欧州バンクローン市場、月次アップデート 2025年5月
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2025年4月の欧州バンクローン市場は、相対的に高く安定したインカムがプラスに寄与した一方、月間トータル・リターンは▲0.28%となりました。
S&P UBS Western European Leveraged Loan Index (以下「S&P UBS WELLI」または「指数」)の2025年4月のトータル・リターンは▲0.28%となり、内訳は価格変動が▲0.85%1、金利収入が+0.57%となりました。なお、年初来のトータル・リターンは+0.71%となりました。
4月は不安定な展開となりました。トランプ米大統領は4月2日を解放の日と呼び、すべての輸入品に10%の基本関税を課し、さらに国別追加関税を導入することを発表しました。それを受けて世界の金融市場が急落し、米国のS&P500指数も10%以上下落しました2。欧州バンクローン市場も例外ではなく、平均価格は数ポイント下落しました1。 また、バンクローンの新規発行が延期され、CLOの新規発行も月後半に市場が再開するまで約2週間停止しました。
その後、米国と各国との関税交渉が進むにつれて金融市場は反発し、4月末時点のS&P500指数は、解放の日の終値を1%下回る程度まで戻りました2。欧州バンクローン市場の月間のトータル・リターンは▲0.28%となって指数構成銘柄の平均価格は96.94から96.37に低下しましたが、95前後の安値からは回復しました1。パフォーミングローンの価格はパー近くまで戻った一方で、クレジットの質が低いローンとの価格差は広がりました。
4月の新規発行額は約35億ユーロと低調な展開で、約115億ユーロの新規発行額となった2025年1-3月期の月間平均に比べて大幅に減少しました2。新規発行は関税の影響を受けにくい発行体が中心となり、例えば、エコノミーホテルを運営するモーテル・ワンによる9億700万ユーロのタームローンB(EURIBOR+425bp、99.75(OID)、B3/B-)の新規発行(注:当初ガイダンスでは、EURIBOR+450bp、99.00(OID)の発行条件)などが見られました。
新規発行ローンへの需要が高いことから、ローンの新規発行は4月の低水準から幾分戻ってくると思われますが、スポンサーは企業のIPOや売却を延期しており、M&A活動がほとんど見られなくなっています。米国の経済政策と関税導入の影響に対する不確実性が高まり、バンクローンの新規発行額は当面2025年1-3月期の平均を下回る可能性が高いと思われます。
CLOの新規発行は2025年に入っても過去最高ペースで推移していましたが、足元ではバンクローンと同様に減速しています。CLOノート(AAA格)の利回りは、2025年1-3月期はEURIBOR+116bp前後で推移しましたが、4月にEURIBOR+140bp程度まで上昇しました。4月中に組成された新規CLOはわずか3件(2025年1-3月期は月平均12件以上の新規発行)で、5月以降はバンクローン市場の戻りに合わせてスプレッドが縮小すると思われるものの、これまでのスプレッドの拡大やバンクローンの新規発行の減速などで、CLOの新規発行はしばらく低調に推移すると思われます。

リターン:2025年4月
- 4月のS&P UBS WELLIのセクター別リターンではメディア・通信が+0.38%と最も高いパフォ-マンスとなり、続いてエネルギーの+0.20%、金融の+0.13%となりました1。また、マイナスリターンになったセクターでは、耐久消費財の▲2.36%が最も低いパフォ-マンスとなり、続いて食品・製薬及び化学の▲1.52%となりました1。
- 4月のS&P UBS WELLIの格付別リターンでは、「BB」格が▲0.12%と最も高く、「B」格が▲0.19%、「CCC」格が最も低い▲0.47%となりました1。プラスリターンとなった格付はありませんでした。
- 4月末におけるS&P UBS WELLI 構成銘柄の平均価格は、前月末比で0.57ユーロ下落し、96.37ユーロとなりました1。CS WELLIの3年ディスカウント・マージンは5.05%となり、前月末比で0.11%拡大しました1。
ファンダメンタルズ
- 解放の日に発表された米国の相互関税は市場予想を大きく上回り、金融市場に大きなダメージを与えました。S&P500指数の2日間での下げ幅は、第二次大戦以降で見て5番目の大きさとなりました。また、米30年債利回りは取引時間中に5%を超えて上昇し、VIX指数の終値も50を超えました(注:リーマンショックおよびコロナショック以来の高水準)4。各国が報復関税に踏み切るとの懸念から、米国の景気後退の可能性が高まりましたが、その後にトランプ米大統領が90日間の関税の賦課延期を発表して関係閣僚が各国との交渉を開始したことで、金融市場の懸念はやや緩和されました。関税以外では、下記のような状況が見られました。
- 4月のユーロ圏総合購買担当者景気指数(PMI、改定値)は、速報値の50.1(予想50.2)から50.4に上方修正されました。速報値で大きく低下した生産高予想も、1.6ポイント上方修正されました。また、改定値は、サービス及び製造セクターの改善により、フランス(47.8)とドイツ(50.1)が小幅に上方修正されました(注:PMIが50以上の場合、景気拡大を示唆)。
- 2025年1-3月期のユーロ圏GDP速報値は前期比1.4%増となり、市場予想の0.8%増を上回りました。各国のGDP(年率換算)は、ドイツが+0.8%、フランス+0.5%、イタリア+1.0%となりました。一方、スペインは+2.3%と、引き続き他国を上回りました。
- 欧州中央銀行(ECB)は、4月17日に行われた定例理事会で政策金利を2.25%に引き下げ、また、ユーロ圏経済の下振れリスクを示唆しました。
- 4月末現在、モーニングスター欧州レバレッジドローン指数における過去12カ月のデフォルト率(額面ベース)は0.29%でした5。過去平均は年率2.73%となりました5。
投資機会
経済の安定と資金調達コストの低下はクレジット市場にプラスの影響を与えますが、米国の関税政策は短期的には市場に不確実性をもたらします。バンクローンは高いリスク調整後リターンを提供してきており、今後もその傾向は継続すると思われます(図2) 。


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