テクノロジー株の売りにより、分散投資の重要性が浮き彫りとなる
〔要旨〕
- バブルではない可能性が高い:AI関連銘柄の取引については、過去のバブルとの類似点よりも相違点の方が多く見られる
- 物事を正しく把握する:ドローダウンは長期投資においては正常な現象。ファンダメンタルズが引き続き堅調なことから、今回の下落が持続するとは予想されない
- 分散投資:株式へのベストな投資機会はメガキャップ銘柄以外に存在する可能性もあり、分散投資の必要性を改めて強調したい
メガキャップ企業の回復力
ドローダウンを恐れるな
分散投資が賢明
注目の日程
2025年に私たちに最も多く寄せられた質問は、「AI関連株の取引はバブルの状態にあるのか?」というものでした。これには当然、「イエス」か「ノー」かの答えが求められますが、そこにはよりニュアンスが必要になります。とは言え、端的に言えば、私たちは古典的な意味でのバブルだとは考えていません(現段階では)。確かにバブル的な特徴は一部見られますが、例えば1990年代後半のドットコムバブルと現在の市場には大きな違いが見られます。
先週、米国大型株の一部銘柄が軟調となったことから、これらの銘柄はピークを迎えたのではないかとの疑念を持つ投資家もいます。私たちはそうは考えていません。ただし投資家には今日、分散投資を慎重に検討するよう促したいと思います。
メガキャップ企業の回復力
米国の研究者で心理学者でもあるアンジェラ・ダックワースは、「やり抜く力 GRIT(グリット)」という著書の中で「熱狂は一般的に見られるが、持続性が見られることは稀だ」と述べました。近年、メガキャップのテクノロジー企業やAI関連の文脈への熱狂が高まってきました。しかしそこにはまた、持続性も見られます。
現在、米国でも最大規模の企業群が、巨額の設備投資プログラムを推進しており、それは尚拡大を続けています。もしその投資が債務により賄われ、計画が将来の熱狂的な需要環境への希望的観測に基づいていたならば、懸念材料となるでしょう。1990年代後半がまさにそうでした。しかし今日、これらの企業の多くではデータセンターの建設スピードが需要に追いついておらず、また大半のプロジェクトは営業キャッシュフローと内部留保により賄われています。一部企業は負債を抱えており、将来的に苦境に陥る企業もあると考えられますが、セクター全体でみると、過去のバブル期と比較してレバレッジは依然低い水準にあります。
これらの企業の株価水準は歴史的基準からすると高いものの、ドットコムバブル期ほどではありません。MSCI米国テクノロジーセクターは、2000年初めには12ヶ月先予想利益の約50倍で取引されていました1。現在同セクターは、12ヶ月先予想利益の約32倍で取引されています2。これは、米国最大規模の企業の多くが、株価上昇に匹敵する利益成長を達成しているためです。これはドットコム期には当てはまりませんでした。
ドローダウンを恐れるな
ナスダック100指数は先週、ピークから4.06%下落して取引を終えました3。ただし下落は銘柄全体に及んだわけではありませんでした。マイクロソフト、エヌビディア、パランティア・テクノロジーズは下落しましたが、アルファベットは高値を更新し、アップルはほぼ横ばいで推移しました。
ドローダウンは長期の投資、特に株式への投資においては正常な現象だということを覚えておいてください。持続的な株式市場のドローダウンは確かに発生しますが、今回は持続しない可能性が高いと私たちは見ています。
より弱気な見方をするようになるには、企業収益の縮小につながるような状況が見られることが必要です。現時点で、第3四半期の決算シーズンにおいて、約8割の企業がコンセンサス予想を上回っています4。S&P500種指数とナスダックの前年比収益成長率は、余裕を持って二桁台に乗っています5。アナリストは、2026年の収益成長予想を上方修正しています6。
また米連邦準備理事会(FRB)は利下げモードに戻っており、2026年にかけて経済環境はより幅広く改善すると予想されます。繰り返しになりますが、こうした状況は、株式の大幅かつ持続的な売り越しが起きる典型的な環境とは言えません。
チャンバワンバ(英国のロックバンド)は、アンジェラ・ダックワースより鮮やかにこう歌いました。「倒されても、また起き上がる。」私たちは、米国テクノロジー株は、比較的短期間で再び高値を更新する可能性があるとみています。
分散投資が賢明
AIバブルの危険性を煽る声を信じないからといって、機会はそこにしかない―あるいは最善だ―と考えているわけではありません。むしろ今回の調整は、「メガキャップ・テクノロジー銘柄以外にも分散投資する時だ」という私たちの核心的なメッセージを浮き彫りにしました。私たちは、米国シクリカル株、中小型株、バリュー株、そして米国外の市場にも大きな機会を見出しています。
集中投資は刺激的であり、一定期間は(時には長期間に渡っても)投資家を英雄のように感じさせてくれることもあります。しかし長期的には、強靭で十分に分散されたポートフォリオの構築が不可欠です。今こそ、その重要性がこれまで以上に高まっていると考えられます。
注目の日程
公表日 |
国・地域 |
指標等 |
内容 |
|---|---|---|---|
11月11日 |
米国 |
退役軍人の日(連邦祝日) |
債券市場は休場、株式市場は開場 |
11月11日 |
米国 |
NFIB中小企業楽観度調査(10月) |
中小企業の雇用及び投資心理に関する示唆を提供 |
11月11日 |
英国 |
失業率(9月) |
金融政策決定にとって重要となる、労働市場の健全性を測る指標 |
11月12日 |
日本 |
生産者物価指数(10月) |
生産者レベルでのインフレ動向を示し、しばしばCPIの方向性を示唆する |
11月13日 |
中国 |
小売売上高(10月) |
消費者の需要及び信頼感に関する主要指標 |
11月13日 |
中国 |
鉱工業生産(10月) |
製造業の強度と世界的な需要を評価する上で非常に重要 |
11月13日 |
米国 |
消費者物価指数(CPI)(10月)(米政府機関が閉鎖されていない場合) |
FRBの政策スタンスを導く、中心的なインフレ指標 |
11月13日 |
英国 |
国内総生産(GDP)第3四半期速報値 |
英国経済の健全性と成長軌道を示す |
11月13日 |
英国 |
鉱工業生産(9月) |
工場生産高と経済活動を測定する指標 |
11月14日 |
米国 |
小売売上高(10月)(米政府機関が閉鎖されていない場合) |
GDPと企業収益を牽引する消費需要に関する主要指標 |
11月14日 |
米国 |
生産者物価指数(10月) (米政府機関が閉鎖されていない場合) |
生産者レベルでのインフレ動向を示し、しばしばCPIの方向性を示唆する |
11月14日 |
ユーロ圏 |
GDP第3四半期改定値 |
GDP改定値はマクロ経済の評価にとって非常に重要 |
MC2025-120