市場の反落:健全な調整であり、 株バブルの崩壊ではない
〔要旨〕
- 健全な調整局面:今回の反落は株バブルの崩壊ではなく、大幅な上昇後の健全な調整と捉えられる
- 政策の不透明感:FRBのタカ派的な発言は予想外だった。政策の不透明感は市場のボラティリティを増幅させる傾向にある
- 投資機会:市場を主導する銘柄は、シクリカルセクター、バリュー株、小型株に拡大する可能性がある
政策の不透明感
政府閉鎖終了後のデータ
依然として好ましい環境
注目の日程
投資家は、市場の反落に備えて前もって心の準備をしているようでした。「解放の日」後の4月8日の底値から、ほぼスムーズに38%もの上昇が見られた後1、株バブルや過大なバリュエーションについての議論が盛んに交わされてきました。こうした背景から、先週の下落は避けられないものと感じられたかもしれません。調整はまさに、これまでの上昇を牽引してきたメガキャップ・グロース株に集中して起きました2。皮肉なことに、ネットフリックス、パランティア・テクノロジーズ、マイクロソフト、アルファベットを含むこれらの企業の多くが、予想を上回る力強い決算を発表したにもかかわらず、株価は下落したのです。私たちはこれを、ビジネスモデルの破綻ではなく、高水準のバリュエーションへの懐疑の表れだと考えています。従って私たちは、これを株バブルの崩壊ではなく、大幅な上昇後の健全な調整と捉えています。
政策の不透明感
バリュエーション以外に目を移せば、政策の不透明感が市場のボラティリティを増幅させる傾向にあります。政府機関の閉鎖が最近注目を集めましたが、投資家が予想した以上のタカ派的な発言がなされたことにもみられるように、米連邦準備理事会(FRB)内の見解の相違が、より大きな不透明感の源泉となってきました。公式の経済データが入手できなかった期間、FRBにとっては、ハト派的なトーンを抑えるスタンスを取る方が容易だったのかもしれません。
政府閉鎖終了後のデータ
米国の政府機関がようやく再開し、データの公表も再開されますが、先行きがすぐに明確になるわけではないと考えられます。9月の米国データは間もなく発表されるでしょう(政府のIT部門が「パスワードを忘れた」との問い合わせに迅速に対応できるとすればですが)。しかし、10月のデータは大幅に損なわれた、あるいは失われてしまった可能性が高いと考えられます。データ収集プロセスの手作業への依存度が高く、遡及的な収集が困難と考えられるためです。従って、10月と11月の公式データは懐疑的に見られると思われます。
これにより、既に内部で意見が分かれているFRBは、12月の政策決定に際し、依然として代替的なデータに依存せざるを得なくなるでしょう。民間部門の労働市場データは軟化を示しているものの、落ち込んでいるとまでは言えません3。これは、FRBをさらなる緩和の方向に傾けるに十分だと考えられます。私たちが信頼に足ると考えるその他のデータは、引き続き企業部門が堅調であることを示しています。企業からは引き続き、コンセンサス予想を上回る利益成長報告が続いています4。
一方で、政府機関閉鎖の終結は、今後従業員が給与の遡及的な支払いを受け、連邦職員の解雇が撤回されていくことを意味します。また、閉鎖期間中に無給で勤務した運輸保安庁(TSA)職員には、1万ドルの特別手当が支給される見通しです。これにより、連邦職員が感謝祭やクリスマスなどの休暇シーズンに向けて支出できるようになりますが、休暇期間中の消費データの動向を注視したいと思います。
依然として好ましい環境
私たちはこれらのことから、リスク資産にとっては依然として好ましい環境となるとみています。利回りは低く5、原油価格6とインフレ期待は引き続き抑制された状態にあり7、私たちのグローバル景気先行指数は上昇傾向を示しており8、また米国の金融緩和サイクルが始まりました。金融緩和と来年度の十分な財政支援が相まって、米国経済は回復基調となるでしょう。回復局面では、市場を主導する銘柄は、メガキャップ・グロース株にとどまらない可能性が高いと考えられます。金融(大手銀行株は最近堅調なパフォーマンスを示しています9)を含むシクリカルセクターは、バリュー株、小型株とともにより大きな恩恵を受ける可能性があります。さらに、世界経済の成長が安定化し政策的乖離が縮小するにつれ、米ドル建て以外の資産も恩恵を受ける可能性があります。
バリュエーションは引き続き注視していきますが、私たちはこれをバブルだとは考えていません。むしろ回復が進む中で、投資家が、より良好なバリュエーション特性とシクリカルなエクスポージャーに向けてポートフォリオを構築する機会として捉えています。
注目の日程
公表日 |
国・地域 |
指標等 |
内容 |
|---|---|---|---|
11月17日 |
米国 |
ニューヨーク連銀製造業景気指数(エンパイア・ステート製造業調査) |
ニューヨーク州の製造業活動に関する洞察を提供する、製造業セクターの先行指標 |
11月17日 |
米国 |
予測専門家調査(SPF) |
成長、インフレ、失業率の見通しを示し、市場心理に影響を与える |
11月18日 |
米国 |
鉱工業生産指数、設備稼働率 |
生産高及び生産設備利用の主要指標であり、経済の強度を示す |
11月18日 |
米国 |
ビジネスリーダー調査 |
企業の信頼感と見通しを反映し、投資動向にとって重要となる |
11月19日 |
米国 |
住宅着工件数 |
経済活動の主要な推進力となる住宅着工件数、建築許可件数を追跡 |
11月19日 |
米国 |
米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨 |
FRBの政策論に関する詳細な洞察を提供し、金利予想にとって非常に重要となる |
11月20日 |
米国 |
フィラデルフィア連銀製造業調査 |
地方の製造業の健全性に関する指標であり、米ドルや株式市場に影響を与える |
11月20日 |
米国 |
中古住宅販売件数 |
消費者の信頼感や支出に影響する、住宅市場の強さを示す |
11月21日 |
米国 |
ミシガン大学消費者信頼感指数(確報値) | 消費者信頼感を測定する、支出と成長の先行指標 |
11月21日 |
ユーロ圏 |
欧州中央銀行(ECB)総裁講演 |
ユーロ圏の金融政策スタンスと経済見通しについての示唆を与える |
11月21日 |
日本 |
貿易収支 |
輸出入動向を示し、国際貿易と円相場にとって鍵となる |
11月21日 |
英国 |
小売売上高
|
個人消費の動向を示し、国内総生産(GDP)とイングランド銀行の政策にとって非常に重要となる |
MC2025-122