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市場は貿易協議とFRB議長に関するニュースを受けて上昇

市場は貿易協議とFRB議長に関するニュースを受けて上昇
〔要旨〕
  • 相場の上昇:先週、米政権の融和的な発言が金融市場の上昇に寄与したが、まだ市場が落ち着いたというわけではない
  • 利下げ:主要中央銀行の利下げ幅拡大は織り込み済みだが、FRBより欧州中央銀行(ECB)とイングランド銀行(BOE)の方が、より柔軟に手を打つ余地が大きいと考えられる
  • 米国経済:関税が本格的に発動される前に家計や企業が支出を行おうとするため、米国の景気後退が起こるかどうか、起こるとすればいつかを判断するのが難しくなっている
「お前をクビ」にはしない:トランプ大統領は、パウエル議長を解任する意向はないことを表明

市場が関税について明確化を求める中、貿易協議が続く

DOGEによる取組みは終わったのか?マスク氏が退任を表明

米国の成長率見通しは引き下げられたが、ハードデータは持ちこたえている

FRBよりもECBとBOEにとってやりやすい方向に

市場タイミングを計るよりも市場に留まることの重要性

株価は上昇したものの、相対的なトレンドには変化なし

注目の日程
 

2025年に入ってジェットコースターのような様相を呈してきた市場は先週、ドナルド・トランプ大統領がジェローム・パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長を解任する意向はないと発表した際、またスコット・ベッセント米財務長官が対中関税について融和的なコメントをした際、そしてイーロン・マスク氏が政府効率化省(DOGE)から近々身を引くとコメントした際、上昇に転じました。

2025年のテーマパークでようやく、ジェットコースターから降り、より穏やかな乗り物に乗り換えられるタイミングが来たのでしょうか?それは、違うようです。市場はこれまで、前向きなコメントが出ても、数日後あるいは数時間後に別の展開にかき消されるという経験をしてきました。確かにこの乗り物で一番怖い箇所は既に通過した可能性はありますが、今後さらにジェットコースターのような展開があるかもしれないと思えないなら、それは考えが甘いかもしれません。

私たちが現在見ているデータは、ミラーハウスのようなものです。米国の消費者・企業の心理は急降下しており1、国際通貨基金(IMF)は成長率見通しを下方修正しました2。しかしながら、ハードデータは予想よりも好調となっています。これは需要の前倒しを反映している可能性が高く、景気後退の可能性についてしっかりした見通しを立てることを難しくしています。

 

「お前をクビ」にはしない:トランプ大統領は、パウエル議長を解任する意向はないことを表明

市場へのダメージを受け、トランプ政権が一部政策から手を引くと見られた際、市場は歓喜しました3。4月21日月曜日の市場の動き(米国株、米国債、米ドル指数が揃って下落)は、FRBの独立性を脅かしても良いことはないとの明確なシグナルを発しました4

しかしこうした懸念は、見当違いだったのかもしれません。4月22日火曜日にトランプ大統領は、パウエル議長を解任する意図はなかったと述べました。「(解任を)考えたことはない」、「マスコミは勝手な報道をするが、私には解任の意図はない。ただ彼には、利下げの検討についてもう少し積極的になってほしい5」。

おそらくトランプ大統領は、パウエル議長を解任すれば、債券利回りが大幅に上昇する可能性が高いと気づいたのでしょう。引き下がったことで、トランプ大統領の利下げの念願が叶うかもしれません。市場は今や景気後退リスクを注視しており、年末までに3-4回の利下げを織り込んでいます6

米国の成長が鈍化した場合、パウエル議長に矛先が向いても驚きはありませんが、それは政策というよりは、政治的な問題でしょう。
 

市場が関税について明確化を求める中、貿易協議が続く

貿易交渉について中国との合意は可能、とのベッセント財務長官のコメントを受け、市場はさらに活気づきました。しかしその直後、ベッセント財務長官は合意には何年もかかるだろうと述べました。その後先週ベッセント財務長官から出されたコメントからは、まもなく韓国との「基本合意」に至る可能性が示唆されました。

これらは貿易関連では明るい方の見出しですが、最終的な関税率がどこに落ち着くかは依然として不透明です。分かっているのは、関税率が2024年の2.3%より1桁高いこと7、そして貿易政策をめぐる不確実性がかつてないほど高まっていることです8。そのことが、米国の景況感を減退させています。
 

DOGEによる取組みは終わったのか?マスク氏が退任を表明

イーロン・マスク氏は、テスラ社により多くの時間を割くため、近々DOGEから退くことを発表しました。DOGE自身の試算によれば、DOGEチームは約1600億ドルを節約したとのことですが9、これは当初の目標のほんの一部であり、また6兆8000億ドルの連邦予算からすると、ごくわずかな削減に過ぎません10。解雇や歳出削減が長期的に政府部門にどのような影響を及ぼすかは、今後数ヶ月で明らかになるでしょう。しかし、政府部門の削減や混乱についての不透明感が薄れたことは、市場からプラスに受け止められました。
 

米国の成長率見通しは引き下げられたが、ハードデータは持ちこたえている

先週IMFは、米国の関税ショックとそれに続く不確実性に言及し、世界の成長率見通しを下方修正しました11。不確実性が景気に打撃を与えるにつれ、消費者心理や企業の信頼感に関する指標は急速に低下しています1

しかし、ハードデータは持ちこたえています。2週間前に好調な米小売売上高が発表されましたが、先週は、耐久財受注が前月比で予想の2.0%増に対し、9.2%増となりました12

家計や企業が、関税が本格的に発動される前の取引を急ぐことから、米国の経済活動が予想を上回るのも当然です。このような需要の前倒しは、米国の景気後退が起こるかどうか、また起こるとすればいつかという判断を難しくしています。

現段階では、これを景気後退というより「バイブセッション(実際の経済状況は良好でも心理的に悲観的となる「心理不況」)」と捉えた方が良いかもしれません。
 

FRBよりもECBとBOEにとってやりやすい方向に

トランプ大統領はFRBに対してより早期の利下げ実施を望んでいますが、彼の政策はむしろ、他の中央銀行がより早期に利下げを行う環境を提供していると言えます。

イングランド銀行(BOE)金融政策委員のメーガン・グリーン氏は先週、「(英国にとって)関税は、インフレリスクというよりもむしろディスインフレリスクとして働いている」とコメントしました。市場は現在、BOEによる4回の利下げを織り込みつつあります13。4回の利下げはほぼ妥当と思われ、実現すれば、住宅ローン金利の低下につながるはずです。住宅ローン金利が低下すれば、英国の家計の懐にも余裕が出て、支出の後押しとなるでしょう。

今回のサイクルでは欧州中央銀行(ECB)が利下げを主導しており、それが消費者信頼感と小売売上高の改善に寄与し始めています。欧州の国内活動は改善しつつあり、それが欧州株式市場のパフォーマンス向上にも反映されています。
 

市場タイミングを計るよりも市場に留まることの重要性

2025年4月16日までの3週間で、投資家は株式の投資信託とETFから470億ドル、債券の投資信託とETFから500億ドルを引き揚げました14。このように、株式と債券から同時に資金が退避するのは異例であり、米ドル資産を取り巻く不安を浮き彫りにしています。

残念ながら、4月9日以前に株式ファンドから資金を引き揚げた投資家は、S&P500種株価指数の過去3番目に良い日を逃してしまいました15。長期投資家にとって、市場タイミングを計るよりも市場に留まることの重要性を再認識させる出来事です。

また投資家の皆様には、先週末までに、米10年物国債利回りが過去2年間の平均に近づいたことをお知らせしておきたいと思います16
 

株価は上昇したものの、相対的なトレンドには変化なし

世界の株式市場は、先週の米政権の軟化したトーンを受けて上昇しました17。米国株式市場はアウトパフォームし18、米ドルは下落分をいくらか回復しましたが19、私たちはこれが「米国例外主義」のシナリオへの回帰を意味するものではないと考えています。

米国資産は15年以上にわたって優位な立場を享受してきましたが、そのバリュエーション・プレミアムを正当化するのは今や難しくなっています。

米国外の投資家が慌てて資金を退避させることはないにしても、ポンド、ユーロ、フラン、円などが欧州、アジア、そしておそらく英国を含む米国外の市場に活路を見出すことになるだろうと私たちは考えています。

今こそ改めて、分散投資の重要性を思い出す時です。最後に、最近の株価の動きを見ていると、市場はジェットコースターの様相を呈してはいるものの、それに乗り続けるだけの理由もあるということが分かります。

まさに、慌ただしい市場展開です!
 

注目の日程

 

指標等

内容

月曜日

カナダ総選挙

世論調査によれば、マーク・カーニー現首相率いる与党の勝利が有力視されている

水曜日

米国個人消費支出(PCE)
価格指数

FRBが選好するインフレ指標。コンセンサス予想では前年同月比2.2%増となっている20。この予想を上回った場合、FRBが今年どのように政策金利を調整するかが問題となる

水曜日

マイクロソフト、メタ、アマゾン、アップルが第1四半期決算を
発表

 

今年に入ってAIのシナリオは疑問視されており、業績に関する情報やガイダンスが得られれば、投資家にとって、変化するシナリオに対してこれらの銘柄がどの程度脆弱か理解するのに役立つ

木曜日

米国供給管理協会(ISM)調査

これらの調査から、企業が現在の状況をどう見ているのか、また今後数ヶ月の間に需要環境がどう展開し得るのかについてさらなる示唆が得られる

木曜日

日銀金融政策決定

今回会合で日銀は政策金利を据え置くと予想されるが、会合後のコメントで次の動きが多少明らかになる可能性

金曜日

米国非農業部門雇用者数

最新の米雇用統計から、労働市場が減速しているか、またそのペースについての示唆が得られる。FRBは労働市場を注視しており、軟化が見られれば、より早期の、より急速な利下げが示唆される可能性

  • 1.

    出所:ミシガン大学、2025年4月、消費者が経済、パーソナルファイナンス、景況、購買環境についてどのように感じているかを測定。直近の指数は52.2、過去5年間の平均は69.3。『Chief Executive Magazine』、2025年4月版は、CEOの1年後の経済に対する信頼度を測定。最新の指数は10点満点中5点、過去5年間の平均は7.27。

  • 2.

    出所:国際通貨基金、「世界経済見通し」、2025年4月、成長率予測は3.3%から2.8%に下方修正。

  • 3.

    出所:ブルームバーグL.P.、2025年4月24日、S&P500種指数のパフォーマンスに基づく

  • 4.

    出所:ブルームバーグL.P.、2025年4月21日、各指標の1日のパフォーマンス:S&P500種指数(-2.39%)、ブルームバーグ米国債指数(-0.39%)、ブルームバーグ米ドル指数(-0.70%)に基づく

  • 5.

    出所:ブルームバーグL.P.、“Trump says he has no intention of firing Fed chief Powell”、2025年4月22日

  • 6.

    出所:ブルームバーグL.P.、2025年4月24日、フェドファンド・インプライドレート(理論先物金利)に基づく

  • 7.

    出所:世界貿易機関

  • 8.

    出所:ベーカー、ブルーム&デービス米国貿易政策不確実性指数より

  • 9.

    出所:米政府効率化省(DOGE)

  • 10.

    出所:2024年米連邦予算

  • 11.

    出所:国際通貨基金、“The Global Economy Enters a New Era”、2025年4月22日

  • 12.

    出所:米国国勢調査局、2025 年 3 月 31 日

  • 13.

    出所:ブルームバーグL.P.、2025 年 4 月 24 日、オーバーナイト・インデックス・スワップに基づく

  • 14.

    出所:米国投資会社協会(ICI)、2025 年 4 月 16 日、週間ファンドフローは、投資信託およびETF資産の98%以上をカバーする報告に基づく、業界合計の推定値

  • 15.

    出所:ブルームバーグL.P.、2025 年 4 月 24 日

  • 16.

    出所:ブルームバーグL.P.、2025年4月24日、2023年4月24日から2025年4月24日までの平均米10年物国債利回りは4.20%だった

  • 17.

    出所:ブルームバーグL.P.、2025年4月25日、2025年4月25日に終わった週のMSCIオール・カントリー・ワールド・インデックスのリターン(4.02%)に基づく

  • 18.

    出所:ブルームバーグL.P.、2025年4月25日、S&P500指数とMSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス(米国を除く)のリターンに基づく。S&P 500種指数のリターンは7.12%、MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス(米国を除く)のリターンは2.26%だった

  • 19.

    出所:ブルームバーグL.P.、2025年4月25日、米ドルの価値を貿易加重された通貨バスケットに対して測定する米ドル指数に基づく。米ドルは2025年4月25日に終わった週に0.24%上昇した

  • 20.

    出所:ブルームバーグL.P.、2025年4月25日

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