米国バンクローン市場、月次アップデート 2025年4月
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3月のバンクロ-ン市場は、トランプ政権の関税政策でマイナス・リターン
3月のバンクローン市場動向
3月のバンクローン市場は月間で-0.26%、年初来で+0.61%のリターンとなりました1。また、月間の価格リターンは-0.96%、金利リターンは+0.70%となりました1。
関税政策の影響や消費者信頼感の低下で景気への懸念が生じ、引き続き株式や債券市場のボラティリティが高まる展開となりました。株式市場が下落する中でローン需要も減少し、クレジット・スプレッドが拡大してリプライシングも減少しました。セカンダリー市場で額面以上で取引されるローンの割合は、2月末の36%から3月末は10%に減少(1月末は66%)しました1。
3月のバンクローンのリターンは、ハイ・イールド債(-1.22%)と投資適格社債(-0.29%)を上回りました2。格付別のリターンは、BB格(+0.11%)、B格(-0.44%)、CCC格(-0.69%)となりました1。ローン市場の平均価格は3月末で95.84となり、2月末(96.24)をやや下回りました1。現在の平均価格を踏まえると、ローンはフォワードカーブを含めて8.63%のイールドとなり、2月末の8.51%をやや下回りました1。
ファンダメンタルズ
- 2025年4月2日、トランプ大統領は殆どの貿易相手国に対して広範な関税を新たに導入し、すべての貿易相手国に対して最低10%、また、特定の国に対して段階的な相互関税を課すことを発表しました。 貿易相手国からの報復関税は当レポート作成時点でまだ見られていませんが、市場のボラティリティがさらに高まる可能性があります。これらの関税は、持続的なインフレ、実質GDPの減少、失業率の上昇など広範な影響を及ぼす懸念があります。
- 12ヵ月累計の額面デフォルト率は先月の0.81%から0.82%にやや上昇しました。新たなデフォルトは2件で、また、以前に発生した1件(Jo-Ann Stores)のデフォルトが今回の計算期間から外れました3。80ドル未満で取引されるローンの割合は前月の3.05%からやや上昇して3.21%となりました。法廷外での債務再編や債務不履行を含めると、デフォルト率(発行体ベース)は0.13%上昇して4.31%となりました3。
市場の需給環境
- 3月は、ローンの供給が需要を実質的に上回り、久しぶりに貸し手優位な展開となりました。
- 3月のCLOのグロスでの新規発行は2月(117案件で546億ドル)から12%減少し、98案件で479億ドル(うちリファイアンス案件とリセット案件が311億ドル)となりました4。
- 個人投資家向けローン・ミューチュアル・ファンドとETFからは、3月に41億ドル(うち、前者から4億ドル、後者から37億ドル)の資金流出となりました4。
- 3月のローンのグロスでの新規発行(567億ドル)は先月(936億ドルで先々月から半減)から39%減少したものの、3月での過去月間最高額(499億ドル)を上回っています。リファイアンス案件(135億ドル)とリプライシング案件(243億ドル)を除いたネットでの新規発行(189億ドル)は、2月(234億ドル)から減少しました4。
投資機会
ローン市場の状況が軟化する中、10件のディールが貸し手の参加を促すために価格や条件を改善(フレックス・アップ)し、2022年3月以来の最高件数となりました(図表1)。1月末にはパー以上の価格のローンが66%ありましたが、3月末には10%に減少しました。1月は記録的なリプライシングが発生しましたが、今後減少すると思われます(図表2)。
トランプ氏が大統領に選ばれてから、消費者関連や工業製品などのセクターの発行体の他、特に中国からの輸入に大きく依存する発行体のエクスポージャーを削減しました。また、DOGEの政策から影響を受けやすい防衛や衛星通信などのエクスポージャーも選択的に削減しました。トランプ政権が4月2日に発表した広範な関税政策を踏まえ、高関税国での製造に大きく依存する発行体の他、リセッションの影響を受けやすい裁量消費セクターの低格付発行体のエクスポージャーに引き続き留意しています。それとは逆に、公益の他、ヘルスケアの一部のサブセクターなどを選好しています。景気減速の懸念や市場のボラティリティが高まるなかで、B格の発行体のエクスポージャーに十分注意を払い、大きく売りこまれたローンの売却がもたらす損失の回避を図る予定です。



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