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パウエルFRB議長に対する法的調査が市場に新たなリスクをもたらす

パウエルFRB議長に対する法的調査が市場に新たなリスクをもたらす
〔要旨〕
  • 新たな調査:直近の報道によれば、司法省がFRB議長に対する調査を開始する模様
  • 新たなリスク:これにより、少なくとも短期的には、より明確な状況が明らかになるまで、リスク資産にとって新たな、大きな試練がもたらされると考えられる
  • 市場への影響:金利上昇圧力が生じる可能性があるが、これは米国株のバリュエーションの重しとなり、米ドルへの下押し圧力となるだろう
リスク資産にとっての大きな試練

市場への影響
 

中央銀行の独立性は、極めて重要です。これは大胆な主張でも、論争の的になるような意見でもありません。現代のマクロ経済運営の基本原則であり、金融市場の信頼の礎です。だからこそ、米連邦準備理事会(FRB)と司法省をめぐる最近の動きが、非常に懸念されるのです。

最近の報道では、トランプ政権の司法省がFRBに対する調査を開始し、ジェローム・パウエル議長によるFRBのビル改修に伴う費用超過に関する証言に関連して、刑事訴追の可能性を示唆したとしています1。パウエル議長は、ビル改修費用は単なる口実に過ぎないと主張する動画を公開し、公に反論しました。彼は、真の問題は彼の指揮下で、米連邦公開市場委員会(FOMC)が政権が望んだほど迅速に金利を引き下げなかったことにあるとしました2。事態はもはや、政治的圧力やレトリックの域を超え、法的脅迫の域に入っています。

 

リスク資産にとっての大きな試練

ここ数カ月、私たちは政権がFRBに対して公に圧力を強めていくのを懸念しつつ見守ってきましたが、市場と同様に、次第に政権による口先介入にも慣れていきました。リスク資産は持ちこたえ3、さらに重要なことに、債券市場に織り込まれたインフレ期待はよくアンカー(安定的に維持)されたままでした4。この点は極めて重要です。もし市場がFRBの独立性が真に脅かされていると考えたなら、投資家が政治主導の金融政策を織り込む形で、インフレブレークイーブン金利が上昇するはずでした。しかし、そうはなりませんでした。

しかし今回の事態は、性質が異なります。現職のFRB議長に対する司法制度の潜在的な行使、特に政策的な意見の相違に関連しているように見える文脈でのそれは、市場がこれまで織り込む必要のなかった一線を超えるものと言えます。その結果、少なくとも短期的には、状況が最終的にどのように展開するかより明確になるまで、リスク資産にとって新たな、大きな試練がもたらされると考えられます。

ユーザーが現実世界の出来事の結果に賭けるオンライン予測市場「ポリマーケット」では、パウエル議長が5月の任期満了前にFOMCを離れるとの予想が 70%近くに達しています。しかし、パウエル氏が調査を乗り切った場合、5月以降に議長職を離れても理事として留まる可能性が高まるでしょう。そうなれば、議長職を退いた後も理事として留まった2人の元議長(ジョージ・W・ハムリン氏、マリナー・S・エクルズ氏)に続く 3人目となります。パウエル議長のコメントは、FRBの独立性を守りたいとの意思を明確に示しています。

市場への影響

最も差し迫った影響は、インフレ期待の高まりによる金利上昇圧力として現れる可能性が高いでしょう。金利上昇は、特に割引率の変化への感応度が最も高いセクターや投資スタイルで、米国株のバリュエーションの重しとなると考えられます。米ドルも下押し圧力を受ける可能性が高いでしょう。長らくドル高を支える柱となってきたのは、米国の経済政策の制度的枠組みへの信頼でした。この信頼が浸食されれば、金やその他のセーフヘイブン(安全資産)と見なされるオルタナティブ資産が後押しされるでしょう。一部の投資家が、制度的不安定性や金融政策への政治的介入に対するヘッジツールとますます見なすようになっていることから、金、銀、そしてビットコインなどが恩恵を受ける可能性があります。

こうした動きは、米国資産が新興国・欧州・日本資産に後れを取るだろうとの私たちの基本的な見方をより強固にするものです。米国資産のバリュエーションは、世界のその他の国々の資産と比べて割高となっており、金利上昇、ドル安および一般的な政策の不透明感に対して最も脆弱だと言えます。

ただし強調したいのは、適切な対応は、警戒であってパニックではないという点です。私たちは、適切な局面でポートフォリオリスクのヘッジを行い、ニュースをしっかり追うことを推奨します。また同時に、過剰反応は誤りだと考えています。特に市場の反応が混乱を招いたり、政治的代償が大きくなったりすれば、まだ政権が現行のアプローチから後退する可能性が考えられます。市場は歴史的に、効果的な抑制装置としての役割を果たしてきました。昨年4月の「解放の日」後の反応のように、重大な逆風が生じれば、政権は異なるアプローチを取ることを余儀なくされる可能性があります。

  • 1.

    出所:CNBC、2026年1月11日

  • 2.

    出所:ロイター、2026年1月12日

  • 3.

    出所:ブルームバーグL.P.、2025年12月31日、S&P 500種指数は2025年に17.86%のリターンを記録

  • 4.

    出所:ブルームバーグL.P.、2026年1月9日、米3年物国債インフレブレークイーブン金利に基づく。ブレークイーブンインフレ率は、一般的な国債利回り(名目)と同じ満期の物価連動国債(TIPS)の利回りの比較により算出される、市場が導き出す将来の予想インフレ率

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