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【グローバル債券投資戦略】「グローバル・フィックスト・インカム・ストラテジー 2025年5月」
インベスコ・フィックスト・インカム(IFI)がマクロ経済動向、米国および主要国の金利・為替見通し、債券市場における主要な投資テーマなどについての見方をご提供いたします。
インベスコの債券運用部門であるインベスコ・フィックスト・インカム(IFI)より「グローバル・フィックスト・インカム・ストラテジー 2023年9月号」が発行されました。
連邦準備制度理事会(FRB)は直近の会合で利上げを見送りましたが、将来の調整に関しては比較的タカ派的な姿勢を取りました。当レポートでは、「ソフトランディングは視野に入るものの、成長加速は遠のく」と題して、先行きのマクロ環境についての見方を考察します。
また、米国および主要国の金利見通しに触れています。特に米国では、低成長、ディスインフレの環境にあると引き続き考えており、利回りの上昇幅は限定的で、現在の水準では引き続きオーバーウェイトとしています。為替見通しについては、米ドルに対しポジティブな見方をしており、先進国以外の通貨に対してもポジティブであるとの見方を拡げています。
この他、米国地方債が魅力的である5つの理由や、米国投資適格社債市場の現状と今後の見通しなど幅広い内容が含まれています。
米連邦準備制度理事会(FRB)は直近の会合で利上げを見送りましたが、将来の調整に関しては比較的タカ派的な姿勢を取りました。このタカ派的なセンチメントは、2023年末までの利上げの可能性を指摘した経済予測サマリー(SEP)に象徴されています。しかし、FRBの声明文を詳細に検討すると、今後は経済データに依存したアプローチをとるという姿勢が明らかになっています。ここで注目すべきは、将来の金利に関するFRB内部の予想レンジが広がっていることで、連邦公開市場委員会(FOMC)内での見解のばらつきが拡大していることを示唆しています。この乖離の拡大は、市場の期待を形成する上で今後の経済データの重要性が高まっていることを強調しています。
第3四半期の経済成長に関する最近の予測は、改善の兆しを見せています。アトランタ連銀のGDPNowモデルは現在、2023年の実質GDP成長率を年率4.9%と力強い成長を予測しています。ブルームバーグのエコノミスト調査による第3四半期のGDP予測中央値は、第2四半期末の1%から足元2.1%に上方修正されました¹。
個人消費と住宅着工が夏の間に好調であったことが、このような予測の好転に大きく寄与しています。その結果、景気のソフトランディングという見方がアナリストの間でほぼコンセンサスになりつつあります。
予想以上の経済成長にもかかわらず、私たちはディスインフレの傾向を目の当たりにしています。このことは、インフレ率の変動が経済の中核的な力ではなく、パンデミックによる不均衡の副産物であることを示唆していると考えられます。パンデミックはサービスから財への需要シフトを引き起こし、グローバルにサプライチェーンを混乱させ、米国内の労働供給に影響を与えました。財政政策は個人消費をさらに押し上げ、ウクライナ・ロシア紛争や食糧・エネルギー価格の変動といった外的要因はインフレ情勢をさらに複雑にしました。しかし、こうした破壊的な要素はほぼ安定化、あるいは正常化に向かっており、生産高を大幅に減少させることなくインフレ率を低下させることができています。
第3四半期の成長は期待を持たせる内容でしたが、先行きの指標は第3四半期以降の成長鈍化を示唆しています。雇用者数の3ヵ月移動平均など、主要な指標は年間を通じて着実に低下しています。求人数が示すように労働需要は依然堅調ですが、雇用率や離職率といった他の労働市場の指標は2019年の水準に戻っています。労働市場は依然としてタイトですが、2022年の熱狂的な水準からは幾分落ち着いています。レイオフの頻度は引き続き低く、企業の採用活動の選択性は高まっていると考えられます。この選択性は、既存従業員の雇用維持を選好していることを示唆しており、労働力の溜め込みが当面のシナリオになりそうです。総雇用者数がコロナ禍前のトレンドに近づくにつれ、雇用と名目所得の伸びは減速していくと思われます。
こうした背景から、当面は成長再加速の可能性は低いと思われます。インフレ率が鈍化すれば、既存の金融引き締めが経済に与える影響はより強くなるでしょう。FRBが再利上げを行うかどうかにかかわらず、インフレ率が低下すれば、インフレ調整後の金利水準は上昇するからです。インフレ調整後の融資金利の上昇は、通常、金融情勢の引き締めと関連します。加えて、FOMCの会合以降、信用スプレッドやその他の指標も上昇しています。
第4四半期の成長が鈍化もしくは安定する可能性があることと、追加的な金融引き締めにより、今後数四半期のうちに経済が再加速する可能性は低いと考えます。
成長率とインフレ率の鈍化と金融引き締めが相まって、FRBがこれ以上の引き締めを行う可能性は低く、来年のある時点で緩和が必要になる可能性を示唆しています。金利市場では、これはイールド・カーブがスティープ化する可能性を示唆しています。長期金利は、目先の成長率予想が低下し始めるまで、高水準のボラティリティを示し続ける可能性はあります。金利が16年ぶりの高水準にある現在、長期的に見れば、現在の金利水準は投資家にとって十分に投資価値があると考えます。
米国:オーバーウェイト。 米国債利回りは上昇し、イールドカーブはこの1ヵ月でスティープ化し、4.25%だった予想レンジの上限を大きく超えました。市場はテクニカル要因と、米国経済がここから加速するとの懸念によって動かされているようです。低成長、ディスインフレの環境にあると引き続き考えており、利回りの上昇幅は限定的で、今後の国債のパフォーマンスにはプラスに働くと思われます。現在の水準では引き続きオーバーウェイトとしています。
欧州:オーバーウェイト。 欧州では先ごろ利上げが実施され、欧州中央銀行(ECB)理事会メンバーによるタカ派的な発言が続いているものの、我々は中期的な欧州金利市場に対してポジティブな見方をしています。欧州のインフレ率は依然高水準で目標を大幅に上回っていますが、先見的インフレ指標は急減速を始めており、経済データは製造業からサービス業へと広がって悪化しています。預金金利を4%に引き上げた今回の利上げは、経済活動の鈍化を考えると、インフレ率がECBの目標を上回ったとしても、このサイクルでは最後になる可能性が高いと考えています。タイミングは難しいものの、短期的なボラティリティに目を向ける投資家にとって、欧州債券市場は魅力的な機会を提供すると弊社は考えています。当社の分析によれば、インフレ率は今後数カ月から数四半期にわたって高止まりする可能性が高いものの、一方で景気はさらに悪化する可能性があり、ECBは市場の予想よりも早期に金利を引き下げる可能性があると考えています。
中国:オーバーウェイト。 中国国債利回りは、特にイールドカーブのフロントエンドで低下すると予想されます。したがって、イールドカーブがスティープ化する可能性は引き続きあると見ています。年初の金利ロング・ポジションが比較的積みあがっていたため、財政措置が発表された場合の市場の反応に対する不透明感が、最近のボラティリティにつながっているようです。中国の銀行の上半期決算は、純利鞘の圧迫を示し、それゆえ自己資本比率に影響を与えました。経済にとっての資金調達コストをさらに低下させ、銀行が持続可能なベースで融資を拡大できるようにするためには、預金市場とホールセール市場の両方で銀行の資金調達コストを低下させるために、フロントエンド金利を大幅に引き下げることが最も抵抗の少ない方法の1つでしょう。財政措置と不動産緩和政策がオンショア債券のパフォーマンスを圧迫していますが、中国中央銀行の金融政策は、今後のオンショア債券市場のポジショニングとパフォーマンスにとって最も重要な要因であると考えています。
日本:アンダーウェイト。 日本銀行(BOJ)は9月会合で政策を据え置きましたが、その方向性は日本国債(JGB)市場への介入を減らし、ゼロ金利から脱却する可能性が高まっています。インフレデータは引き続き堅調で、賃金は物価上昇圧力により敏感に反応しているように見えます。インフレのモメンタムは日銀の7月時点の見通しを上回っており、日銀は10月会合で見通しを上方修正する必要があることを示唆しています。日銀は現在、コアインフレ率を2024年度に前年比1.7%、2025年度に同1.8%と予想しています。予想が2%に近づけば近づくほど、植田総裁はインフレ目標の達成を宣言し、イールドカーブ・コントロールとマイナス金利の完全終了を正当化できる可能性が高まります。植田総裁は最近のインタビューで、今年末か来年初めの可能性を示唆しました。最近の円安と商品価格の上昇は、輸入インフレをさらに刺激し、日銀に政策変更の圧力をかける可能性があると考えています。
英国:オーバーウェイト。 ギルト利回りは、米国債利回りやドイツ国債利回りとは対照的に、ここ1ヵ月で低下しています。国内の労働市場環境、成長率、インフレ率の低下が、4月から7月にかけてのギルトのアンダーパフォームの大部分を反転させたためです。イングランド銀行(BOE)が利上げサイクルを5.25%で一時停止することを決定したことは、ハト派的な反応機能を浮き彫りにしました。一段の引き締めへのハードルは比較的高いと思われます。しかし、長期金利は、財政の悪化が予想され、BOEが量的引き締めのペースを800億ポンドから12ヵ月で1,000億ポンドに引き上げることを決定したため、供給の増加に対して脆弱なままとなっています。この組み合わせはイールドカーブはさらにスティープ化を促進するかもしれません。最近のアウトパフォームを受け、ギルトは米国債と比 較して魅力的ではなくなったと弊社は見ています。
豪州:オーバーウェイト。 9月の豪国債利回りは、米国債利回りの動きにほぼ追随する形で急上昇しました。豪州準備銀行(RBA)が9月会合で利上げサイクルを4.10%で一時停止することを決定したにもかかわらず、豪州国債利回りは上昇しました。最近の成長データは比較的まちまちで、インフレは緩やかな兆しを見せています。特に、ミシェル・ブロック新RBA総裁は就任早々、市場に衝撃を与えることに消極的でしょう。従って、4.30%の10年物利回りは、現在の水準では一定の価値を提供すると我々は考えています 。しかし、米国債に対する現在のスプレッドでは、オーストラリアが特にアウトパフォームする余地は限られていると我々は考えています。
米ドル:オーバーウェイト。 当社は米ドルに対しポジティブな見方をしており、先進国以外の通貨に対してもポジティブであるとの見方を拡げています。FRBによるややタカ派的なバイアスと相俟って、米国経済が世界の他の地域に対して相対的にアウトパフォームしていることがドルの支援材料となっており、米国経済の悪化が見られない限り、このダイナミズムは持続する可能性が高いと考えています。また、ここ数週間の米国債利回りの上昇は、ドル高と相まって世界のリスク状況に影響を与え始めています。リスク選好度が一段と悪化すれば、今年最終四半期に入り、新興国通貨に対するドル高がさらに進むきっかけとなる可能性があると考えています。
ユーロ:アンダーウェイト。 ユーロについては、米国の相対的な強さとは対照的にユーロ圏の経済が弱いことから、否定的な見方をしています。米国の例外主義的な物語が米ドルを上昇させ続けており、両地域に対する予想から、米国経済が失速し始めない限り、このダイナミズムは近い将来も続くと予想しています。
人民元:ニュートラル。 米ドル/人民元相場の主な変動要因は、主要通貨に対する米ドル高にあると思われます。中国の成長軌道と金利差は人民元のパフォーマンスの重荷となっていますが、最近の政策当局者の発言と一連のフィキシング偏差は、過度な米ドルと人民元の動きと見なされた場合、それを抑制する傾向を示しています。政策立案者の最近の行動の目的は、トレンドを反転させるというよりも、投機的なポジションの加速を抑制することであったと考えられます。人民元が対米ドル通貨バスケットに対して上昇したのは、中央銀行が最近のドル高の動きの中で米ドルに対する人民元安を食い止めるためにさまざまな手段を使った後であることに留意したいところです。
日本円:ニュートラル。 日本当局は円安への不快感を強めており、最近の財務省のコメントでは、現在の水準前後での介入の可能性を示唆しています。しかし、持続的な円高、特に対米ドルでの円高は、金利差の大幅な縮小を必要とする可能性が高く、それはFRBの利下げサイクルの開始によってもたらされる可能性が高いと考えています。最近の米国の成長率は底堅く、このシナリオの短期的確率は低下しています。とはいえ、ほとんどの先進国の中央銀行が利上げを一旦停止しているため、円に対する圧力は弱まる可能性があります。つまり、金利差は少なくとも拡大しておらず、日銀は今後6ヶ月の間に政策を変更する可能性があります。また、金融引き締めや学生ローン返済再開などの逆風を考えると、最近の米国経済の回復が持続可能かどうかも疑問です。金利とは別に、最近の商品価格の上昇も、持続すれば円にとっては逆風になりそうです。
英ポンド:アンダーウェイト。 英ポンドは今年、相対金利の上昇と交易条件の改善によって支えられてきました。しかし、この2ヵ月でこれらの要因はやや逆転しました。国内成長の鈍化と労働市場の弱体化により、英国の短期金利の下落は事実上止まり、インフレ率は主要国の中で最も高いにもかかわらず、BOEは9月の会合で利上げサイクルを5.25%で一時停止しました。事前予測の実質金利は、短期的にポンドを下支えするには低過ぎると考えています。加えて、原油価格の上昇は英国の最近の交易条件の改善を脅かしています。
豪ドル:ニュートラル。 最近の中国経済データの底打ちに対する楽観的な見方が鉄鉱石価格の上昇につながり、これが持続すれば豪ドルを支えるでしょう。しかし、対米利回り格差のマイナスは依然として豪ドルにとって大きな逆風となっています。世界的な、特にアジアの成長マインドが改善し、FRBがタカ派的でなくなるか、RBAがタカ派的になるまでの間は、豪ドルにとって大きな逆風となりそうです。豪ドルが米ドルを上回ることは期待できません。最近の商品価格の上昇が続けば、豪ドルは欧州通貨に対して上昇する可能性があります。
地方銀行危機、米国ソブリン格付けのさらなる引き下げにつながった債務上限のメロドラマ、大量の米国債発行、そして迫り来る政府機関閉鎖の狭間で、2023年の市場は激動の年となりました。金利上昇と厳しいインフレに見舞われた2022年に続く、さらに困難な年となりました。こうした逆風にもかかわらず、地方債市場は安定性と回復力を示してきました。株式やその他のリスク資産との相関が低い、あるいはマイナスであることから、この資産クラスの分散効果は検討に値すると考えます。この比較的眠った、しかし潜在的に魅力的な資産クラスへのアロケーションが正当化されるかもしれないと考えます。
現在、地方債を検討する5つの重要な理由があります:
1.マクロ経済環境は今後、より不安定でなくなるはずである。
失業率が低く、消費活動が活発で、インフレ率が低下傾向にあるなか、米国の潜在的な景気後退の時期と深刻度は下方修正されました。FRB幹部は物価上昇ペースに懸念を抱いていますが、インフレ抑制のための闘いは概ね機能しています。
市場の期待はまちまちですが、FRBは11月にあと1回利上げを行うか、まったく行わない可能性もあります。低成長とインフレ率の低下というマクロ経済的背景は、特に現在の高利回り水準では、地方債資産クラスにとって魅力的です。
2.地方債の絶対利回りと相対利回りは魅力的
債券市場は価値を取り戻し、名目利回りは数十年来の高水準に近いか、あるいはその水準にあります(図1)。投資適格地方債利回りは4.17%程度、ハイ・イールド地方債利回りは6.13%であり、課税相当額ベースではそれぞれ7.04%、10.35% となっています1 。
地方債市場にも相対的価値が戻ってきました。一般的に言われている地方債と国債の比率は、現在10年債で72%、30年債で89%であり、ほとんどの米国納税者にとって価値があることを示しています。特に、地方債のイールドカーブは米国債のイールドカーブよりもスティープであるため、イールドカーブの長い方に向かって価値があることを示しています2。
3. テクニカル指標は夏にピークを迎えたが、依然として支持的
夏場はテクニカルな観点から地方債を大いにサポートし、マイナスの純供給が特徴となりました。秋のシーズンには、発行額が増加し、クーポン支払いや債券の満期・償還を通じて地方債市場に流入するキャッシュフローが減少する可能性がありますが、2023年の純発行額はマイナス500億米ドル程度になると予想され、魅力的なM/Tレシオ(地方債利回り対国債利回りの比率)を維持しながら秩序ある市場を支えるには十分です。
2023年の新規発行額は、8月までの累計で前年比12%減のペースとなっています³。予想通り、バランスシートに潤沢な資金を持つ発行体は、高金利での発行に消極的です。2023年後半から2024年前半にかけても、純供給がマイナスとなる傾向は続くと予想されます。
4. 現金のバック・トゥ・ワーク
多くの個人投資家は、利上げサイクルが正式に終了するのを待って長期投資を検討するため、資金をマネー・マーケット商品に滞留させています。しかし、利上げサイクルが終わりに近づいていることを示す兆しは、投資家に現金を再び働かせることを促すはずであり、地方債がその恩恵を受ける可能性が高いと思われます。現在の環境では、多くの投資家がすでにデュレーションを延長しています。中には、地方債市場のショートとロングの両端にアロケーションを行うバーベル戦略を採用している投資家もいます。2022年12月以降、地方債のイールドカーブは反転しているため、この戦略は功を奏していると思われます。
5. 地方債の全体的なファンダメンタルズは引き続き堅調
経済が信用サイクルの後期段階に移行しても、地方自治体の信用ファンダメンタルズは、財政刺激策と旺盛な歳入により、概して堅調を維持しています。過去9四半期において、地方債の格上げは格下げを6:1という高い比率で上回りました⁴。
しかし、多くの州・地方自治体がバランスシートを維持するのに役立ったパンデミック・キャッシュの供給は衰え始めています。パンデミックによる貯蓄はいずれ消滅する可能性が高いですが、地方債市場のデフォルト・リスクは依然として極めて低いと見ています。歴史的にみても、高利回りの地方債は過去の景気後退期においても、社債に比べよく持ちこたえてきました。
現在の環境では、特に市場参加者が金利リスクと信用リスクに対してより建設的になっているため、地方債は魅力的であると考えます。より良好なマクロ経済環境、歴史的に魅力的な利回り、良好な市場テクニカルとファンダメンタルズ、投資家の現金投資からの脱却に伴う長期投資への回帰の可能性、これらすべてが現在の時点で組み合わさり、地方債の今後のパフォーマンスにプラスの可能性をもたらすと考えます。
債券利回りは歴史的に魅力的な水準にあります。投資家は、金利が低下する前にハイグレード債券に投資することで、実勢利回りを固定することができます。米国債のイールド・カーブは反転しているため、高利回りを長期間維持するためには、デュレーションと信用リスクを取る必要があります。この目的を達成するには、ハイグレードのクレジットが適しています。投資適格債は、ソフトランディングでも景気後退シナリオでも、良好なパフォーマンスを示すと思われます。ソフトランディングの場合、金利はより緩やかに低下するはずです。景気後退局面では、FRBは利下げを加速させ、債券のリターンを加速させる可能性が高くなります。さらに、このシナリオでは、投資適格債は株式のような成長敏感資産をアウトパフォームします。ポートフォリオ・マネジャーのマット・ブリルとトッド・ションバーグに、このような環境下での相場観と投資戦略について聞きます。
ショーンバーグ:債券市場で大きなリターンが見られない理由のひとつは、経済成長が多くの人々の予想を上回る中で利回りが高止まりしていることが挙げられます。年初から、私たちはソフトランディングを基本シナリオとしてきましたが、それが現実のものになりつつあります。
雇用市場は引き続き好調で、インフレ率も昨年のピークである9%から3%台まで低下しています。金利は高水準で推移しており、良好なインカムが期待できますが、トータル・リターンにはその兆しがまだ現れていません。米連邦準備制度理事会(FRB)の一時停止と2024年の利下げは、期待されていたプラスのトータル・リターンがもたらされると考えています。
ブリル:私たちは今が終わりの時だと感じています。先物市場は今年後半の利上げの可能性を五分五分と示唆していますが、利上げがないとしても、現在5.25%~5.50%のフェデラルファンド金利は経済にとって抑制的と言えるでしょう。私たちは、FRBが再利上げをする必要はなく、FRBの利下げ開始は2024年5月と予想しています。インフレ率が低下しているという事実は、FRBが利下げが必要だからではなく、利下げしたいから利下げすることを可能にするでしょう。
ショーンバーグ:クレジット・リスクをそれほど増やすことなく、適正な利回りを得られる段階にようやく到達しました。投資適格債、住宅ローン担保証券(MBS)、「BB」格のハイ・イールド債などのセクターで、利回りは軒並み魅力的な水準になっていると考えています。ネットフリックスのように、24カ月前に非投資適格と格付けされながら、8月にスタンダード&プアーズによって「BBB+」に格上げされた銘柄には強さが見られます。
現在の注目しているのは銀行セクターです。3月には過去最大規模の銀行破綻が3件発生し、銀行セクターのボラティリティが高まりました。私たちにとって、このような変動は潜在的な投資機会をもたらします。銀行ルールは銀行の安全性を高めるために変更されましたが、多くの銀行は依然としてスプレッドが拡大したままの水準で取引されています。「ビッグ6」銀行(バンク・オブ・アメリカ、ウェルズ・ファーゴ、ゴールドマン・サックス、シティ、JPモルガン、モルガン・スタンレー)、およびスーパーリージョナルバンクや高格付け地銀は、過去の平均値よりスプレッドが拡大した状態で取引されており、、魅力的な投資機会を提供すると考えています。銀行セクターではスプレッドが縮小すると予想しており、これは追加的なアルファをもたらすと考えています。
また、現在の水準ではエージェンシー・モーゲージ担保証券を選好しています。住宅所有者の観点からは、7%超の住宅ローン金利は厳しい状況ですが、投資家としてはこの水準は魅力的です。住宅ローン担保証券の利回りがこれほど高いのは久しぶりのことです。
ブリル:この問題は「損益分岐点」の計算に行き着きます。利回りが非常に高いため、債券のトータル・リターンがマイナスに転じるには、利回りが大幅に上昇する必要があります。経済が好調を維持すれば、今後6~9カ月は6~7%の利回りが続くでしょう。景気が悪化すれば、トータル・リターンは大きくなるでしょう。「どちらに転んでも損はない」ような状況です。重要なのは、デュレーションを短くしないことです。イールドカーブのフロントエンドに留まり、魅力的な利回りを獲得したいのはやまやまですが、それにはリスクが伴います。FRBが利下げ開始した時に、デュレーションを求め奔走するのを避けるには、利回りを長く固定化することです。
Q:これほど高い利回り、つまり6%~6.5%台の利回りを見たのは久しぶりですが、戦略全体ではどうでしょう?
ショーンバーグ:注目すべきは再投資と計画リスクです。6.5%台の利回りを見るには、2009年や2000年当時を振り返る必要があります。確かに、今はイールドカーブのフロントエンドで魅力的な利回りが見られていますが、FRBが利下げを開始すれば、そうした利回りはなくなってしまうでしょう。
Q:市場の牽引役という点では、どのような展望がありますか?
ショーンバーグ:FRBが利下げに踏み切った場合、「現金の壁」が押し寄せてくると思われます。通常、このようなシナリオの場合、投資家は取引に出遅れがちになります。FRBが利下げに踏み切り、現金が様子見姿勢から解き放たれると、市場全体が下落に転じる可能性が高いからです。これまでのサイクルで見てきたように、少し早い方が遅いよりも良い選択となるでしょう。
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20231004-3148401-JP
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