タカ派色を強めたFOMC
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FOMCのタカ派色が強まる
1月25~26日に開催されたFOMC(米連邦公開市場委員会)は、FRB (米連邦準備理事会)がインフレに対する懸念を強めていることを示すものとなりました。今回のFOMCで決まった実際の政策的な行動は、QE(量的緩和)の規模を2月に縮小させるという点だけでしたが、これについては予定通りの動きでした。グローバル金融市場が今回のFOMCについて注目していたのは、①FRBの利上げ開始時期や利上げペースについての示唆があるか、➁FRBによるバランスシート縮小策(QT政策:量的引き締め政策)の開始時期や規模についての示唆はあるか―という2点でした。
これらの点について、市場が受け取ったメッセージは、「FRBがタカ派色を強めており、利上げやQTについてのペースが現在市場で想定されているよりも速いものになる可能性がある」というものでした。パウエル議長はFOMC後の記者会見において、オミクロン株のまん延にもかかわらず足元の米国景気がなお堅調で、労働市場も改善していることを指摘したほか、そうした動きがインフレの上振れにつながる可能性を強調しました。また、利上げについては、パウエル議長は3月における利上げ開始の可能性を強く示唆しました。金融市場の一部では、オミクロン株による景気への影響が予想されることから3月の利上げは回避されるとの見方が存在していましたが、今回のパウエル議長の発言はそうした可能性が非常に低いことを示唆するものであったと言えます。
さらに、QT政策については、今回FOMCが特別に公表したステートメントにおいて、「FRBが大規模に(Significant)バランスシートを縮小させる計画」があるとしました。この「大規模に」という言葉の具体的な意味は示されていませんが、米長期債を保有する投資家にとっては懸念すべき表現であったと考えられます。なお、パウエル議長は、QT政策は今後少なくとも2回のFOMCで議論した後に決定すると述べました。次回FOMCが3月15-16日、次々回が5月3-4日に開催予定であることを踏まえると、具体的な規模を盛り込んだQTの方針が決定されるのは早くても5月であり、実施までの周知期間が必要であるとみられることを考えると、FRBによるQTの開始時期は7月以降になる公算が大きいと考えられます。これは当レポートの1月13日号(「FRBがQTを前倒す理由」)で想定した開始時期(7月)と整合的です。
直後の米国金融市場はイールドカーブのシフトアップ、株安で反応
26日の米国株式市場では、S&P500種指数が取引開始時点で前日の終値から1.2%高い水準となり、そのまま高値圏で推移しましたが、パウエル議長が記者会見中に「かなりの利上げの余地がある」と発言したことではっきりとした下落に転じ、前日の終値よりも0.15%低い水準で引けました。FRBが金融引き締めを想定以上に実施するのではという懸念が広がったためと思われます。米国債券市場では、FOMCを受けてイールドカーブが全体的にシフトアップしました。これはFFレートの引き上げについての織り込み回数が上昇したことと、QTがより大規模に実施されるとの見方が強まったことを反映した動きとみられます。
FRBによる過度の引き締めリスクがより強く意識される展開に
グローバル金融市場では、今回のFOMCを受けて、今後のインフレ指標の上振れ度合いによってはFRBが景気を冷やしてしまうような引き締め策を実施するリスクをこれまで以上に意識し始めたと考えられます。短期的には、米国のインフレ指標や中長期の期待インフレ率がより注目されますが、そうした指標の行方やFRB高官の発言によっては、グローバル株式市場のボラティリティーが上昇する可能性が増したと言えるでしょう。ただし、このリスクはあくまでテールリスクです。FRBによるインフレ対応の強化は、中長期的には息の長い景気の拡大につながるものであり、株式市場にとってポジティブな動きにつながると考えられます。
その一方、FRBが今後のQTを「大規模に」実施する意図を明示した今回のFOMCの結果を踏まえると、FRBが今後当面の間に実施するQTによる資産縮小規模が、当レポートの1月13日号(「FRBがQTを前倒す理由」)で想定した9000億ドルを上回る可能性が出てきたと思われます。これについては、年央くらいまでの数カ月間において米長期金利が上振れするリスクとして注意が必要です。また、このリスクが顕在化する結果として長期金利が想定以上に上昇する場合、テクノロジー銘柄を含むグロース株に対する短期的な下押し圧力を生むリスクがある点にも要注意です。
MC2022-012
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