インベスコの視点

【ICP投資戦略】大幅な金融引き締めによって、スモールキャップのディストレストやスペシャル・シチュエーションの投資機会が拡大

Invesco Fixed Income Special Report
概略
  • スモールキャップのディストレストとスペシャル・シチュエーションの市場には構造的な非効率性が見られ、さまざまな業種においてクレジットサイクルにあまり左右されない投資機会が発生
  • 足元のマクロ環境を踏まえると、スモールキャップのディストレストとスペシャル・シチュエーションの投資に一層の魅力
  • 足元の高金利で、スモールキャップは固定費をカバーしにくくなり、流動性の調達と負債の期日延長といったソリューションを模索

スモールキャップ(小型企業)のディストレストとスペシャルシチュエーションの市場には構造的な非効率性があり、いろいろな業種においてクレジットサイクルにあまり左右されない投資機会が発生します。スモールキャップの負債の多くは未上場会社によって発行され、少数の投資家グループが保有しています。そのため、こうした負債の取引は少なく、また、セルサイドやトレーダーもあまりカバーしていません。スモールキャップは幅広いセクターに存在しますが、それぞれ個別の事情によるクレジット上の問題(運転資本の不足、顧客の喪失、薄いシナジー効果、経営上または製造上の問題など)が発生するため、あらゆる環境でさまざまなディストレスト投資の機会が生まれます。

現在のマクロ環境を踏まえると、スモールキャップのディストレストとスペシャル・シチュエーションの投資機会がさらに増えると思われます。非投資適格のクレジット市場は6兆ドル規模に大きく成長したため、デフォルト率自体がそれほど上昇しなくても、ディストレスト投資の機会は2008年や2009年時点よりも恵まれるでしょう。その拡大するディストレスト投資の対象には、最近発行された低格付けの負債や2027年までに満期を迎える負債がかなり含まれると思われます。こうした負債の多くは、格付機関の格下げやそれに伴う売り圧力に晒されると思いますが、潜在的には魅力的なディストレスト投資の機会を提供すると考えます。これらの企業の多くは変動金利の負債を抱えており、これまでの大幅な金融引き締めによって、原材料価格や人件費の高騰の影響に加えて、一層の負担がかかっています。

上記はラージキャップ、スモールキャップともに当てはまりますが、足元の高金利は、特にスモールキャップに影響があります。固定費カバー率(FCCR)は、フリー・キャッシュ・フロー(EBITDAから税金と設備投資額を差し引いたもの)を固定費(金利と返済元本)で割ったものですが、企業が固定費をカバーするのに十分なキャッシュ・フローをどの程度生み出すことができるかを示します。米連邦準備制度理事会(FRB)が政策金利を500ベーシス・ポイント以上引き上げる中で、スモールキャップのFCCRは平均1.4倍から1.1倍へと21%低下しました(図1をご参照)。さらに、FCCRが1.0xの閾値を下回ると経営難に陥る可能性を示唆しますが、その比率は2023年第2四半期の時点で31%に急増しています。この数値は直近12ヵ月間のデータに基づいていますが、現在の政策金利(約5.5%)を適用すると、上記の閾値を下回るスモールキャップの比率は44%に増加します(図2をご参照)。

1:固定費カバー率(FCCR)は低下傾向
図2:スモールキャップの発行体は約半数がFCCRは1.0倍未満に

こういった企業のスポンサー(PE)は、投資先企業の過剰な負債を認識して、流動性の確保と負債の期日延長だけでなく、ローン契約書の修正などを含めた包括的なソリューションを求めるようになっています(図3をご参照)。こういったスペシャル・シチュエーションと呼ばれる状況から、投資家は魅力的なリターンを得ることが期待できます。こういった投資機会は、かなり以前に組成されたPEファンドの投資先企業に多く見られます(図4をご参照)。

図3:企業のスポンサー(PE)は積極的に投資先企業の資本構成のソリューションを模索
4:かなり以前に組成されたPEファンドで投資された企業はより脆弱

上記から、スモールキャップに困難が生じつつあることが窺われますが、こういった傾向はしばらく続くと思われます。足元でディストレスト状況に陥っている企業の状況を過去のケースと比較すると、ビジネス運営上の大きな問題があるというよりも、流動性の不足で資金繰りに支障が出ているといった傾向が見られます。「本質的には良いビジネス」でありながら、負債が多すぎるなど「悪いバランスシート」を抱える企業には、本源的価値を下回る価格で投資する機会が見出されます。こういった投資対象が増えれば、魅力的なリターンを提供するだけでなく、そのリスクも小さくなると考えます。

注釈について

  • 1

    出所:Lincoln Proprietary Private Market Database as of June 30, 2023. Median Company Size (LTM EBITDA): $45.1mm. Fixed Charge Coverage Ratio (“FCCR”) = (LTM EBITDA – Taxes – Capex) / (LTM Interest Expense + Amortization).

当資料ご利⽤上のご注意

  • 当資料は情報提供を⽬的として、弊社グループが作成した英⽂資料をインベスコ・アセット・マネジメント株式会社(以下、「弊社」)が抄訳し、要旨の追加などを含む編集を⾏ったものであり、法令に基づく開⽰書類でも⾦融商品取引契約の締結の勧誘資料でもありません。抄訳には正確を期していますが、必ずしも完全性を弊社が保証するものではありません。また、抄訳において、原資料の趣旨を必ずしもすべて反映した内容になっていない場合があります。また、当資料は信頼できる情報に基づいて作成されたものですが、その情報の確実性あるいは完結性を表明するものではありません。当資料に記載されている内容は既に変更されている場合があり、また、予告なく変更される場合があります。当資料には将来の市場の⾒通し等に関する記述が含まれている場合がありますが、それらは資料作成時における作成者の⾒解であり、将来の動向や成果を保証するものではありません。また、当資料に⽰す⾒解は、インベスコの他の運⽤チームの⾒解と異なる場合があります。過去のパフォーマンスや動向は将来の収益や成果を保証するものではありません。弊社の事前の承認なく、当資料の⼀部または全部を使⽤、複製、転⽤、配布等することを禁じます。

     

    当運用戦略に関する投資リスク

    当運用は、値動きのある米ドル建てなどのディストレスト・ローン等への投資を行います。組入れたディストレスト・ローン等の価格の下落や金利動向等のほか、借り手の倒産や財務状況の悪化およびそれらに関する外部評価の変化等により、ディストレスト・ローン等の価格が変動し、損失を被る可能性があります。したがって、投資家の皆様の投資元本は保証されているものではなく、投資対象であるディストレスト・ローン等の価格下落により、損失を被り、投資元本を割り込むことがあります。
    主な投資リスクは次の通りです。
    信用リスク:ディストレスト・ローン等の価格は、借入企業の財務状況の悪化などの信用状況の変化、もしくはそれが予想される場合、価格が下落することがあります。また、利息および償還金をあらかじめ決定された条件で支払うことができなくなった場合(デフォルト)、またはできなくなることが予想される場合には、ディストレスト・ローン等の価格が大きく下落することがあります。担保の状況によっては投資元本に対して担保の価値が充分でない場合もあります。
    価格変動リスク:ディストレスト・ローン等の価格は、政治・経済情勢、発行企業の業績、市場の需給等を反映して変動し、下落することがあります。また、発行企業が経営不安、倒産等に陥った場合には、投資資金が回収できなくなることもあります。
    担保価値変動リスク:通常、融資実行時には融資額と同程度以上の担保が設定されますが、市場環境の変化によって担保価値が変動し、ディストレスト・ローン等の価格が下落することがあります。
    金利変動リスク:投資するディストレスト・ローン等の大半は変動金利であるため、金利の上昇(低下)による価格の変動は固定金利の資産に比べて相対的に小さなものになると想定されますが、金利変動局面やスプレッド拡大局面では、その影響を受けてディストレスト・ローン等の価格が下落することがあります。
    流動性リスク:ディストレスト・ローン等は、一般的に流動性や市場性が低く、期待される価格や希望する数量を売却できないことがあります。
    為替変動リスク:為替レートは、各国の金利動向、政治・経済情勢、為替市場の需給、その他要因により大幅に変動する場合があります。組入外貨建資産について日本円で評価する際、当該外貨の為替レートが円高方向に変動した場合には、損失を被ることがあります。

     

    当運用戦略に関する費用と税金

    投資一任契約に基づいて外国籍私募投信に投資する場合の費用は次のとおりです。
    国内特定(金銭)信託における費用・税金
    ・投資一任契約に係る報酬:資料作成時点で受託実績がなく、料率体系が未定のため、表示することができません。
    ・特定(金銭)信託の管理報酬:当該信託口座の受託銀行である信託銀行にお支払いいただく必要があります。具体的料率については信託銀行にご確認下さい。
    ・上記の費用の合計額については、運用状況などによって変動するものであり、事前に料率、上限額などを表示することができません。
    投資先海外ファンドにおける費用・税金
    ・実際の投資は日本国外のファンドで行い、国内特定(金銭)信託口座から日本国外のファンドに投資することを想定していますが、投資先ファンドの諸条件については、当資料作成時点では詳細が決定していないため、表示することができません。
    ・投資対象ファンド管理報酬および費用 :ファンドの運用残高によって変動するため、事前に具体的な料率、金額または計算方法は記載できません。
    ・その他の費用:組入銘柄の売買時に発生する費用、外貨建資産の保管等に要する費用、監査費用 等が発生し、投資先海外ファンドの信託財産中より支払われます。これらの費用は取引量などによって変動するため、事前に具体的な料率、金額または計算方法は記載できません。
    ・上記の費用の合計額については、運用状況などによって変動するものであり、事前に料率、上限額などを表示することができません。
    費用の合計
    ・上記の費用の合計額については、運用状況などによって変動するものであり、事前に料率、上限額などを表示することができません。
    課税について
    ・非課税要件を満たした年金基金のお客様については非課税となります。
    ※外貨建資産への投資によって発生する配当、キャピタルゲインに対して、関係国で課される税金を負担する場合があります。
    投資一任契約の締結に際しましては、重要事項説明書ならびに契約締結前交付書面を必ずご確認下さい。

債券関連記事

  •  債券
     債券

    【グローバル債券投資戦略】「グローバル・フィックスト・インカム・ストラテジー 2024年9月」

    インベスコ・フィックスト・インカム

    インベスコ・フィックスト・インカム(IFI)がマクロ経済動向、米国および主要国の金利・為替見通し、債券市場における主要な投資テーマなどについての見方をご提供いたします。

    2024年10月3日
  •  債券
     債券

    【グローバル債券投資戦略】「グローバル・フィックスト・インカム・ストラテジー 2024年8月」

    インベスコ・フィックスト・インカム

    インベスコ・フィックスト・インカム(IFI)がマクロ経済動向、米国および主要国の金利・為替見通し、債券市場における主要な投資テーマなどについての見方をご提供いたします。

    2024年9月11日
  •  債券
     債券

    【グローバル債券投資戦略】「グローバル・フィックスト・インカム・ストラテジー 2024年7月」

    インベスコ・フィックスト・インカム

    インベスコ・フィックスト・インカム(IFI)がマクロ経済動向、米国および主要国の金利・為替見通し、債券市場における主要な投資テーマなどについての見方をご提供いたします。

    2024年8月6日
  •  債券
     債券

    【グローバル債券投資戦略】「グローバル・フィックスト・インカム・ストラテジー 2024年6月」

    インベスコ・フィックスト・インカム

    インベスコ・フィックスト・インカム(IFI)がマクロ経済動向、米国および主要国の金利・為替見通し、債券市場における主要な投資テーマなどについての見方をご提供いたします。

    2024年7月11日
  •  債券
     債券

    【グローバル債券投資戦略】「グローバル・フィックスト・インカム・ストラテジー 2024年5月」

    インベスコ・フィックスト・インカム

    インベスコ・フィックスト・インカム(IFI)がマクロ経済動向、米国および主要国の金利・為替見通し、債券市場における主要な投資テーマなどについての見方をご提供いたします。

    2024年6月3日
  •  債券
     債券

    【グローバル債券投資戦略】「グローバル・フィックスト・インカム・ストラテジー 2024年4月」

    インベスコ・フィックスト・インカム

    インベスコ・フィックスト・インカム(IFI)がマクロ経済動向、米国および主要国の金利・為替見通し、債券市場における主要な投資テーマなどについての見方をご提供いたします。

    2024年5月13日
  •  債券
     債券

    【グローバル債券投資戦略】「グローバル・フィックスト・インカム・ストラテジー 2024年3月」

    インベスコ・フィックスト・インカム

    インベスコ・フィックスト・インカム(IFI)がマクロ経済動向、米国および主要国の金利・為替見通し、債券市場における主要な投資テーマなどについての見方をご提供いたします。

    2024年4月10日
  •  債券
     債券

    【グローバル債券投資戦略】「グローバル・フィックスト・インカム・ストラテジー 2024年2月」

    インベスコ・フィックスト・インカム

    インベスコ・フィックスト・インカム(IFI)がマクロ経済動向、米国および主要国の金利・為替見通し、債券市場における主要な投資テーマなどについての見方をご提供いたします。

    2024年3月4日
  •  債券
     債券

    【グローバル債券投資戦略】「グローバル・フィックスト・インカム・ストラテジー 2024年1月」

    インベスコ・フィックスト・インカム

    インベスコ・フィックスト・インカム(IFI)がマクロ経済動向、米国および主要国の金利・為替見通し、債券市場における主要な投資テーマなどについての見方をご提供いたします。

    2024年2月7日
  •  債券
     債券

    【グローバル債券投資戦略】「グローバル・フィックスト・インカム・ストラテジー 2023年12月」

    インベスコ・フィックスト・インカム

    インベスコ・フィックスト・インカム(IFI)がマクロ経済動向、米国および主要国の金利・為替見通し、債券市場における主要な投資テーマなどについての見方をご提供いたします。

    2023年12月20日

20231220-3292972-JP

そのほかの投資関連情報はこちらをご覧ください。https://www.invesco.com/jp/ja/institutional/insights.html