Global markets in focus

FRBの金融政策の不透明感と市場動向を乗り切る

FRBの金融政策の不透明感と市場動向を乗り切る
〔要旨〕
  • FRBの揺れ動き:短期的な政策の不透明感がボラティリティを生み、小型株、暗号資産、収益性の低いテクノロジー銘柄等が下落
  • 12月の利下げ:12月の利下げを求める側には、雇用と製造業の弱含みなど、その主張を裏付ける追加データがある
  • 株価を支える材料:金利低下と2026年の景気回復予想が相まって、米国株にとって支援的な環境となり得る
政策の不透明感とボラティリティ

次回の利下げ

注目の日程
 

最近、ある著名なベテラン経済テレビレポーターが、米連邦準備理事会(FRB)メンバーがそれほど発言しなかった時代に戻りたいと述べました。彼は、メンバーの名前さえ知らなくていいとまで言いました。彼らは意図して有名人になろうとしたわけではありませんから。このコメントは、FRB 関係者の発言が投資家に与えていると考えられる、むち打ちになりそうな揺れ動きについて述べられたものです。

ここ1~2か月を振り返ってみましょう:10 月、ジェローム・パウエル FRB 議長は FRB 内部の意見の相違に言及し、12 月の利下げは「決して既定路線ではない」と述べました1。その後11月中旬には、アトランタ連銀総裁兼CEOのラファエル・ボスティック氏が(政策金利を)「より高く、より長く」維持するスタンスを提唱し、引き締め的な政策が続く可能性があるとの見方が強まりました2。しかし11月下旬には、ニューヨーク連銀総裁兼CEOのジョン・ウィリアムズ氏が、「短期的には」借入コストを引き下げる余地があるとの見解を示しました3。同時に、FRB理事会のメンバーであるクリストファー・ウォラー氏から、強いハト派的な姿勢が示されました4。市場は、ほぼ確実な利下げを織り込んでいたところからその可能性がゼロになり、再びほぼ 100% の確率に戻ったという状況です5。これで、はっきりと分かりましたでしょうか?

 

政策の不透明感とボラティリティ

この短期的な政策の不透明感は、市場にボラティリティをもたらすのに十分であり、例えば小型株、暗号資産、収益性の低いテクノロジー銘柄などの下落を引き起こしました6。投資家にとっては、絶え間ないトーンの変化によりポジショニングがより困難となり、新たに生じたボラティリティによって、AI関連株のバブルの噂が生じました。

以前にトランプ大統領の上級経済顧問を務めたケビン・ハセット氏が次期FRB議長に指名されるのではとの見方が強まっていることが、FRBの今後の独立性に関するさらなる疑念を生じさせています。FRBの独立性が深刻におびやかされれば、長期債利回りの上昇につながるでしょう。現時点ではまだそうなっていませんが、2026年には重要テーマとなる可能性が高いと考えられます。私たちは、これを注視していきたいと思います。

次回の利下げ

様々な議論はあるものの、12月の利下げを求める側には、その主張を裏付ける追加データがあります。例えば、先週発表されたADP全米雇用報告では、民間部門の雇用者数が3万2000人減少し、労働市場の弱含みが示唆されました7。製造業のグローバル購買担当者調査でも、一層の軟化が示されています8。それと同時に、インフレ期待は低下しつつあります9。そうです、低下しているのです!

特にイールドカーブがスティープ化している場合、政策金利の引き下げは万能薬ではありませんが、最近の動きは、金利への感応度がより高い経済分野の一部への支援としては十分だと考えられます。政策金利の低下は、現金やマネーマーケットファンドのリターン低下を意味します。これにより、他の資産と比較した現金の保有機会費用が増大します。従って個人的には、現金の他資産への転換が進むはずだと考えるものの、歴史的に見ると、金利が低下し始めても実際にそうなることは稀です。

金利低下と2026年の経済活動改善の予想が相まって、株式市場にとっての追い風となる可能性があります。これにより、米国での市場参加がさらに拡大するかもしれません。
 

注目の日程

公表日

国・地域

指標等

内容

12月9日

日本

機械受注(速報値)

製造業投資と産業活動の指標

12月10日

米国

雇用コスト指数(第3四半期)

インフレとFRBの政策決定に影響を与える労働コストを測定

12月10日

米国

米連邦公開市場委員会(FOMC)会合と政策金利の決定 

金融政策の方向性と市場予想にとって非常に重要

12月10日

米国

米財務省声明(11月)

政府の財政および財政スタンスに関する洞察を提供

12月10日

カナダ

カナダ銀行金融政策決定会合

カナダドルに影響を与え、カナダの金融政策スタンスを示す

12月11日

日本

鉱工業生産(10月確報値)

製造業セクターの強さと経済モメンタムに関する主要指標

12月12日

英国

鉱工業生産(10月)

製造業、鉱業、公益事業の生産高を測定する指標であり、国内総生産(GDP)にとって非常に重要

12月12日

英国

貿易収支(10月)

貿易フローと競争力を示し、通貨と成長に影響を与える

12月12日

カナダ

卸売売上高(10月)

事業活動とサプライチェーンの健全性を反映

12月12日

カナダ

建築許可件数(10月) 

建設・住宅市場の動向を示す先行指標

12月12日

カナダ

設備稼働率(第3四半期)

経済の効率性と潜在的なインフレ圧力を示す

  • 1.

    出所:ロイター、“Fed meeting as it happened: Powell says don't count on a December rate cut”、2025 年 10 月 29 日

  • 2.

    出所:ロイター、“Fed's Bostic favors no change in rates while inflation remains greater risk”、2025 年 11 月 12 日

  • 3.

    出所:ロイター、“Williams' comments boost odds of a Fed cut, though policy hawks remain adamant”、2025年11月21日

  • 4.

    出所:マーケットウォッチ、“ Waller joins Williams in dovish camp, says he'll advocate for rate cut”、2025年11月24日

  • 5.

    出所:ブルームバーグL.P.、2025年12月4日、フェドファンド・インプライドレート(理論先物金利)に基づく。2025年10月初旬、市場は12月のFOMC会合での利下げ確率を100%と織り込んでいた。2025年11月19日までに利下げ確率は29%まで低下し、現在は91%

  • 6.

    出所:ブルームバーグL.P.、2025年12月4日、以下各指数の直近高値から直近安値への変化率に基づく:ラッセル2000指数(-8.54%)、ビットコインスポット価格(-32.65%)、ゴールドマン・サックス非収益性テクノロジー指数(-26.09%)

  • 7.

    出所:ADP全国雇用報告、2025年11月30日

  • 8.

    出所:ブルームバーグL.P.、2025年11月30日、S&Pグローバル製造業購買担当者景気指数(PMI)に基づく

  • 9.

    出所:ブルームバーグL.P.、2025年12月4日、米3年物国債インフレブレークイーブン金利に基づく。ブレークイーブンインフレ率は、一般的な国債利回り(名目)と同じ満期の物価連動国債(TIPS)の利回りの比較により算出される、市場が導き出す将来の予想インフレ率。物価連動国債(TIPS)は、インフレに連動する米国財務省証券

当資料は情報提供を目的として、インベスコ・アセット・マネジメント株式会社(以下、「当社」)が当社グループの運用プロフェッショナルが日本語で作成したものあるいは、英文で作成した資料を抄訳し、要旨の追加などを含む編集を行ったものであり、法令に基づく開示書類でも金融商品取引契約の締結の勧誘資料でもありません。抄訳には正確を期していますが、必ずしも完全性を当社が保証するものではありません。また、抄訳において、原資料の趣旨を必ずしもすべて反映した内容になっていない場合があります。また、当資料は信頼できる情報に基づいて作成されたものですが、その情報の確実性あるいは完結性を表明するものではありません。当資料に記載されている内容は既に変更されている場合があり、また、予告なく変更される場合があります。当資料には将来の市場の見通し等に関する記述が含まれている場合がありますが、それらは資料作成時における作成者の見解であり、将来の動向や成果を保証するものではありません。また、当資料に示す見解は、インベスコの他の運用チームの見解と異なる場合があります。過去のパフォーマンスや動向は将来の収益や成果を保証するものではありません。当社の事前の承認なく、当資料の一部または全部を使用、複製、転用、配布等することを禁じます。

MC2025-130