Global markets in focus

スタグフレーション?粘着的インフレ?投資家が前向きになれる7つの理由

スタグフレーション?粘着的インフレ?投資家が前向きになれる7つの理由
〔要旨〕
  • 米国はスタグフレーション?:先週、「スタグフレーション」という言葉のグーグル検索が激増したが、私は米国でスタグフレーションが起きているとは考えていない
  • ユーロ圏サービス業?:ユーロ圏の2大大国ドイツとフランスでようやく経済活動の改善が見られるようになったことから、ユーロ圏サービス業の回復は持続的となる可能性がある
  • リパブリック・ファースト銀行:リパブリック・ファースト銀行が公的管理下に置かれ、その後売却されるという小規模な銀行破綻が発生したが、今回の破綻からの波及が生じるとは予想されない
1. 米国はスタグフレーションに陥っていない

2. ユーロ圏経済は堅調に回復している模様

3. 英国経済には上昇余地あり

4. 先週の銀行破綻からの波及はないと予想される

5. 企業業績は予想以上に好調

6. 欧州企業の自社株買いが加速

7. 現金は依然として傍らに積み上がっている

今後の見通し:市場にとって重要な週となる

注目の日程

 

米連邦準備制度理事会(FRB)がいつ利下げを開始するかに世界中の注目が集まる中、先週のビッグニュースは、米国の今年1-3月期の国内総生産(GDP)でした。成長率が予想を下回ったことに加え、インフレ率が予想を上回りました。これに続いて3月の個人消費支出(PCE)価格指数が発表されましたが、3月のヘッドラインインフレ率、コアインフレ率は、ともに予想を上回りました。このデータは、インフレがどの程度粘着的となるのか、またFRBが利下げ開始までどれほど待たねばならないかについて疑問を投げかけました。その結果、恐怖心が大きく増して「スタグフレーション」という言葉のグーグル検索が激増し、FRBが次に取る行動は利下げではなく、利上げだろうと主張する向きまで現れました。更に先週は、リパブリック・ファースト銀行が公的管理下に置かれ、その後売却されるという小規模な銀行破綻もありました。しかし、こうした懸念はありつつも、私は投資家が前向きに考えるべき理由がいくつかあると考えています。

 

1. 米国はスタグフレーションに陥っていない

スタグフレーション(「停滞」と「インフレ」を組み合わせた言葉)の特徴は、経済成長率の鈍化、高い失業率、高いインフレ率です。現下の状況は、スタグフレーションではありません!3月のPCE価格指数は3%を下回り、前年同月比のヘッドラインインフレ率は2.7%、コアPCEインフレ率は2.8%でした1 。そして忘れてはならないのは、PCE価格指数はFRBが好むインフレ指標だということです。

米国の消費者物価指数(CPI)は上昇していますが、それには特異な理由、特に自動車保険費用(先行する自動車価格の上昇を反映)や住居費(先行する住居費の上昇を反映:新規賃貸契約による市場価格の上昇が住居費データに反映されるのに時間がかかる)などの遅行要因の影響が考えられます。

要するに、進展のペースは減速したものの、ディスインフレは継続していると私は考えています―その減速自体、ごく一時的なものの可能性があります。これから次回のFRB会合までの間に、更に多くのデータが発表される予定です。(米国で「スタグフレーション」のグーグル検索が大幅に増加したとはいえ、その検索数はまだ、2008年2月と2022年5月の検索数のピークを下回っているということにも留意すべきです。)
 

2. ユーロ圏経済は堅調に回復している模様

ユーロ圏の4月購買担当者景気指数(PMI)速報値は、ユーロ圏経済の改善を示しています。ユーロ圏の製造業PMIはやや弱まりましたが、サービス業PMIは11カ月ぶりの高水準となりました。しばらくの間低迷の兆しを見せていたユーロ圏の2大大国ドイツとフランスで、ようやく経済活動の改善が見られるようになったことから、この回復は持続的となる可能性があると私は考えています。

加えてユーロ圏経済は、欧州中央銀行(ECB)の利下げにより、活性化される可能性があります。この利下げは依然として6月に開始される見込みが非常に高く、ユーロ圏の株価を大きく押し上げる可能性があります。
 

3. 英国経済には上昇余地あり

製造業の活動は低迷しているものの、サービス業の活動は力強さを見せています。S&Pグローバル英国サービス業PMIの速報値は予想をはるかに上回り、経済全体を押し上げる助けとなっています。多くの構成要素でディスインフレが進行していることから、私は、大方が予想しているよりもイングランド銀行は利下げに近づいていると考えています。
 

4. 先週の銀行破綻からの波及はないと予想される

前述の通り、先週はリパブリック・ファースト銀行が公的管理下に置かれ、その後売却されるという小規模な銀行破綻がありました。これは2024年最初のFDIC(米国連邦預金保険公社)加盟金融機関の破綻となりました。12月にも申し上げたように、今後、個別の銀行破綻がいくつか起きたとしても、私にとって驚きはありません。ただし、今回のような事態を評価する上で重要なのは、それが収束するか、それとも波及していくのか見極めることだと私は考えています。得られた情報に基づけば、今回の事態は、おおよそ特殊な問題に起因する個別の破綻だと私は見ています。今回の破綻からの波及が生じるとは考えていません。
 

5. 企業業績は予想以上に好調

PCEインフレ率が予想を上回り、スタグフレーションへの懸念が囁かれたにもかかわらず、先週の市場は好調でした。株価を支えたのは、予想以上の業績の伸びでした―これはまさに、価格上昇の原動力として望ましいものではないでしょうか?

金曜の時点で、S&P500種指数構成企業のほぼ50%が決算を発表しており、うち77%が収益予想を上回り、60%が売上高予想を上回りました2。S&P 500種指数構成企業の今年1-3月期の収益成長率は3.5%と推定され、その場合3四半期連続での前年同期比増益となります2

こうした状況は米国だけではありません。ストックス欧州600指数構成企業の33%が決算を発表しており、うち54%が収益予想を上回りました3。また日本では、TOPIX構成企業の14%が決算を発表しており、うち59%が収益予想を上回りました3。世界的な成長が改善するにつれて、こうした動きは今後の数四半期、収益成長率の改善につながるでしょう。

ある多国籍消費財企業が決算説明会で語ったように、「...消費者の動向は世界的に、非常に底堅いと私たちは考えている。ご覧のとおり、我々の国際的な業績からそれが見てとれる。それは基本的に、世界的に失業率が非常にあるいはかなり低い、そして我々が事業を展開している大半の国で賃金が良いペースで伸びている、という2つの事実に支えられている」のです 4

もしかすると、金融政策への期待が資産に過大な影響を与えない、より正常な世界に戻りつつあるのかもしれません。
 

6. 欧州企業の自社株買いが加速

欧州企業は自社株買いを加速させており、今や米国企業に似てきています。例えば、ストックス欧州600指数構成企業の自社株買い利回りは1.8%に上昇し、これはS&P500種指数構成企業の自社株買い利回りと同じです5。英国でも同様の動きが見られています。これらの企業はバランスシートに多額の現金があるため、自社株買いを更に増やす可能性があります。私は、これは欧州株と英国株にとって大きな支援材料となるはずだと考えています。
 

7. 現金は依然として傍らに積み上がっている

株価を押し上げるのに、利下げは必要ではありません―以前にも申し上げたように、資本市場に容易に還流し得る投資家の余剰現金が、積み上がっている状態にあります。また、利下げが差し迫っている、というのがそのきっかけである必要はありません-単に収益伸び率の改善であったり、単なる「ディップ・バイイング(押し目買い)」であっても良いのです。
 

今後の見通し:市場にとって重要な週となる

今週は、市場にとって重要な週となります―データ発表が盛りだくさんで、それに加えてFRBの会合も予定されています。データについては、ユーロ圏CPI、米国雇用動態調査(JOLTS)、米国雇用コスト指数、中国PMI、そして米国雇用統計の発表があります。

米国については、私は労働市場、特に賃金の伸びに最も注目しています。FRBについては、最近のデータに鑑みると、パウエル議長からタカ派的な発言があっても驚きませんし、それに惑わされることはありません(私自身は、これから今後2回のFRB会合までの間に発表されるデータを見据えています)。そして、今後更に多くの企業の決算報告が行われます。これは、マクロ的な示唆及び各業界特有の示唆を得る上で非常に役立つと私は考えています。

私は、今週水曜日(5月1日)に行われる予定のFRBの政策金利発表・記者会見をライブツイートする予定です。Xで@kristinahooperをフォロー頂けます。
 

注目の日程

公表日

指標等

内容

4月29日

ドイツCPI

インフレの動向を示す

4月29日

日本鉱工業生産

鉱工業セクターの経済の健全性を示す

4月29日

日本小売売上高

消費需要を測定

4月29日

中国PMI(購買担当者指数)

製造業とサービス業の経済の
健全性を示す

4月30日

ドイツ国内総生産

地域の経済活動を測定

4月30日

イングランド銀行消費者
信用残高

個人向け与信残高を報告

4月30日

ユーロ圏CPI

インフレの動向を示す

4月30日

ユーロ圏国内総生産

地域の経済活動を測定

4月30日

米国雇用コスト指数

従業員総報酬の四半期ごとの変化を測定

4月30日

米国S&Pコアロジック・
ケースシラー住宅価格指数

米国の住宅価格を測定

4月30日

米国コンファレンスボード
消費者信頼感

米国消費者の動向、支出計画、
インフレ・株価・金利に対する
見通しを月次で調査

5月1日

カナダ製造業PMI

製造業セクターの経済の健全性を示す

5月1日

米国ISM製造業PMI

製造業セクターの経済の健全性を示す

5月1日

米国雇用動態調査
(JOLTS)

求人、雇用、離職に関する

データを収集

5月1日

米連邦公開市場委員会決定、
記者会見

FRBによる金利の道筋に関する
最新の決定を発表

5月2日

英国住宅価格指数

住宅セクターの健全性を示す

5月3日

米国雇用統計

労働市場の健全性を示す

5月3日

米国PMI

製造業とサービス業の経済の
健全性を示す

5月3日

ユーロ圏失業率

労働市場の健全性を示す

5月3日

ブラジル鉱工業生産

鉱工業セクターの経済の健全性を示す

  • 1.

    出所:米国経済分析局、2024年4月25日

  • 2.

    出所:ファクトセット・リサーチ・システムズ、2024年4月26日

  • 3.

    出所:JPモルガン、2024年4月26日

  • 4.

    出所:ペプシ決算説明会資料、2024年4月24日

  • 5.

    出所:モーニングスター、2024年4月8日

ご利用上のご注意

当資料は情報提供を目的として、インベスコ・アセット・マネジメント株式会社(以下、「当社」)が当社グループの運用プロフェッショナルが日本語で作成したものあるいは、英文で作成した資料を抄訳し、要旨の追加などを含む編集を行ったものであり、法令に基づく開示書類でも金融商品取引契約の締結の勧誘資料でもありません。抄訳には正確を期していますが、必ずしも完全性を当社が保証するものではありません。また、抄訳において、原資料の趣旨を必ずしもすべて反映した内容になっていない場合があります。また、当資料は信頼できる情報に基づいて作成されたものですが、その情報の確実性あるいは完結性を表明するものではありません。当資料に記載されている内容は既に変更されている場合があり、また、予告なく変更される場合があります。当資料には将来の市場の見通し等に関する記述が含まれている場合がありますが、それらは資料作成時における作成者の見解であり、将来の動向や成果を保証するものではありません。また、当資料に示す見解は、インベスコの他の運用チームの見解と異なる場合があります。過去のパフォーマンスや動向は将来の収益や成果を保証するものではありません。当社の事前の承認なく、当資料の一部または全部を使用、複製、転用、配布等することを禁じます。

MC2024-059