世カエルの運用状況とブロックチェーン市場の今後
[レポートのポイント]
1. 年初来の世カエルの振り返り
2. 様々な業界において課題の解決をもたらすブロックチェーン技術
3. 大手金融機関も参入しているブロックチェーン市場
世界の株式市場は、2022年2月から3月にかけてロシア・ウクライナ紛争を受けた地政学リスクの急激な高まりにより、大幅に下落しました。その後は、原油など資源価格の上昇によるインフレ圧力の高まりや、各国・地域の中央銀行による利上げ加速が景気後退へつながるとの警戒感が高まったことも、株式市場の下落圧力につながり、変動性の高い相場展開となりました。
世カエルの基準価額は、2022年4月に米国のインフレ率の高止まりを背景に、FRB(米連邦準備理事会)がタカ派姿勢を強めたことなどから暗号資産関連の株式が下落したことが影響し、下落基調となりました。その後は、暗号資産に関する悪材料をこなしつつ、7月に入ると株式市場の回復とともに、リスク回避姿勢が和らいだことで、回復に転じました。
株式市場の見通し
株式市場は2022年6月の中旬以降反発していますが、きっかけは、7月に実施されたFOMC(米連邦公開市場委員会)で市場の予想通りの0.75%の利上げとなったことで、FRBの積極的な利上げ姿勢が回避され、安心感が広がったことにあります。また、8月に公表された米国の7月のCPI(消費者物価指数)ではインフレが落ち着く兆しが出てきたため、FRBによるタカ派化懸念がさらに和らぎ、株式市場は反発の勢いを強めています。
しかしながら、同時に景気減速感が強まってきており、民間消費の減速や企業収益への波及を考慮すると、景気敏感株式や消費関連株式には向かい風が吹くことが想定されることから、これらの企業にとってはこの先の戻り幅も限定的と考えられます。一方で、米国の長期金利は低下基調にあることから、景況感が悪化する中でも相対的に底堅い業績が予想されるテクノロジー分野等のグロース株は、景気敏感株に比べ、株価の反発が持続する可能性が高いと考えられます。実際に、ビットコインなどの暗号資産価格も株式市場の反発と金利の低下を受けて反転しており、関連する企業の株価も力強く反発しています。
ブロックチェーン関連株式市場の見通し
世カエルでは、暗号資産分野でのビジネスを主力とするマイニング・ハードウェア/オペレーション企業や、ブロックチェーン金融サービス企業に着目しているため、短期的には大きな値動きを伴うことが予想されます。一方で、世カエルの設定来、ブロックチェーン技術はさまざまな分野での活用が拡大しており、新しいサービスや産業を生み出しています。新規参入企業だけでなく、既存企業による関連分野への新たな投資も拡大しており、ブロックチェーン技術は今後も魅力的な投資機会を提供していくと考えられます。
ブロックチェーンは、仮想通貨やフィンテックへという新しい領域を生み出してきましたが、ブロックチェーンの本質である「高い安全性、分散、低コスト」という特色から、今後は非金融領域の産業への広がりが期待されています。すでに、幅広い業種でブロックチェーンを活用する動きがみられていますので、一部をご紹介させていただきます。
非金融領域でのブロックチェーン技術の活用例
高級ブランドの偽造品による被害は甚大であり、それを解決するためブロックチェーン技術が活用されています。発行される証明書の情報から正規品かどうかを判断できる仕組みに加えて、商品のメンテナンス情報も所有権と商品と紐づいた形で追跡、記録することができます。偽造品から消費者を守るだけでなく、中古市場における売買の安全性を高めることから、ブランドの価値の向上にもつながることが期待されます。
①ワクチンの追跡、②品質保証、真正性の確保、③接種の予約アプリ、接種証明の発行、④接種会場のスケジュール管理、医療従事者の人員確保、などワクチンを安全に配布・管理したり、迅速な接種をスムーズに進める技術をブロックチェーン技術を使って提供が可能となっています。
模倣品による半導体のブランド毀損や使用される製品の事故防止の機運が高まっていることから、半導体の業界団体であるSEMIの日本地区でブロックチェーンによるトレーサビリティ*1の規格化が進められています。ブロックチェーン技術を用いることで、その製品が辿ってきたルートが改ざんされていないことが保証されるため、企業は納品された半導体に模倣品がないか事前に確認し事故を防ぐことができ、また半導体メーカー側も自社のブランド毀損を防ぐことができます。
- ブロックチェーン技術は金融取引に親和性が高く、暗号資産を扱う新興企業だけでなく、世界の大手金融機関もブロックチェーン技術の活用に動いています。
- ブロックチェーンというと真っ先に思い浮かぶ仮想通貨に対してのかかわり方の程度は金融機関によって差があります。
- 一方、従来からの銀行業務である決済、貿易取引、証券取引などについては、すでに多くの金融機関でブロックチェーン技術の導入が始まっています。
- 特に、銀行業務の根幹となる決済サービス分野で覇権を握るべく米国、欧州、日本などの大手金融機関が開発に動いています。その背景として、企業向けブロックチェーンには以下のような特徴があるからです。
*一度記憶されたデータは改ざんがほぼ不可能であり、改ざんされた場合でもその記録が残る
*閲覧の権限を設定するなど、金融機関に求められるセキュリティ対策も可能
*中央のサーバーにデータを一極集中管理するものではないことから、システム障害の影響を受けにくい
- さらに、ブロックチェーン技術を活用した新しいビジネスで高い成長が期待されている①デジタル・アートやゲームのアイテムの所有権や真贋(しんがん)の証明を可能とするNFT(ノンファンジブル・トークン)や②メタバース(仮想空間)などの市場へ参入する動きも見られています。
- 新興の金融機関の台頭や金融危機後に規制が強化されてきたことなどを背景に、大手金融機関の収益環境が厳しくなってきています。そこから脱却するため、ブロックチェーン技術を積極的に活用する動きは一層広がることが期待されます。
各種資料よりインベスコ作成
上記は金融機関が参入しているすべてのブロックチェーン市場を網羅したものではありません。
上記は2022年8月時点における運用チームの見解を示したものであり、将来予告なく変更されることがあります。
※当レポートでは、「インベスコ 世界ブロックチェーン株式ファンド」を 「世界ブロックチェーン株式ファンド」 、「インベスコ 世界ブロックチェーン株式ファンド(予想分配金提示型)」を 「予想分配金提示型コース」ということがあります。
2410679-JP