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年が明けても様相は同じ:地政学、関税、そして回復力

年が明けても様相は同じ:地政学、関税、そして回復力
〔要旨〕
  • エネルギー市場:ベネズエラの石油生産が今後数年で大幅に増加する可能性は低く、中東の石油フローに混乱が生じる可能性も低い
  • 関税:米国最高裁は、国際緊急経済権限法に基づいて発動された関税の適法性について、判断を先送りした
  • 経済の回復力:先週発表されたデータは、米国経済が2026年を堅調な基盤の上に迎え、おそらくさらに改善した状態にあることを改めて示した
FRBの独立性への懸念が再燃 

ベネズエラ情勢にもかかわらずエネルギー市場は安定を維持

最高裁が関税判決を先送り

グリーンランドをめぐる欧州への関税圧力

米国銀行は好決算も、クレジットカード規制リスクで下落

データが示す米国経済の回復力

私たちの見通しは変わらない

注目の日程
 

「元旦に何も変わらない。」1983年のU2の楽曲に込められたこの有名な一節は、金融市場でしばしば見過ごされがちな真実を捉えています——カレンダーがめくられて新しい年に変わっても、根底にあるマクロ経済や市場のトレンドが一夜にして劇的に変化することは稀です。2026年は、2025年の終わりとほぼ同じような状態で幕を開けました:力強い収益成長見込み2、安定的なインフレ期待3、そして中央銀行による政策的緩和の可能性をめぐる楽観的な見方4に支えられ、世界的に株式市場が上昇軌道を続け1、市場の拡大が継続しました。

しかし昨年同様、投資家はいわゆる「不安の壁」に直面しています。私たちは、これらの懸念のいずれについても、市場の上昇を阻害する可能性は低いと見ています。不安材料には、持続的な地政学的緊張及び、ベネズエラ、グリーンランド、イランに関する情勢等の新たな火種、米連邦準備制度理事会(FRB)の独立性をめぐる懸念、トランプ政権の関税措置の適法性等が含まれます(が、これらには限られません)。

一方、米国経済は堅調な基盤と回復力を保ち、生産性改善の重要な兆候を示しつつ、新年のスタートを切りました5

 

FRBの独立性への懸念が再燃

トランプ政権の司法省は、FRBに対する調査を開始し、ジェローム・パウエル議長によるFRBのビル改修に伴う費用超過に関する証言に関連して、刑事訴追の可能性を提起しました。パウエル議長は、ビル改修費用は単なる口実に過ぎないと主張する動画を公開し、公に強く反論しました。

中央銀行の独立性は、極めて重要です。これは大胆な主張でも、論争の的になるような発言でもありません。現代のマクロ経済運営の基本原則であり、金融市場の信頼の礎です。この報道に対し、市場の反応は控えめでした。株価は概ね安定的に推移し6、米ドルは今週、予想外に上昇しました7。市場が政権の口先介入に慣れてきていることから、今のところこうした控えめな反応も妥当と思われます。またこれにより、パウエル議長が任期終了後も米連邦公開市場委員会(FOMC)に留まる可能性が高まっています。その場合、慣例に反して残留する元議長としては3人目となります。皮肉なことに、その結果、FRBはそれまで予想されていたよりもタカ派的となる可能性があります。この点は、重要かつ流動的です。私たちはインフレ期待を注視していきます。インフレ期待は、週の初めには大幅な上昇が見られたものの8、依然として FRB が「許容範囲(コンフォートゾーン)」と見なすレンジに留まっています。

ベネズエラ情勢にもかかわらずエネルギー市場は安定を維持

ベネズエラおよびイランにおける最近の情勢は大きな注目を集めています。世界的にどのような影響が及び得るのかについて、疑問が提起されています。一般に、地政学的な動きが市場を大きく揺さぶるのは、それが(成長ショックや供給ショックを通じて)世界経済活動に打撃を与える場合、あるいは主要中央銀行の政策転換を招く場合に限られます。ベネズエラのケースでは、いずれの展開も起こりそうにありません。中東についても、ホルムズ海峡が開放されたままである限り、同様です。

ベネズエラの石油生産能力の低下と9、世界全体の石油供給が概して堅調であることにより10、エネルギー市場は安定を保っています。ベネズエラはサウジアラビアを上回る石油埋蔵量を有すると報じられているものの、ベネズエラの生産が大幅に増加する可能性は、よくても今後数年は低いと見られます。従って、石油市場の反応が控えめであるのは、私たちには妥当だと考えられます。

当然ながら、投資家が潜在的なセーフヘイブン(安全資産)を求めたことで、金や銀を含む貴金属は上昇しました11。 私たちは、イランやグリーンランドに関するものも含め、地政学的懸念が続く場合、両者ともさらに上昇する可能性があると考えています。

最高裁が関税判決を先送り

米最高裁は、トランプ大統領が昨年、国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づいて発動した関税の適法性について、判断を先送りしました。判決は今後数週間以内に示される見通しです。いずれにせよ、IEEPA関税が違法と判断されたとしても、米国の関税水準全体が大幅に低下する可能性は低いでしょう。別の法令で、大統領に関税を課す広範な権限が認められているため、IEEPAに基づいて導入された関税は、別の法的枠組みの下で再発動される可能性があります。

グリーンランドをめぐる欧州への関税圧力

週末、トランプ大統領は、グリーンランドの米国への完全売却を支持しない場合、複数の欧州諸国に追加関税を課すと発表しました。その後、月曜日にノルウェー首相宛ての書簡が送付され、売却をめぐるトランプ大統領の発言はさらにエスカレートしました。書簡では、「グリーンランドの完全かつ全面的な購入」に関する合意が成立するまで、2月1日以降、デンマーク、ノルウェー、スウェーデン、フランス、ドイツ、英国、オランダ、フィンランドから米国へ輸出される全てのモノに対し10%の関税を課すと警告されました。また合意に至らない場合、2026年6月1日に関税率を25%へ引き上げるとも述べられました。これは既存の関税に上乗せされる形となります。ユーロ圏首脳は対応策を協議していますが、選択肢の一つとして、「反威圧措置(ACI)」の発動が考えられます。これにより、EUは米国による欧州単一市場へのアクセスを遮断することが可能になります。

市場は比較的落ち着いた反応を示しており、現時点では、それはおそらく妥当で想定された反応だと私たちは考えています。米政権がグリーンランドの取得を望んでいることは周知の事実であり、トランプ大統領には高関税を脅威として提示した後、撤回するという明確な前例があります。こうした動きは、米ドル安、貴金属価格の上昇、米国以外の株式のアウトパフォームの可能性といった私たちのコアな見通しを裏付けるものです。

米国銀行は好決算も、クレジットカード規制リスクで下落

米国の銀行株は先週、米国で最もパフォーマンスの悪いセクターとなりました。堅調な決算を発表し、米国の消費者が底堅く、トレーディング収益も強いことを示す内容だったにもかかわらずです12。下押し圧力となったのは、トランプ大統領がクレジットカード金利に10%の上限設定を要求したことです。平均クレジットカード金利が10%まで低下したことはこれまで一度もありません13。 米政権がこの変更を実現できるのか、また銀行の与信がどう反応するのかは不透明です。しかし、この発想自体が一定のメッセージを発しています。米政権は今年、極めて強い経済を実現したいと考えており、そのために非伝統的な手段も試みるでしょう。

データが示す米国経済の回復力

最近公表されたデータは、米国経済が2025年末の状態をほぼそのまま引き継いで2026年を迎えたこと―すなわち堅調な基盤を持ち、成長には回復力があり、むしろ改善傾向にあること―を改めて示しました。

  • 製造業調査は横ばいでしたが、依然として縮小領域にあります14。 一方、サービス業は緩やかながら拡大を示しました15
  • 企業は引き続き慎重姿勢を示しており、積極的な採用には踏み切らない一方16、失業保険申請件数が歴史的低水準に留まる中で17、解雇にも消極的です。
  • クレジットカード支出データは18、消費者が依然として支出を続けていることを示し、全体的な安定性を支えていることを裏付けました。
  • インフレは高水準ながら、比較的安定しています19
  • 重要なのは、第3四半期の生産性が4.9%となったことです20。これは、人工知能(AI)などの新技術の恩恵が蓄積され始めている兆候かもしれません。生産性の上昇は企業利益を支える上、中央銀行がインフレを招かずに高水準の経済活動をサポートすることを可能にすることから、株式にとっての強気材料と見なされます。
  • 最新のアトランタ連銀GDPナウキャストは、米国の実質GDP成長率が5.5%近いことを示唆しています21
私たちの見通しは変わらない

穏やかな年末年始の休暇は遠い昔のように感じられ、変化が多いように思われますが、私たちは、コアな見方が変わっていないことに満足しています。むしろ、それらはより強固なものとなっています。私たちは、世界的に成長が改善し、米国以外の市場とシクリカルセクターに牽引され、株価には上昇余地があると引き続き考えています。

注目の日程

公表日

国・地域

指標等

内容

1月19日

中国

第4四半期国内総生産(GDP)、鉱工業生産、小売売上高

中国の成長の主要指標

1月19日

カナダ

12月消費者物価指数(CPI)

カナダのインフレ動向

1月20日

中国

中国人民銀行(PBOC)政策金利決定

金融政策のシグナル

1月20日

英国

雇用統計

労働市場の健全性

1月20日

ユーロ圏

銀行貸出調査

与信条件

1月21日

英国

消費者物価指数(CPI)

英国のインフレ動向

1月22日

オーストラリア

雇用統計

雇用の健全性

1月22日

ドイツ/ユーロ圏/英国

購買担当者景気指数(PMI)(速報値)

経済モメンタム

1月22日

米国

第3四半期国内総生産(GDP)及び個人消費支出(PCE)

成長とインフレ

1月23日

日本

日銀政策金利決定

金融政策スタンス

1月23日

英国

小売売上高

消費者の力強さ

1月23日

米国

購買担当者景気指数(PMI)(速報値)

経済活動

  • 1.

    出所:ブルームバーグL.P.、2026年1月16日、米国を除くオール・カントリー・ワールド指数(ACWI)の年初来リターンに基づく。市場の拡大は、ニューヨーク証券取引所に上場している銘柄のうち、株価が200日移動平均を上回っている銘柄の割合に基づく。その割合は現在64.97%であり、1993年以降の平均の53.75%を上回っている。MSCIオール・カントリー・ワールド指数(ACWI)(米国を除く)は、米国を除いた先進国および新興国市場の大型株・中型株を対象とし、それらの動向を代表するものとみなされる(運用されていない)指数。同指数は、非居住投資家に適用される税金が控除された後の純リターンを用いて算出

  • 2.

    出所:ファクトセット、2026年1月9日、S&P500種指数の利益成長率に関するコンセンサス予想は、2026年は12~15%の範囲

  • 3.

    出所:ブルームバーグL.P.、2026年1月9日、米3年物国債インフレブレークイーブン金利に基づく。ブレークイーブンインフレ率は、一般的な国債利回り(名目)と同じ満期の物価連動国債(TIPS)の利回りの比較により算出される、市場が導き出す将来の予想インフレ率

  • 4.

    出所:ブルームバーグL.P.、2026年1月9日、フェドファンド・インプライドレート(先物契約のあるあらゆる証券について算出可能なスポットレートとフォワードレートの差)に基づく

  • 5.

    出所:米国経済分析局、2025年9月30日、非農業部門における米国労働生産性(時間当たり生産)に基づく

  • 6.

    出所:ブルームバーグL.P.、2026年1月16日、S&P 500種指数のリターン(週初4日間で0.3%下落)に基づく

  • 7.

    出所:ブルームバーグL.P.、2026年1月16日、貿易加重通貨バスケットに対する米ドルの価値を測定する、米ドル指数に基づく

  • 8.

    出所:ブルームバーグL.P.、2026年1月16日、米3年物国債インフレブレークイーブン金利に基づく

  • 9.

    出所:石油輸出国機構、2025年12月31日

  • 10.

    出所:石油輸出国機構、2025年12月31日

  • 11.

    出所:ブルームバーグ、L.P.、2026年1月16日、金と銀の価格は年初来でそれぞれ6.29%、24.04%上昇

  • 12.

    出所:ブルームバーグL.P.、2026年1月16日、S&P 500金融セクター(GICSレベル1)指数に基づく。同指数は週初4日間で2.41%下落

  • 13.

    出所:ガーディアン、“Trump announces one-year 10% cap on credit card interest rates”、 2026年1月10日

  • 14.

    出所:米供給管理協会、2025年12月31日、ISM製造業購買担当者景気指数(PMI)に基づく

  • 15.

    出所:米供給管理協会、2025年12月31日、ISMサービス業購買担当者景気指数(PMI)に基づく

  • 16.

    出所:ADP、2025年12月31日、ADP全米雇用報告に基づく

  • 17.

    出所:米国労働省、2026年1月3日、新規失業保険申請件数に基づく

  • 18.

    出所:バンク・オブ・アメリカ、2025年12月31日、総合支出報告書に基づく

  • 19.

    出所:米国労働統計局、2025年12月31日、生産者物価指数の前年比変化率(2.9%)に基づく

  • 20.

    出所:米国経済分析局、2025年9月30日、非農業部門における労働生産性(時間当たり生産)に基づく

  • 21.

    出所:ブルームバーグ、2026年1月15日、アトランタ連銀GDPナウキャスト指標に基づく

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MC2026-011