げの兆しが出てくることが、株価への押し上げ圧力につながるとみられます。このため、米株市場では当面はボラティリティーが比較的高い局面が続くと見込まれます。他方、米国以外の主要先進国・新興国株式市場では、主要株価指数が大きくリバウンドするケースが目立っており、今後、注目したいと思います。
政策金利を据え置き。利下げ再開にはまだ距離
5月6~7日に開催されたFOMC(米連邦公開市場委員会)では、大方の事前予想通り、FF金利の誘導目標が4.25~4.50%で維持されました。今回のFOMCについての金融市場の関心は、今後の利下げに距離を置く立場を続けてきたFRB(米連邦準備理事会)の金融政策スタンスが変わっているかどうかという点にあり、記者会見でのパウエルFRB議長への質問もその点に集中しました。この点について、パウエル議長は、トランプ政権の政策がもたらす不確実性によって、インフレ上昇と景気悪化という2つのリスクが共に上昇したとの見方を示す一方で、「トランプ政権の政策がはっきりするまでは政策変更を急ぐ必要がない」という、従前からの見方を繰り返しました。今回のFOMCやその後のFRB議長の記者会見はおおむね金融市場の想定内であったと言えます。FOMCの決定に対する米国の株式・債券市場の反応は限定的でした。FOMCの発表当日に半導体関連株の株価が上昇したのは、バイデン政権時代に強化されたAI関連の半導体についての輸出規制をトランプ政権が緩和することを検討しているというブルームバーグによる報道のためでした。
6月あるいは7月のFOMCでの利下げ再開を見込む
そうした中で注目されるのが、パウエルFRB議長が足元の米国経済について、「良い状況にある」と肯定的に評価した点でした。1-3月期における米国の実質GDP成長率(前期比年率ベース、以下同様とします)はマイナス0.3%に沈んだものの、これは追加関税などの理由から輸入が急増したためであり、民間の実質最終需要は3.0%と、昨年とほぼ同様の伸びを維持しました。パウエル氏はこの点に言及したうえで、失業率は4.2%と低水準であり、労働市場も堅調であると述べました。
FRBが利下げを急ぐ必要がないという見方が改めて示されたこともあり、一部の市場関係者からは「FRBは今年の秋か冬ごろまで利上げを見送るのでは」という見方も出てきていますが、私自身は、その見方には賛成できません。FRBが現段階で利下げをしないのは、トランプ政権による追加関税がどの水準に落ち着くのか、そして、他国の報復措置がどのような形で米国景気に悪影響を及ぼすのかという点が定まらないためであるとみられます。パウエル氏は、今回の記者会見において、発表された大幅な関税の引き上げが維持されれば、経済成長の減速や失業増加につながる可能性が高いとの見方を示しています。私は、4月分以降の米国のハードデータには既に実施済みの追加関税による悪影響が出始めることで、6月17~18日に開催予定のFOMCで利下げが再開されるとみていますが、仮にそこで利下げが決定されなくても、 7月29~30日に開催予定のFOMCにおいては、7月初めをめどに進行中の米国と主要貿易相手国との間の通商交渉の結果がかなり判明しているとみられることから利下げが実施される可能性が高いと見込んでいます。
グローバル株式市場の行方
4月下旬以降、グローバル株式市場では、前向きの動きが強まってきました。トランプ政権がインドや日本などの一部の国々との間で追加関税についての通商交渉をすすめていることや、トランプ政権高官が中国向けの追加関税を引き下げる可能性を示唆するなどの動き、一部企業の決算が米国株式市場における前向きの動きを主導してきました。今後の米国株式市場については、株価に対する下押し圧力と押上げ圧力の両方が生じることで、当面はボラティリティーが比較的高い局面が続くと見込まれます。まず下押し圧力としては、4月分以降の米国経済のハードデータが弱めになる可能性が高い点が挙げられます。これは、米国経済の景気後退局面入りへのリスクを意識させることで、株価に下押し圧力をもたらすとみられます。また、米国政府が、半導体やその他のエレクトロニクス製品、医薬品への追加関税措置を近いうちに公表するとみられることも、株価には悪材料になるとみられます。一方で、通商交渉の進展や、どこかの時点でFRBによる利下げの兆しが出てくることが、株価を押し上げる材料になるとみられます。
ところで、米国以外の主要先進国・新興国株式市場では、主要株価指数が大きくリバウンドするケースが目立ってきました。トランプ政権の関税政策の柔軟化に対する期待感のほか、グローバルにドル安が進行したこともあって、米国以外の資産に目を向ける動きが強まってきたことなどが背景にあるとみられます。今後、注目していきたいと思います。
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