ボトムライン:専門家パネリストによるクレジットのアイデア
5月に開催した半期に一度の投資家サミットでは、アセットクラスの専門家をパネリストに迎え、クレジット市場に関する最新の見解について議論しました。その中で、2024年にはフロー面から投資適格クレジットが最も選好される資産クラスとなり、エマージング・マーケット(EM)と米国ハイ・イールド社債が最も選好されない資産クラスとなるとの予想が示されました。クレジットの金利変動に対する感応度は過去9ヵ月間に大幅に低下しており、投資家はより高い利回りを受け入れているようだとの見解が示されました。にもかかわらず、スプレッドが狭いため、リターンはキャリーによって左右される可能性が高いと考えています。以下、パネリストの主な見解を紹介します。
Q:ジェイソン、EMの需要見通しについてどうお考えですか?
JasonTrujillo:EM市場への資金流入が限定的であることは非常に驚きだと考えています。なぜなら通常、12ヵ月以上にわたって非常に好調なリターンが続けば、個人投資家、機関投資家ともに資金が流入するはずだからです。しかし、個人投資家の資金流入は持続的にマイナスです。機関投資家のフローは回復しつつありますが、ベンチマークから外れたポジションを取ることができる投資適格グレードのポートフォリオからの関心はあるものの、まだかなり緩やかとなっています。ハイ・イールド・ヘッジファンドもディストレスト・ソブリンなどのスペシャル・シチュエーションに注目しており、伝統的なEM専業ファンドではないものの、一定の関心はあるようです。
Q:最近のソブリン・リストラクチャリングが従来の投資家を遠ざけていると思いますか?
JasonTrujillo:パンデミック(世界的大流行)によって多くのEM発行体が窮地に追い込まれ、さらにロシアのウクライナ侵攻によってデフォルト(債務不履行)/制裁措置が取られる状況が拡大し、それに中国の不動産セクターの悪化が密接に追い打ちをかけました。ガーナやザンビアのような国々は、債権者と協力して債務状況を解決し、前進しようとしています。アルゼンチンやエクアドルもかなり良くなってきていると考えています。
Q:ハイ・イールド社債市場でも同じような需要があるのでしょうか?
NiklasNordenfelt:ここ2週間、ハイ・イールド社債に対する需要は桁外れに高まっていますが、それは上場投資信託(ETF)に対する需要に集中しているようです。
最近、ETFへの資金流入とETFからの資金流出が非常に多くなっています。機関投資家においては需要が減少していますが、それはハイ・イールド社債のファンダメンタルズが悪化したためというよりは、多くの機関投資家がより安全な投資適格社債でも高い利回りが得られるようになったという理由で投資適格社債を選好した結果、ハイ・イールド社債の相対的な魅力が低下したためだと思われます。流動性の劣るレバレッジド・ファイナンスの分野では、公社債の利回りよりも150~200ベーシス・ポイント高い利回りが利用可能です5。IFIも利回りの優位性からバンクローンを選好してきました。FRBが利下げを開始し、変動利付債の利回りの優位性が低下すれば、この動きは一変すると予想されます。
Q:IFIの世論調査によると、人々は商業用不動産担保証券(CMBS)の金利に対する感応度を認識しているようです。最新のご意見をお聞かせください。
KevinCollins:はい、CMBSは金利に非常に敏感です。FRBが間もなく方針を転換し、景気後退のリスクがなくなると投資家が期待しているためです。このことは、ディスインフレの進行が緩やかになりつつあるという背景と結びついています。商業用不動産物件は一般的にレバレッジがかかった投資であり、レバが大きくかかっていることが多いので、間違いなく、ファイナンスコストが何よりも重要なことは言うまでもありません。その結果、実質金利は2023年初頭の1.5%に対し、現在は2%を超えており、利下げ開始時期が長引けば長引くほど、不動産評価の重石となる可能性が高いのです。
Q:住居費が米国のインフレに与える影響を考慮し、米国の不動産需給状況について教えてください。
KevinCollins:私たちは住宅市場を一戸建てと集合住宅の2つに分けて考える必要があります。米国不動産市場の約3分の1を占める集合住宅では、大幅な供給が続いています。この傾向は四半期ごとにピークを迎え、2025年まで続くと予想されます。入居率は依然として94%前後ですが、これは12年ぶりの低水準となっています6。賃料の伸びは横ばいで、2025年に向けてさらに軟化すると予想されます。
一方、市場の3分の2を占める一戸建ては、新規供給が少ないので興味深い状況となっており、一戸建ての賃貸料は前年比で約5%上昇しています7。結果として、マルチファミリ-向けの集合住宅の家賃のディスインフレは、新築の建売賃貸物件の増加とともに、最終的には住居費に下落圧力をかけ、経済をディスインフレ目標に整合させる可能性を秘めています。
Q:投資適格社債では、テーブルからチップを取り除くことになるのでしょうか?
ToddSchomberg:確かに、バリュエーションは非常にタイトで、ボラティリティは低く、新規発行額も記録的なレベルです。現在の利回り水準は好ましいものの、潜在的なスプレッド拡大からポートフォリオを保護したいと考えています。そのため、イールドカーブの短期ゾーンにポジションを移し、質の高いインカムへのアクセスを確保しています。実際、スプレッドはイールドカーブの3年から7年の部分でやや拡大しています。10年から30年のレンジは、年金基金のような長期投資家の旺盛な需要に牽引され、史上最高水準に近い水準にあります。
Q:公募ハイ・イールド社債と私募ハイ・イールド社債の間に競争はありますか?
Thomas Moore:私募ハイ・イールド社債市場は約4兆~5兆米ドルと大幅に成長しており、これは借り手にとってプラスです8。資本へのアクセスは膨大であるため、企業はいずれかの市場で借り換えの道を見つけることができます。これにより、デフォルト率は全体的に低下します。IFIは、公募市場が提供しようとしないような信用を私募市場で利用できる特定の事例を目にしています。しかし、ストレス・リテールのような特定の分野では、銀行が提供しないような価格でリボルビング・クレジット・ファシリティを提供してくれる民間金融機関が存在します。また、別の見方をすれば、フローをめぐる競争ということになりますが、プライベート・マーケットへの関心が高まっている現在、公募ハイ・イールド社債は競争に直面しています。