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欧州バンクローン市場、月次アップデート 2022年5月

欧州バンクローン市場、月次アップデート 2022年5月
2022年4月の欧州バンクローン市場は、相対的に高く安定したインカムがプラスに寄与したものの、月間トータル・リターンは▲0.13%となりました1

Credit Suisse Western European Leveraged Loan Index(以下「CS WELLI」または「指数」)の2022年4月のトータル・リターンは▲0.13%となり、内訳は価格変動が▲0.46%、金利収入が+0.33%でした1

投資家は依然として、ウクライナ紛争、各国中央銀行の金融引き締め、経済成長の世界的な鈍化などを注視しています。ユーロ圏のインフレ率は7.5%と高止まりし、2022年1−3月期のGDP成長率は+0.2%となりました(米国は▲1.4%。予想は+1.1%) 。

経済成長への懸念が高まり、当月の株式市場は軟調に推移しました。ストックス欧州600指数のリターンは▲1.2% (年初来で約▲8%)、S&P500指数は▲8.8%となりました2。欧州ハイ・イールド債券市場は、欧州中央銀行(ECB)が早ければ7月にも利上げを行うとの観測を受け、年初来で約▲8%のリターンとなりました3

欧州バンクローンの新規発行活動は4月に再開されたものの、新規発行額は約50億ユーロとなり、ウクライナ紛争勃発前の1月の半分程度の発行額に留まりました。新規発行の取引スプレッドは、BB格/B格の場合でEURIBOR+450bp〜498bp程度となり、年初の水準と比較すると約75bp〜100bps拡大しました。

バンクローンの発行体は新規発行を再開しているため、今後は新規発行額が徐々に増加すると思われます。足元ではいくつかの大口案件がプレマーケティングされていますが、新規発行の本格な再開は地政学的リスクが後退するタイミングに左右されると思われます。

CLOの新規発行は4月も継続しましたが、発行額は低調となりました。4月の新規CLO発行額は16億ユーロとなり、前年同月の約半分となりました。CLO(AAA格)の新規発行スプレッドは、市場でのボラティリティ上昇が見られたものの、115bp程度で落ち着きました。このスプレッド水準は、新たにウェアハウスを設定した運用会社にとって、ローン価格が低下したことで魅力的な裁定機会となっています。

4月末のCS WELLI の額面価格合計(市場規模)は約4,030億ユーロとなり、年初来で4%増加しましたが、3月末と比べ増減はありませんでした1

リターン

4月のCS WELLIのセクター別リターンは、原油価格が1バレルあたり100ドルを超えたため、エネルギーが+1.02% と最も高いリターンとなりました。次に高いリターンとなったのは、商品価格上昇の恩恵を受けた金属/鉱業の+0.46%となりました。最も低いリターンとなったのは、不動産の▲0.79%、林産品/パッケージングの▲0.68%でした 1

格付け別では、4月は「BB」格が+0.16%と最も高く、「B」格が▲0.13%1、「CCC」格が最も低い▲2.30%となりました1

4月末におけるCS WELLI構成銘柄の平均価格は、前月末比0.41ユーロ下落し、96.80ユーロでした1。CS WELLIの3年ディスカウント・マージンは4.77%で、前月末比14bps上昇しました1

4月のクレディ・スイス欧州ハイ・イールド債券(Credit Suisse Western European High Yield)指数は▲2.82%のリターン(年初来では▲8.11%)となり、スプレッド・トゥ・ワーストは4.80%でした3

ファンダメンタルズ

4月のユーロ圏総合購買担当者景気指数(PMI)は、速報値からの修正はなく55.8となりました。新型コロナウイルスに関連する規制が緩和される中、サービス部門の回復が続いていることが明らかになりました。一方、製造業の減速やインフレが高止まりする懸念があり、オミクロン株の影響からの回復が一旦終わると今後の経済成長を妨げる可能性が高いと思われます。ロシア産天然ガスの輸入禁止は、特にドイツとイタリアにとって、経済活動に対する下振れリスクとなっています。

  • サービス業の景況感は今のところ高水準で推移しています。4月のサービス業PMIは、ユーロ圏の上位4カ国すべてで上昇し、イタリア(55.7、+3.6ポイント)とスペイン(57.1、+3.7ポイント)でより大きく上昇しました。3月の業種PMIでは、消費者向けサービス、特に接客業が大幅に上昇するなど、コロナ禍後の経済再開への楽観が見られ、また、企業向けサービスも持ちこたえました。しかしながら、サービス業PMIは、足元の消費者心理の落ち込みとは対照的になっています。エネルギー価格高騰に伴う家計の可処分所得減少からくる影響に対して、サービス業がどの程度耐えられるかがが注目されています。 
  • 中国の都市封鎖による影響は今後数カ月以内に明らかになると思われますが、生産水準のデータは入り混じった内容を示唆しています。製造業の状況は国によって異なっており、生産高はドイツ(47.7、▲5.2ポイント)は大きな打撃を受けましたが、フランス(51.8、+0.7ポイント)では改善しました。同様に、需要もドイツ(48.8、▲5.2ポイント)は大きく落ち込みましたが、フランス(53.0、+1.9ポイント)とスペイン(49.6、+2.1ポイント)では新規受注が増加しました。これはウクライナ紛争の影響に偏りがあるためで、ドイツが最も大きな影響を受けていることを示しています。供給側では、納期が3月に比べて改善(26.3、+0.4ポイント)したものの、中国での新たな都市封鎖が行われたことにより、今後数カ月は再び供給側にマイナスの影響を与える可能性があります。このように経済成長に対する阻害要因が多いため、製造業の見通しは厳しいと思われます。

ユーロ圏の2022年1−3月期のGDP成長率が+0.2%と低調だったことは、堅調なPMIが堅調なな経済成長に直結しない事例の一つと言えます。家計の可処分所得の低下、エネルギー価格の上昇(インフレ圧力の高まり)、ウクライナ紛争による供給混乱を背景とした製造業の不振、中国での都市封鎖による輸出需要の減少、金融引き締めによる内需圧迫などといった数々のマイナス要因があるため、2022年4−6月期以降の4四半期のGDP成長率は、低位に推移すると予測されます。

3月のユーロ圏のインフレ率は前年同月比+7.5%となり、2月の+5.9%から上昇しました。エネルギー(+44.7%、前月の数値から12.7ポイント上昇)と食品・アルコール・タバコ(+5%、同0.8ポイント上昇)が原因です。コア・インフレ率は前年比+3%(同0.3ポイント上昇)と小幅上昇に留まりました。

EU各国がロシア・ルーブルでの天然ガス代金の決済を拒否したため、ロシアから欧州への原油・天然ガスの供給に大きな支障が生じる可能性が高まりました。ポーランドとブルガリア(ロシア・ルーブルでの決済を拒否)は、4月末にロシアからの天然ガス供給が停止されたことを発表しました。これは、ロシアがEU各国に対し、ロシア・ルーブルでの決済を履行することを真摯に求めている警告だと考えられています。こうした動きにより、欧州の天然ガス価格は上昇しました。他の主要なロシア産天然ガスの輸入国(ドイツ、オーストリア、イタリア、フィンランドなど)に対するガス供給は、今のところ中断されていません。

4月末現在、S&P欧州レバレッジド・ローン指数における過去12カ月のデフォルト率(額面ベース)は0.91%でした4。過去平均は年3.13%です4

指数のトータルリターン(%)

脚注

  • 1

    Credit Suisse Western European Leveraged Loan Index (CS WELLI)、ユーロ建てヘッジ付き、2022年4月30日現在。過去の実績は将来の成果を保証するものではありません。指数に直接投資することはできません。

  • 2

    ストックス欧州600指数およびS&P500指数は、2022年4月30日現在。

  • 3

    Credit Suisse Western European High Yield Indexはユーロ建て、2022年4月30日現在。

  • 4

    S&P European Leveraged Loan Index。過去の平均デフォルト率は、2007年6月1日から2022年4月30日までを対象に集計しています。

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