マーケット・アップデート
米国バンクローン市場、月次アップデート 2025年6月
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5月のバンクロ-ン市場は、関税政策の緩和で急回復
5月のバンクローン市場動向
5月のバンクローン市場は月間で+1.58%、年初来で+2.14%のリターンとなりました1。また、月間の価格リターンは+0.89%、金利リターンは+0.69%となりました1。
4月の不安定な動きの後、ローン市場は5月に急回復し、2023年12月以来最高の月間リターンを記録しました。関税に対する懸念が緩和されて消費者心理も改善したことで、ローン価格が反発しました。ローンの新規発行額は、4月の「解放記念日」以降に見られた新規発行市場の急減速から一転し、前月比で400%以上増加しました。
5月のバンクローンのリターンは、ハイ・イールド債(+1.82%)と投資適格社債(-0.01%)の中間となりました2。格付別のリターンは、BB格(+1.36%)、B格(+1.57%)、CCC格(+2.89%)となりました1。ローン市場の平均価格は5月末で96.28となり、4月末(95.26)から上昇して「解放記念日」前の水準に回復しました1。現在の平均価格を踏まえると、ローンはフォワードカーブを含めて8.30%のイールドとなり、4月末の8.42%をやや下回りました1。
ファンダメンタルズ
- 4月は、トランプ大統領による「解放記念日」の発表後に債券と株式の両方の市場で極めて不安定な動きが見られましたが、5月には急速な反発ラリーが起こりました。関税政策が緩和されて景気減速懸念が後退したことで、投資家はFRB(米連邦準備制度理事会)の利下げに対する期待を後退させました。関税問題は依然として残っていますが、トランプ大統領が当初示唆した内容がもたらすような深刻な状況にはならないとの楽観的な見方が広がっています。5月下旬に米国連邦裁判所はトランプ大統領によって課された関税の大部分を凍結しましたが、これは「1977年国際緊急経済権限法(IEEPA)」に基づいて実施された関税が大統領の法的権限を超えていると判断されたためです。その後、トランプ政権はこの判決に対して一時的な停止措置を勝ち取り、控訴の初期段階で関税の再導入が可能となりました。
- 12ヵ月累計の額面デフォルト率は先月の0.73%から0.74%と小幅上昇しました。新たなデフォルトは1件(WeightWatchers)で、また、以前に発生した1件(Research Now Group)のデフォルトが今回の計算期間から外れました3。80ドル未満で取引されるローンの割合は前月の3.90%から低下して3.23%となりました。法廷外での債務再編や債務不履行を含めると、デフォルト率(発行体ベース)は小幅低下して4.36%となりました3。
市場の需給環境
- 5月の需給環境は、投資家からのローン需要が再び高まったことで、4月の供給過剰の状況とは対照的に供給不足となりました。
- 5月のCLOのグロスでの新規発行は4月(56案件で254億ドル)から32%増加し、72案件で334億ドル(うちリファイアンス案件とリセット案件が140億ドル)となりました4。
- 個人投資家向けローン・ミューチュアル・ファンドとETFは、5月に19億ドル(うち、前者から4,800万ドル、後者から18億ドル)の資金流入となりました4。4月には2020年3月以来で最大の資金流出となるなど、3か月連続で資金が流出しましたが、トレンドが反転しました。
- 5月のローンのグロスでの新規発行(315億ドル)は、市場回復ラリーの中で先月(62億ドル)から大きく増加し、2010年以降の5月の月間平均(489億ドル)に近づきました。新規発行の内訳としては、買収案件(134億ドル)、リファイナンス案件(133億ドル)、配当リキャップ案件(29億ドル)、一般目的案件(14億ドル)、リプライシング案件(5億4200万ドル)などとなりました。
投資機会
市場環境の改善を背景に、ローンの流通市場の価格は4月2日の関税発表前の水準まで回復し、5月末時点での平均価格は96.28となりました。ただし、これは1月の水準よりも100ベーシスポイント(1.00%)低い水準にとどまっています(図表1)。貿易摩擦が緩和されて経済環境が改善することで、セカンダリローン価格の上昇は今後も続きやすいと思われます。


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