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インベスコ グローバル・ソブリン・アセット・マネジメント・スタディ2021

はじめに

第9回目となるインベスコ グローバル・ソブリン・アセット・マネジメント・スタディでは、82のソブリン・ファンドと59の中央銀行における、141名の投資責任者、資産クラスの責任者もしくはシニア・ポートフォリオ・ストラテジストを対象に調査を行いました。調査対象となった運用資産総額は19兆米ドルに上ります。
インベスコ グローバル・ソブリン・アセット・マネジメント・スタディ

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英語版および日本語要約版の資料をご用意しております。
●(英語版)Invesco Global Sovereign Asset Management Study 2021
●(日本語要約版)Invesco Global Sovereign Asset Management Study 2021
インベスコ グローバル・ソブリン・アセット・マネジメント・スタディの発行は2013年に始まり、今回で9回目となります。今回の調査は、2021年1月から3月の間に実施されました。過去の調査における長期的な傾向の分析、新たに発掘した洞察などから得られた知見を基に、以下の5つの主要テーマを設定し、ヒアリングを行いました。
 
今年の調査では、新型コロナウイルスの感染拡大が事業オペレーションと投資戦略の双方に影響を与えていることを踏まえ、コロナ禍の影響を中心に分析しました。これには、危機に対応して行われた調整や、流動性の低いプライベート・マーケットへの配分の増加や中国への関心など、長期的なトレンドへの影響の調査が含まれます。
テーマ1では、資産配分と流動性に焦点を当てています。財政難に直面している政府は、財政赤字の穴埋めのために政府系ファンドなどのソブリン投資家に注目しました。一部のソブリン投資家は十分な体制がとられていましたが、一部のソブリン投資家は流動性の確保のために迅速な対応にせまられました。その他、金利の急速な低下がポートフォリオにどのように影響し、債券から株式や流動性の低いプライベート・マーケットに資金を移動させたかについても見ていきます。
テーマ2では、新型コロナウイルスにより従来の構造的かつ環境への課題が浮き彫りになる中でのESG投資への注目の高まりを取り上げます。中央銀行は、気候変動を考慮してESG投資を大幅に増やしており、ESGへのシフトは急速に進んでいます。また、魅力的な投資リターンをもたらす投資機会に支えられて環境へ好ましい影響を与えることを望むソブリン投資家もESG投資に注目しています。
テーマ3では、中国の投資魅力の高まりを検証します。テクノロジーなどの分野におけるイノベーションや、インフラストラクチャーなどの分野における外国資本の呼び込みに後押しされ、中国へのアクセスは改善し、魅力的なリターンの機会が増加していることは、注目すべき点です。一方で、政治的緊張は引き続き障害となっており、過去2年間でより深刻になっていると考えられます。
テーマ4では、一部の地域やセクターで新型コロナウイルスの影響を過度に受けている資産クラスの不動産を取り上げます。現在の市況を購入機会として着目している長期の投資期間をもつ多くのソブリン投資家は、短期的な不確実性に備え、しばしば大胆な投資行動をとりました。ソブリン投資家は、安定した規制環境を有する成熟市場と、パンデミックの影響が小さい産業施設(物流倉庫)と住宅セクターに着目しています。
テーマ5は、中央銀行の準備資産の管理における継続的な変化です。中央銀行がリスクについて考慮する方法に構造的な変化が見られており、単一の資産ではなくポートフォリオベースでリスクを評価するようになっています。これにより、従来とは異なる「リスク資産」の活用が増え、リターンの向上と同時に分散投資によるリスクの低下が見られるようになりました。
これまでと同様、今年の調査の主要テーマが皆さまのお役に立てれば幸いです。
主な指標
投資期間

ソブリン投資家の投資期間は、2020年9.4年から2021年9.7年と、引き続き長期化の傾向にあります。これは、主に新型コロナウイルスにより生じた市場の混乱のため、投資ソブリン、債務ソブリンおよび開発ソブリンの投資期間が長期化したことを反映するものです。一方で、パンデミックの対応に資金を提供したために保有資産が減少した流動性ソブリンの投資期間は2.9年と、ほぼ変化はありませんでした。

図A 2017年から2021年までの投資期間の推移(年)
パフォーマンス

厳しい市場環境にもかかわらず、2020年のパフォーマンスは前年に続き良好でした。ソブリン投資家の2020年のリターンの平均値は7.3%と、前年の平均値の7.6%からわずかながら低下しました。

投資家セグメント別では、前年はセグメント間で差が見られましたが、2020年はほぼ同水準となりました。開発ソブリンと流動性ソブリンのリターンの平均値はそれぞれ前年から0.6%、1.2%上昇し、特に流動性ソブリンは債券利回りの低下により資本が増価しました。一方で、投資ソブリンと債務ソブリンのリターンの平均値は、それぞれ1.0%と0.8%低下しました。

図B 2016年から2020年までの投資家セグメント別の年間実績リターン(%)
資産配分

債券への配分は、前年の34%から2021年は29%に減少しました。これは、金利の低下を受けたソブリン投資家が、他の資産でのリターンの確保を目指したためです。一方、株式は、2020年1-3月期に市場の急落を経験しましたが、その後力強い反発を示しました。その結果、ソブリン投資家の株式への配分は、2020年の26%から2021年は28%に上昇しました。

過去12カ月間、ソブリン投資家は、ポートフォリオの流動性を維持し、将来の資金の引き出しに備えましたため、現金資産の配分は2020年の4%から9%に増加しました。また、2015年から配分が増加していた流動性の低いオルタナティブ資産は、2021年は初めて減少しました。

図C 2015年から2021年の資産配分の動向(%)
図D 2014年から2020年のオルタナティブ投資への資産配分の動向(%)
各テーマの詳細については下記から各テーマをお選びいただき、ご確認ください。
新型コロナウイルス感染症により流動性が焦点に

テーマ1

新型コロナウイルス感染症により流動性が焦点に。資金引き出しにより保有資産が減少し、現金資産が倍増

新型コロナウイルスの世界的な大流行(パンデミック)により、当面の資金引き出しニーズと将来の投資機会を捉えるため、流動性が焦点になりました。低利回り環境とインフレ懸念を背景に債券への資産配分が削減され、株式とプライベート資産が増加しました。また、バリュエーションへの懸念はあるものの、アクティブ戦略の活用の増加や投資期間の長期化によってそれが一部低減する形で株式配分は増加しています。

パンデミックによりESG投資の採用が進み、インパクト投資の重要性が増す

テーマ2

パンデミックによりESG投資の採用が進み、インパクト投資の重要性が増す

新型コロナウイルスにより、特に中央銀行の間でESGへの注目が高まっています。気候変動は市場価格に完全には織り込まれていないとの見方が一般的となり、それによりESGインテグレーションの目的が投資リターンの改善へと変化しました。特に開発ソブリンの間でインパクト投資への関心が高まっていますが、規模があり投資可能な機会を見つけることが課題として残っています。

地政学的リスクは残るものの、 新型コロナウイルス感染症の収束と共に中国への投資を再開

テーマ3

地政学的リスクは残るものの、 新型コロナウイルス感染症の収束と共に中国への投資を再開

魅力的な内需によるリターンと多様な投資機会に支えられ、中国の投資妙味は過去4年間で着実に高まっています。ソブリン投資家は、中国の経済的重要性の高まりと、株価指数と債券指数における中国採用の増加に着目しています。一方で、政治的リスクはますます大きな課題となっており、ソブリン投資家は投資に対する重要な障害として米国との政治的緊張の高まりを指摘しています。

不動産は依然として堅調であり、気候変動リスクが最大の懸念事項

テーマ4

不動産は依然として堅調であり、気候変動リスクが最大の懸念事項

ソブリン投資家は引き続き不動産を大きな投資機会を見出しており、北米と欧州先進国がその投資地域として注目されています。投資機会は不動産タイプによって異なっており、産業施設(物流倉庫)、住居、データセンターが最も魅力的な利回りを提供すると見なされています。また、気候変動はポートフォリオに対する最も重要なリスクと見なされており、ソブリン投資家は不動産の評価とデューデリジェンスの際に気候リスクの考慮を強めています。

中央銀行の準備金は大幅に増加 その分散化について流動性準備金とともにリスク資産に注目

テーマ5

中央銀行の準備金は大幅に増加 その分散化について流動性準備金とともにリスク資産に注目

新型コロナウイルスによりリスクに関する議論が高まり、準備金が増加し、流動性資産への配分が増加しました。中央銀行は、単一資産レベルのリスクからポートフォリオ・レベルでのリスクを注視するようになっており、非伝統的な「リスク資産」への配分はポートフォリオ・レベルのリスクを低下させると認識されています。株式の重要性は高まり続けていますが、広範なインデックスやETFという最も流動性の高い選択肢が注目されています。また、米ドルからの資金移動が続いており、その主な受益者は中国人民元となっています。

当資料は、一般もしくは個人投資家向けに作成されたものではなく、機関投資家向けのものとなります。情報提供を目的として、インベスコ・アセット・マネジメント株式会社(以下、「弊社」といいます。)が、英文でリリースされた”Invesco Global Sovereign Asset Management Study 2021”を解説するために作成された英語コンテンツの一部を翻訳して作成したものであり、法令に基づく開示書類でも投資勧誘を目的としたものでもありません。翻訳(または抄訳)には正確を期していますが、必ずしも完全性を保証するものではありません。また、抄訳の場合には、原資料の趣旨を必ずしもすべて反映した内容になっていない場合があります。また、公表されたデータ等に基づいて作成されたものですが、過去から将来にわたって、その正確性、完全性を保証するものではありません。
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