世カエルの足元の状況と今後の見通し
[レポートのポイント]
1. 2023年初来の世カエルのパフォーマンス(2023年4月末現在)
2. 暗号資産に対する見方
3. 電気自動車(EV)の未来を変えるブロックチェーン技術
4. ブロックチェーンの今後の見通しと世カエルの運用方針
- 年初は、①米国の利上げペースの鈍化により、テクノロジー関連株式が上昇したこと、②2022年に暗号資産関連の様々な悪材料から下落したビットコイン価格が急騰したことなどを受け、暗号資産関連企業の株価が上昇したこと、などから世カエルは上昇基調となりました。
- その後は、米国の経済指標やインフレ関連の指標をにらみながら、小動きの展開となりました。
- しかし、3月に入り、①スタートアップ企業との取引が多かった米国銀行シリコンバレー・バンクが破綻したことやスイス銀行大手のクレディ・スイスの経営不安などを受け、金融不安が台頭したこと、②米暗号資産交換業大手のFTXトレーディングが2022年秋に経営破綻した後、預金流出となったシルバーゲート・キャピタル傘下の暗号資産関連の銀行が清算を発表したこと、など受け世カエルは大きく下落しました。
- 3月後半から4月にかけては金融システム不安からの逃避先としてビットコインが買われブロックチェーン株式も反発したものの、ビットコイン価格が3万米ドルを超えた後はポジション調整から下落する展開となり、世カエルもこの動きに連動する形で、レンジでの推移となりました。
- 米国や欧州における継続的な利上げと、今後想定されている金利の高止まりは成長期待の高いテクノロジー関連企業の株式などと同様に、暗号資産や関連企業にとっても向かい風となる可能性は否定できません。2022年は暗号資産にとって厳しい環境となりましたが、その一方で幾つかのポジティブなニュースが報じられており、暗号資産や関連企業の成長期待は継続すると考えています。
>> 市場参加者の拡大
2022年は暗号資産の保有者は約44%増加しました。(2021年12月と2022年12月の比較)市場の弱気ムード、暗号資産交換業大手FTXトレーディング破綻などの複数の悪材料にもかかわらず、暗号資産の保有に前向きな動きが見られており、市場参加者が拡大していることを示しています。
>> ETFを通じた取引参加機会の増加
2022年には暗号資産、および暗号資産の先物を連動対象とするETFへ4億米ドル超の資金流入がありました。オーストラリアや香港ではビットコインやイーサリウムの先物を投資対象とするETFが認可・上場されるなど、さまざまな地域で普及が進んでおり、暗号資産に対する需要の高まりが見られています。
- FTXトレーディングの事件後の規制強化の動きは暗号資産取引のマイナス材料となる一方、保守的な機関投資家の参入につながるきっかけとなることも期待されています。
>> 大手金融機関が暗号資産の受託ビジネスに参入
現在、暗号資産の安全な取引や保管に向けた取り組みが進行しています。米国ではすでに金融サービス大手のフィデリティ・インベストメンツの子会社や大手銀行のバンク・オブ・ニューヨーク・メロンなどが暗号資産の信託受託ビジネス(カストディ業務)を開始していますが、2022年の法改正により、日本の信託銀行もこれに参入できることとなりました。
>> リスクを注視しつつも、暗号資産が作り出す経済圏の価値向上に着目
暗号資産はその価格変動性の高さから投機的な投資対象としての側面が注目されていますが、当ファンドが値動きの連動を目指すインデックスの銘柄選定を行う「コインシェアーズ・インターナショナル・リミテッド」は、ビットコインやイーサリウムなどを中心とした暗号資産を取り巻く技術やそれを含む経済圏の価値向上に着目をしており、今後も関連する企業の株式への投資を通じて、その恩恵を受けることができると考えています。
ただし、暗号資産市場は発展途上にあるため、今後もさまざまなイベントの発生が予想されることから、株価の変動性の高さはリスクとして注視していく必要があると考えています。
注釈について
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上記銘柄への投資を推奨・勧誘するものではなく、当ファンドにおける将来の組み入れまたは売却を示唆・保証するものではありません。上記は2023年5月1日時点における運用チームの見解を示したものであり、将来予告なく変更されることがあります。
- EV市場規模は、2022年から2030年までに約3.6倍になると予想されています。( IEAによるBattery electric vehiclesとPlug-in hybrid electric vehiclesの販売額予想。)そのEVの発展にブロックチェーン技術の活用が期待されていますので、ご紹介いたします。
- 今後のEVの生産増加に伴い、搭載される電池の主流となっているリチウムイオンバッテリーの需要拡大が見込まれます。これに使用されるリチウムやコバルトの資源は採掘可能な地域に偏りがあることから(表参照)、「供給の不安定化」や「価格の高騰」が懸念されています。
- その解決策として、バッテリーの再使用やリサイクルを進めるために、正確な取引履歴を暗号技術によって維持できるブロックチェーン技術を活用したプラットフォームの構築が進められています。これにより、以下の課題解決が期待されます。
①どの場所にどれだけの残存価値を持つバッテリーがあるかわからないので、効率的に回収することができない
②回収しても残存価値が不透明なので、適正価格で取引されない
- 一般的にEVは環境にやさしいと言われますが、走行時だけでなく、車両やエネルギーの製造過程を含めたライフサイクル全体でどの程度CO2が排出されているかを見る必要があります(下図参照)。
- EVは、走行時のCO2排出量はわずかですが、製造時にはガソリン車よりも多くのCO2を排出するとされています。例えば、EVに搭載されるリチウムイオン電池に使用されるレアメタル(コバルト、リチウム等)の採掘時や電池製造時には多くのエネルギーを消費しCO2が排出されます。
- ブロックチェーンを活用し、一連のCO2排出量を記録するプラットフォームづくりを進めることで、どの過程でどの程度のCO2が排出されているのかを追跡することが可能となり、CO2削減の取り組みが促進されます。
- EV化と同時に自動運転やコネクテッドカーの導入も進められており、車両の所有権、修理履歴、走行距離、保険関連などの車両識別情報などがデジタル化され、ネットワーク上で管理されるようになります。これらは不正利用されることで、データが漏洩するばかりでなく、安全性が脅かされる可能性もあることから、情報改ざん・漏洩を防止する重要性が急速に増しています。
- ブロックチェーン技術は改ざんが不可能なデータのやり取りができることが特徴で、様々な情報を信頼性が担保された形で保存できます。自動車業界では国・地域や業界をまたいで大手企業なども参加している、ブロックチェーンを活用したモビリティ業界の課題解決を行うためのコンソーシアムが設立され、デジタル・インフラの企画・開発が進められています。
- ブロックチェーン技術は暗号資産関連企業だけでなく、様々な分野の企業活動に活用が広がり、新しいサービスや産業を生み出しています。
- ブロックチェーン技術は、①既存技術では時間的・金銭的負担の大きかった課題を解消できる、②企業活動や経営判断に用いるデータやアプリケーションがブロックチェーンでつながることにより、より安全、安価に精度の高い情報を把握できるようになる、などの利点から、今後企業のデジタル投資進展の恩恵を最も受けやすい産業として、引き続き注目度の高い分野であると考えています。
- 2023年3月には、米連邦準備理事会(FRB)副議長が講演で、「暗号資産がマネーロンダリングなどに悪用されるリスクがある一方、その技術が金融システムに変革をもたらす可能性に注目している」と述べています。FRBが新たに暗号資産分野に精通する専門チームを立ち上げることにも言及しており、金融当局が規制とイノベーションとのバランスを取りながら、暗号資産技術を活用する姿勢を見せたことは、市場の健全な成長を後押しすると期待されます。
- ブロックチェーン関連株式の一部の銘柄は、成長性が高いと期待される一方、成長過程にある分野であることから特定の事象が一時的に株価に大きく影響する場面も見られます。
- 世カエルでは、すでに盤石な事業基盤を持ちながらも、経営者が率先してブロックチェーン技術への積極的な投資を行い新たな成長ステージを目指す企業への投資機会に着目しています。
- 一方で、2023年4月末に実施したリバランス*では、マイニング関連企業を新たに組み入れるなど、暗号資産価格への感応度を高めたポートフォリオとしました。金利の高止まりが予想される環境は、経済の過度の冷え込みや混乱をもたらす可能性もあり、その場合には、FRBが利下げに踏み切ることも想定され、暗号資産価格の上昇が期待できると考えています。
- 今後も一定の暗号資産関連企業への配分を維持しながらも、世カエルでは特定の分野に偏らず、ブロックチェーン技術を活用する幅広い業種に分散したポートフォリオを構築していく方針です(下表参照)。
*インデックスのリバランスは2023年4月末に実施され、ファンドに反映されるのが2023年5月1日となります。
※当レポートでは、「インベスコ 世界ブロックチェーン株式ファンド」を 「世界ブロックチェーン株式ファンド」 、「インベスコ 世界ブロックチェーン株式ファンド(予想分配金提示型)」を 「予想分配金提示型コース」ということがあります。
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