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米中貿易合意により明確さがもたらされた一方で、12月のFRB利下げ実施は不透明に

米中貿易合意により明確さがもたらされた一方で、12月のFRB利下げ実施は不透明に
〔要旨〕
  • 米中貿易:先週の貿易合意により、短期的な貿易摩擦拡大のリスクが軽減され、先行きの明確さを求める市場にとっては歓迎すべき展開となった
  • FRB:FRBは予想通り利下げを決定したが、市場予想よりもタカ派的なトーンが示された
  • AI投資:テクノロジー企業の決算に対する市場の反応が分かれたことは、AI投資を巡る現在進行形の議論を浮き彫りにした
米中間の貿易合意が市場に明確さをもたらす

FRBは12月の利下げを疑問視

AI投資に対する市場の反応は分かれた

注目の日程

 

マーケット・ストラテジストとして、私たちは絶えず、自分たちの見通しにとってのリスクを評価しています。私たちの楽観的な見方を支える要因——世界経済の底堅い成長1、インフレ期待がアンカー(安定的に維持)されていること2、政策金利の緩和見通し——については繰り返し述べてきましたが、他方で潜在的な逆風要因を列挙するのも難しくないことは承知しています。先週、米中貿易摩擦、米連邦準備理事会(FRB)の独立性への懸念、人工知能(AI)投資へのリターンにまつわる疑問を含め、こうしたリスクのいくつかがより鮮明となりました。

 

米中間の貿易合意が市場に明確さをもたらす

まずは貿易です。私たちはずっと、関税は経済的に最適とは言えない結果をもたらすと主張してきました。しかし同時に、先行きが明確であれば、企業や消費者は適応できるとも述べてきました。そうした文脈で、米中間の1年間の貿易休戦合意は建設的です。

  • 合意の一環として、米国は中国製品への関税を57%から47%に引き下げ、中国企業に対する新たな輸出管理関連措置などの実施を一時停止することを約束しました。
  • これに対し中国は、レアアース(希土類)の輸出規制を1年間停止し、米国産大豆の大規模購入を再開し、米国へのフェンタニル前駆体(原料)化学物質の流入抑制に向けた取り組みを強化することに合意しました。

この貿易休戦は、世界的なサプライチェーンへのプレッシャーを一時的に緩和し、緊張の高まりの一時停止を告げるものでした。両国間のより深い構造的課題の解決には至らないものの、短期的な貿易摩擦拡大のリスクを軽減したことで、明確さを求める市場にとっては歓迎すべき展開となりました。
 

FRBは12月の利下げを疑問視

FRBに目を向けると、先週の会合では利下げが決定されたものの、市場予想よりもタカ派的なトーンが示されました。重要なのは、市場が年末までにさらに1回の利下げを依然として予想しているにもかかわらず、FRBが、12月の利下げが既定路線ではないことを示唆した点です3

私たちが見るところ、利下げの正確なタイミングやペースは、より全体的な方向性に比べると重要ではありません。今後数ヶ月の間で、利下げに向かっていくと予想されます。最も重要なのは、先週のFRBの動きによって、その独立性が改めて確認された点です。FRBは政治的圧力ではなく、データを評価しそれに基づいて動きました。FRBの独立性への市場の信認を反映して、債券市場のインフレ期待は驚くほど安定的に維持されています4
 

AI投資に対する市場の反応は分かれた

最後に、テクノロジー企業の決算に対する市場の反応は、AI投資を巡る現在進行形の議論を浮き彫りにする形となりました。アルファベットは、Gemini(ジェミニ)のユーザー数増加が投資家の評価を得たことで、恩恵を受けました。他方でメタは、投資の増加が最終的に有意義なリターンに結びつくかが疑問視され、売られました。この議論は今後も続くと予想されます。現実にAIには大きな可能性がありますが、誰が勝者となるか、敗者となるかは今後数年のうちに選別が続いていくでしょう。

こうした動向を踏まえ、私たちのメッセージは一貫しています:メガキャップ・テクノロジー銘柄以外にも、分散投資する時期が来たと考えられます。米国ではシクリカル株、小型株及びバリュー株、そして米国以外のマーケットに機会があると見ています。これらはより魅力的なバリュエーションを提供し5、世界的な経済活動の回復と、金融政策の支援の継続によって恩恵を受ける可能性があります。
 

注目の日程

公表日

国・地域

指標等

内容

11月3日

米国

雇用統計

労働市場の健全性を示す主要指標であり、FRBの政策決定に影響を与える

11月3日

米国

ISM非製造業景気指数

経済の主要構成要素であるサービス業の活動を測定

11月5日

米国

FRBによる政策金利決定

金融政策の方向性と市場心理にとって極めて重要

11月5日

米国

FRB記者会見

今後の政策動向と経済見通しに関する示唆を与える

11月6日

ユーロ圏

欧州中央銀行(ECB)経済報告

経済状況と金融政策スタンスを詳細に示す

11月7日

米国

消費者信用報告

消費者の借入動向と財務面での健全性を示す

11月7日

カナダ

雇用統計

労働市場の評価とカナダ銀行(中央銀行)の政策にとって重要

11月7日

ドイツ

鉱工業生産

欧州の製造業セクターの強度に関する主要指標

11月7日

中国

貿易収支

世界的な需要と中国の経済モメンタムを反映

  • 1.

    出所:アトランタ連銀、アトランタ連銀GDPNowのGDP予測に基づく

  • 2.

    出所:ブルームバーグ、2025年10月30日、米3年物国債インフレブレークイーブン金利に基づく

  • 3.

    出所:ブルームバーグ、2025年10月30日、フェドファンド・インプライドレート(理論先物金利)に基づく

  • 4.

    出所:ブルームバーグ、2025年10月30日、3年物米国債インフレブレークイーブン金利に基づく

  • 5.

    出所:ブルームバーグ、2025年10月30日、S&P 500種指数の株価収益率(28.4)と比較したS&P 中型株400種指数の株価収益率(19.7)、S&P 小型株 600種指数の株価収益率(21.9)、 S&P 500種バリュー指数の株価収益率(22.1)、MSCI オール・カントリー・ワールド(除く米国)指数の株価収益率(17.3)に基づく

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MC2025-118