9月FOMC:利下げ再開。市場想定よりタカ派姿勢

要旨
9月FOMC:0.25%幅で利下げを再開
9月16~17日に開催されたFOMC(米連邦公開市場委員会)では、金融市場の想定通り、政策金利であるFF金利の誘導目標レンジが25bp(=0.25%)引き下げられ、4.00~4.25%に設定されました。FOMC声明文とともに公表された経済・金利見通しでは、2025年内にあと2回の利下げが実施されるとの見方が示されました(FOMC参加者の中央値ベース)。この点は、FOMCの年内追加利下げ見通しについて1回との見方が多かった金融市場においてややハト派サプライズと受けとめられました。
FRBの金融政策運営は今後もデータ次第に
しかし、パウエル議長による記者会見が進むにつれて、FRBが声明文・FOMC参加者見通しでみせたややハト派の印象は大きく変化しました。パウエル氏が、米国経済がインフレと雇用の両面でリスクに直面しているとしたうえで、今回の利下げが「リスク管理的な」利下げであると述べたことで、金融市場はFRBの姿勢がそれほどハト派的ではないと受け止めることになりました。パウエル氏が今後の利下げに対して積極的な発言をしなかったのは、FOMC内の意見が大きく分かれていることが背景にあったと思われます。
FOMC参加者による短期の景気見通しはかなり楽観的
私自身は、今回公表されたFOMC参加者による2025年の景気見通しがいつも以上に楽観的であると考えており、年内に2回の追加利下げが実施されるとの見方を維持したいと思います。
9月FOMC:0.25%幅で利下げを再開
9月16~17日に開催されたFOMC(米連邦公開市場委員会)では、金融市場の想定通り、政策金利であるFF金利の誘導目標レンジが25bp(=0.25%)引き下げられ、4.00~4.25%に設定されました。これは、2024年12月のFOMC以来の利下げとなります。パウエルFRB(連邦準備理事会)議長は、FOMC後の記者会見において、7月、8月分の雇用統計で非農業部門雇用者数の増加数が大きく減速したことや、雇用者増加数が過去分にもさかのぼって下方修正されたことを挙げ、労働市場のダウンサイドリスクに対応する必要性から今回の利下げが実施されたと説明しました。FOMC声明文とともに公表された経済・金利見通しでは、2025年内にあと2回の利下げが実施されるとの見方が示されました(FOMC参加者の中央値ベース)(図表1)。この点は、FOMCの年内追加利下げ見通しについて1回との見方が多かった金融市場においてややハト派サプライズと受けとめられました。声明文・FOMC参加者見通しの公表直後の米国金融市場では、一時的な株高、債券高、ドル安の動きが生じました。

FRBの金融政策運営は今後もデータ次第に
しかし、パウエル議長による記者会見が進むにつれて、FRBが声明文・FOMC参加者見通しでみせたややハト派の印象は大きく変化しました。パウエル氏は、米国経済が依然としてインフレと雇用の両面でリスクに直面しているとの見方を明らかにしました。これは、雇用の減速が明らかになってきている点はリスクであるものの、追加関税に伴うインフレ圧力が長めのインフレにつながるリスクもなお重要であるという発言です。パウエル議長が、今回の利下げが「リスク管理的な」利下げであると述べたことと合わせると、FRBが、「景気の悪化に直面して次々と利下げを実施する」状況に置かれているわけではないことがうかがわれます。これらの発言を受けて、金融市場では、株安・債券安・ドル高という、それまでとは逆方向の動きとなりました。金利先物市場において織り込まれる2025年内の利下げ回数には前日比での大きな変化はありませんでしたが、2026年末まで織り込まれる利下げ回数は前日と比べてむしろやや減少しました(図表2)。

パウエル氏が今後の利下げに対して積極的な発言をしなかったのは、FOMC内の意見が大きく分かれていることが背景にあったと思われます。記者会見でのパウエル氏は、議長としてFOMC内での議論の最大公約数的な考え方を表明する役割を担うことになりますが、今回記者会見でそうすることは従前にも増して困難であったとみられます。というのは、FOMC参加者が示した政策金利見通しの分布をみると、19名の参加者のうち、2025年内に追加利下げを2回見通している参加者数が9名であったのに対して、利下げなしを想定する参加者は7名に達していました(利上げを想定する1名を含む)(図表3)。2026年末までの見通しに関しては、コンセンサスが全くない状況です(図表3)。FRBによる今後の金融政策運営はこれまで以上にデータ次第になると言えそうです。

FOMC参加者による短期の景気見通しはかなり楽観的
私自身は、今回公表されたFOMC参加者による2025年の景気見通しがいつも以上に楽観的であると感じています。今回のFOMC参加者による2025年10-12月期の実質GDP成長率についての見通しは前年同期比1.6%(図表1)でしたが、これは、2025年7-9月期と10-12月期の前期比年率での成長率が共に1.9%であるとした場合に可能となる水準です。今後、追加関税措置のインフレへの影響が徐々に強まる中で、7-9月期の米国経済はいったん減速すると見込まれますが、今回のFOMC参加者の見通しではそのような減速は想定されていないようです。
2025年10-12月期のPCEデフレーターの上昇率については3.0%と見込まれていますが、この水準は、追加関税によるコストの大半を企業が負担するという前提でなければ達成できないように思えます。しかし、企業がそのコストの大半を負担するのであれば、企業収益を通じた悪影響が景気にも及ぶはずです。これらを踏まえると、今回のFOMC参加者の経済見通しは過度に楽観的であり、それが実現しない場合という前提に立ち、10月、12月のFOMCでの連続追加利下げが実施されるとの見方を維持したいと思います。
MC2025-098