インベスコの視点

【ダイレクト・レンディング戦略】現在の市場環境におけるキーポイント

Strategy Insights
要旨
  • FRBの金融引き締めはパブリック市場全般にショックをもたらしたが、ダイレクト・レンディングのリターン機会を大幅に増加させた
  • ダイレクト・レンディングのリスクも高まっており、市場全体のデフォルトが増加する懸念はある
  • 運用者、投資戦略、投資先選定、ローン組成がダイレクト・レンディングの勝敗を分けると考える

 

過去1年半の間に、連邦準備制度理事会(FRB)は11回の利上げを行い、政策金利は22年ぶりの高水準となる5.5%に達しました。パウエル議長の直近のコメントも、政策金利を 「より高い水準でより長く」 維持するスタンスを示すものでした。これらはパブリック市場全体にある程度のショックを与えましたが、ダイレクト・レンディング戦略にとっては、そのリターン機会が大きく増すことに留意が必要です。過去18カ月で見ると、ダイレクト・レンディングの平均利回りは、7.5~8.0%の水準であったものが12~13%という過去最高の水準まで上昇しました(図表1をご参照)。

図表1:ダイレクト・レンディングのイールドが大幅に上昇

リターン機会については上記の通りですが、その一方で市場全体のリスクも高まっています。ミドル・マーケットの借り手は、足元の経済上の課題や潜在的なリセッションの影響に加えて、借入コストの上昇、人手不足と賃金上昇圧力、原材料費の上昇、サプライ・チェーンの混乱などに引き続き注意を払っています。このような環境でダイレクト・レンディング市場全体のデフォルト・リスクが高まる可能性があり、ダイレクト・レンディング戦略での勝ち組と負け組を分けるのは、運用者、投資戦略、投資先選定、ローン組成などが主な決め手になると思われます。
 

投資戦略

インベスコのダイレクト・レンディング運用チームでは、これまでに多くの市場サイクルに耐えてきた保守的でディフェンシブなアプローチを採用しています。具体的には、プライベート・エクイティが所有する米国のコア・ミドル企業を対象に、第一抵当シニア有担保ローンを組成しますが、運用チームメンバーと長年の関係がある大手プライベート・エクイティと連携することで、さらにリスクの軽減が可能になると考えています。重要なことは、当運用チームの投資案件はすべて、ローン・トゥ・バリュー(LTV)が低く、レバレッジが控えめで、財務維持コベナンツが厳格に付与されたドキュメンテーションで構成されていることです。当運用チームの保守的なアプローチは、現在の環境に特に適していると考えています。
 

投資先選定

マクロ環境は当面、厳しい状況が続くと思われますが、そのような市場環境でこそアルファが生まれる可能性があります。実際、当運用チームの経験によれば、リスクが既知で対処可能な場合には、激動する市場でリスクを軽減し、それを引き受けることがはるかに容易であるということです。このような環境では、投資先選定が最も大切であると考えます。重要なのは、安定的かつ継続的な収入を上げてきた実績のある企業への投資に注力することです。当運用チームが引き受けを行う際には、3年から5年の見通しに基づいて、売上のキャッシュフローが見やすく、かつ恒常的に発生する企業に重点を置いています。

すべての投資機会において、運用チームでは、厳しい条件を包括的に入れたシナリオを用いて企業のビジネスを評価します。現在の市場環境を考慮し、コモディティ・インフレの継続、賃金上昇、サプライ・チェーンの混乱、景気後退、高止まりする金利などへのビジネス耐性のストレス・テストを行っています。このような観点から、私たちは、日用品に関わるサービスなど売上への影響が少なく、投入コストの上昇に適応できる柔軟なコストと価格体系を持つ事業に注目しています。

投資先選定の観点からは、このようなディフェンシブ投資により、当運用チームでは、クレジット・リスクを軽減しつつ、今日の高いスプレッドの恩恵を享受することが可能となります。
 

保守的なローン組成

また、現在の環境は、保守的なローン組成に非常に適していると考えています。市場全体の新規取引におけるレバレッジ・レベルは低下し、ローン・トゥ・バリュー(LTV)の指標は大幅に改善しました。これによって、運用チームの足元の投資案件では、多くのエクイティがファースト・ロスのポジションにあてられています。実際、運用チームにおける過去12カ月間の新規投資案件の平均エクイティ・クッションは、60%近くに達しています。また、ほとんどの新規投資案件で有利なコール・プロテクションを付与することができたため、市場が好転した際のリファイナンス・リスクを軽減することができたことも重要です。このような保守的なローン組成を組み合わせることで、投資のリスクを大幅に軽減することが期待できると考えます。
 

まとめ

FRBはしばらくの間、より抑制的な金融政策を維持することが予想され、それに伴い経済的な逆風が企業に影響を与える可能性がありますが、ダイレクト・レンディング戦略は、その高い利回りとリターンの可能性から、引き続き魅力的であると考えています。その一方で、投資家の皆様がダイレクト・レンディング戦略を検討される際には、運用者の経験の他、投資先選定とローン組成におけるアプローチを含めて、当該戦略を理解されることが極めて重要です。そうすることで、投資家の皆様は、リターン面で利益を得ることができるだけでなく、より重要なこととして、ダウンサイド・リスクを軽減することが期待できると考えます。

 

当資料ご利⽤上のご注意

  • 当資料は情報提供を⽬的として、弊社グループが作成した英⽂資料をインベスコ・アセット・マネジメント株式会社(以下、「弊社」)が抄訳し、要旨の追加などを含む編集を⾏ったものであり、法令に基づく開⽰書類でも⾦融商品取引契約の締結の勧誘資料でもありません。抄訳には正確を期していますが、必ずしも完全性を弊社が保証するものではありません。また、抄訳において、原資料の趣旨を必ずしもすべて反映した内容になっていない場合があります。また、当資料は信頼できる情報に基づいて作成されたものですが、その情報の確実性あるいは完結性を表明するものではありません。当資料に記載されている内容は既に変更されている場合があり、また、予告なく変更される場合があります。当資料には将来の市場の⾒通し等に関する記述が含まれている場合がありますが、それらは資料作成時における作成者の⾒解であり、将来の動向や成果を保証するものではありません。また、当資料に⽰す⾒解は、インベスコの他の運⽤チームの⾒解と異なる場合があります。過去のパフォーマンスや動向は将来の収益や成果を保証するものではありません。弊社の事前の承認なく、当資料の⼀部または全部を使⽤、複製、転⽤、配布等することを禁じます。

     

    当運用戦略(ダイレクト・レンディング)に関する投資リスク

    当運用は、値動きのある米ドル建てのミドルマーケットローン等への投資を行います。組入れたミドルマーケットローンの価格の下落や金利動向等のほか、借り手の倒産や財務状況の悪化およびそれらに関する外部評価の変化等により、ミドルマーケットローンの価格が変動し、損失を被る可能性があります。したがって、投資家の皆様の投資元本は保証されているものではなく、投資対象であるミドルマーケットローン等の価格下落により、損失を被り、投資元本を割り込むことがあります。
    主な投資リスクは次のとおりです。
    信用リスク
    ミドルマーケットローンの価格は、借入企業の財務状況の悪化などの信用状況の変化、もしくはそれが予想される場合、価格が下落することがあります。また、利息および償還金をあらかじめ決定された条件で支払うことができなくなった場合(デフォルト)、またはできなくなることが予想される場合には、ローンの価格が大きく下落することがあります。担保の状況によっては投資元本に対して担保の価値が充分でない場合もあります。
    価格変動リスク
    ミドルマーケットローンの価格は、政治・経済情勢、発行企業の業績、市場の需給等を反映して変動し、下落することがあります。また、発行企業が経営不安、倒産等に陥った場合には、投資資金が回収できなくなることもあります。
    担保価値変動リスク
    通常、融資実行時には融資額と同程度以上の担保が設定されますが、市場環境の変化によって担保価値が変動し、ミドルマーケットローンの価格が下落することがあります。
    金利変動リスク
    投資するミドルマーケットローンの大半は変動金利であるため、金利の上昇(低下)による価格の変動は固定金利の資産に比べて相対的に小さなものになると想定されますが、金利変動局面やスプレッド拡大局面では、その影響を受けてミドルマーケットローン価格が下落することがあります。
    流動性リスク
    ミドルマーケットローンは、一般的に流動性や市場性が低く、期待される価格や希望する数量を売却できないことがあります。
    為替変動リスク
    為替レートは、各国の金利動向、政治・経済情勢、為替市場の需給、その他要因により大幅に変動する場合があります。組入外貨建資産について日本円で評価する際、当該外貨の為替レートが円高方向に変動した場合には、損失を被ることがあります。

    当運用戦略(ダイレクト・レンディング)に関する費用と税金

    投資一任契約に基づいて外国籍私募投信に投資する場合の費用は次のとおりです。
    国内特定(金銭)信託における費用・税金
    • 投資一任契約に係る報酬:資料作成時点で受託実績がなく、料率体系が未定のため、表示することができません。
    • 特定(金銭)信託の管理報酬:当該信託口座の受託銀行である信託銀行にお支払いいただく必要があります。具体的料率については信託銀行にご確認下さい。
    • 上記の費用の合計額については、運用状況などによって変動するものであり、事前に料率、上限額などを表示することができません。
    投資先海外ファンドにおける費用・税金
    • 実際の投資は日本国外のファンドで行い、国内特定(金銭)信託口座から日本国外のファンドに投資することを想定していますが、投資先ファンドの諸条件については、当資料作成時点では詳細が決定していないため、表示することができません。
    • 投資対象ファンド管理報酬および費用 :ファンドの運用残高によって変動するため、事前に具体的な料率、金額または計算方法は記載できません。
    • その他の費用:組入銘柄の売買時に発生する費用、外貨建資産の保管等に要する費用、監査費用 等が発生し、投資先海外ファンドの信託財産中より支払われます。これらの費用は取引量などによって変動するため、事前に具体的な料率、金額または計算方法は記載できません。
    • 上記の費用の合計額については、運用状況などによって変動するものであり、事前に料率、上限額などを表示することができません。
    費用の合計
    • 上記の費用の合計額については、運用状況などによって変動するものであり、事前に料率、上限額などを表示することができません。
    課税について
    • 非課税要件を満たした年金基金のお客様については非課税となります。
    ※外貨建資産への投資によって発生する配当、キャピタルゲインに対して、関係国で課される税金を負担する場合があります。

    ※投資一任契約の締結に際しましては、重要事項説明書ならびに契約締結前交付書面を必ずご確認下さい。

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